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悪夢

フリーワンライ企画のお題。「夢を見た。」ではじめる。

 夢を見た。


 太陽に透けると白く輝く白銀の髪を持った美しい女が、窓辺に座って静かに笑っている――夢。

 砂地ばかりの厳しい世界の中で、瑞々しく咲くサボテンの白い花が唯一の装飾品である簡素な室内には、確かに見覚えがあった。

 ずっと昔に、炎に飲まれて消え去った光景だ。

 忘れたと思っていたが、深層心理の中ではくっきりと色濃く残っているらしい。

 エフレムは笑った。

 胃液をひっくり返して泣き叫び、許しを請うた光景に、今もまだ深い感情を残しているなんて、もはや滑稽でしかない。

 もう全ては終わったことだ。

 いまさら、蒸し返してどうなるのか。

 なにも望んでいない、はずなのに。

「なあ、これは夢なんだろう?」

 窓辺にすわる女は、何も言わない。

 身じろぎすらしないで、ただじっと、窓の向こうを見つめている。

 エフレムはゆっくりと一歩だけ、女へと近づいた。

 ぎしり、と床板がこれ以上進むのを拒むよう苦しげに鳴く。

「ずいぶんと、綺麗な悪夢をみせてくれるもんだ」

 女は振り返らない。

 拒まれている……いや、拒んでいるのかもしれない。

 夢は、所詮夢だ。

 ひたすら見ないようにしている願望や葛藤が溢れた結果が悪夢であるのなら、やはり、笑うしかない。

「馬鹿野郎だなぁ」


 夢を見る。

 いつか終われば良いと祈りながら。

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