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巨神兵は堕ちた  作者: ミツメ


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18/20

狩りバトル

 山の訓練に変わって一番喜んだのはルオだった。彼がこれまでやってきた極貧生活の一部が訓練という名前に変わるだけという認識で、これまで以上に積極性が増していった。

 大型の獣と対峙するのは初めての経験で、モンロンもルオは何も考えずに向かい合えたが、命の奪い合いが初めての他二人は中々武器を振えなかった。


 訓練時間を越えてもルオとモンロンの二人は山の中で動き回っていた。モンロンもルオと同じく山での狩猟採集は日常生活であり、好きなことが自分の力になるということに喜んでいた。

 基本的に新参組と古参組は訓練時のみ交流を行い、それ以外は自由時間で各々の好きなようにさせている。モンロンとルオは日頃の食事を増やすため、そして薬草や薬の原料となる物を路銀の足しにしようと山に潜ってばかりいた。


 マオバやアイコが訓練中に狩ったり採取した物を、村の入り口に置いているのを見たモンロンは、自分の村にもあった領主への献上品のような物だと勘違いをし、一部を村に置かなければならないとルオに説明した。

 ルオは渋々頷き、二人以外はその献上品を知らない中、村の子ども達はその献上品を置く二人に声をかけた。


「いつもなんでお肉とか、山菜とか、くれるの?」


「仕方ないだろ、そういう決まりらしいからよ。」


「それって僕たちも出来るの?」


「んー、どうかな。中々難しいけど、」

「ルオ、そんな難しくないよ。僕たちだってこれくらいの時からやってたでしょ。」


 モンロンは村の子ども達にやり方を話すと、子ども達は興味津々の様子で話に頷く。

「んー、これはどう説明したらいいか、」


「それならよ、今度一緒に山入って教えればいいだろ。」


「確かに!」


 村の男達が傭兵がいる側の森を避け、女達は万が一を恐れて乳飲み子を抱えて家の奥にいる頃、無垢な子ども達と、ルオ、モンロンの二人は約束を交わしたのだった。


――――――――――――――――――――――――――――――


「子どもたちをどうするおつもりでしょうか。」


 アイコはまさかの言葉に動揺するしかなかった。感謝や謝罪の言葉が待っていると思っていたアイコは、言葉にならない返事をするだけで村の男たちと見つめ合うという不可思議な時間が両者の間に流れる。やっと意識がはっきりしたアイコは問い返す。


「それはどういう意味だ。」


 村の男たちはやっぱりまずいことを聞いたのだと、ここで謝罪をし始める。

「いや、何でもございません。申し訳ない、」

きっと彼は村の中では教養がある方なのだろう。敬語もどきで会話を返すが、一緒に来ていた別の男が納得いかないと言った表情で怒りを漏らした。

「もう勘弁してくれ。毎日毎日、うちの子どもを山に連れ入って、僅かばかりの食いもんで帰らせて。ワシらではなく子を使うのは何かの遊びか!!」

 男の目にはうっすらと涙が浮かび、何かを覚悟した表情だった。

「よさんか、日々肉を分け与えてもらい、金も貰った。村ごと奉仕しないでこんな恵みを返せるはずが、」


 彼らの鬼気迫る口論を聞くしかできなかったアイコは彼らが何を言いに来たのか理解した。確かに野盗と同じと言われる傭兵にしては乱暴がないと思っていたが、古参の方々はそうやって遊んでいるのかとある種の納得の相槌を打った。非道だが仕方ない。アイコは小さいが確実な失望を感じながら、役目として彼らには語気を強めて追い返す事をした。仕方ないと再び自分に言い訳をしながら。


 森に入る鍛錬になってから帰るのが遅いルオとモンロンを待って今日の話をアイコは伝えた。反応は様々だった。よくわからないといった様子のモンロン。何が問題なのか理解していないルオ。静かにうなずくチャーミス。彼らの話したアイコ自身も何がしたかったのか自分でよくわからなかった。批判したいのか、同じように蛮行をしたいのか、きっと話して楽になりたかったのだろう。少しの沈黙ののち、「寝るわ、」とルオが立ちあがった事でその場はお開きとなった。


 その晩アイコは故郷の村が夢に出てきた。早くに亡くした父、病弱な母、弟と妹たち。穏やか陽気が村全体を包み、食べきれない量のご馳走が目の前に並ぶ。あぁ幸せだと思った瞬間、辺りが暗くなり悲鳴が轟く。その声は聞き覚えのあるものだった。マドルやマオバたちの姿が見える。「やめてくれ」と叫んだところで目が覚めた。


「大丈夫?アイコ?」

 毎朝一番に起きるモンロンが心配そうにアイコを見つめる。

「あぁ、うん。大きい声出して悪い。」

 少し寝足りないアイコだったが、あの夢がまた出てきそうで起きる事にした。


――――――――――――――――――――――――――――――


 先日から訓練に古参組があまり来なくなった。もう自主性に任せていいという判断をした事と、マドルから文が届いたからというのが理由だが、アイコは疑念が確信となり、猜疑心変わろうとしていた。

 用意されたノルマを終えれば自由時間になるため、ルオとモンロンはこれまで以上に山を楽しむ。

 必然的にルオとモンロンを師と仰ぐようになった村の子ども達との時間も増える。


「おい、モンロン、俺と勝負しよう。」


「勝負?」


「こいつら半分に分けてどっちが大物狩れるか勝負だ。」


「いいけど、ルオ負けちゃうよ?」


「なんだとーっ!!」


「ルオ兄ちゃんそうやって怒らない。」


 村の子ども達のまとめ役ビービルはルオを嗜める。ここ数日一緒にいて、ルオとモンロンの扱いにはだいぶ慣れてきたようだ。


 子ども達はいつの間にか数を増やして計十四人。五から上の数を数えられないモンロンと村の子に変わってルオがチーム分けをする。

 ビービルがいる方は五人で、いない方は九人という極端な分け方にしたが、誰も反対する者はいなかった。

 ルオのチームに入ったビービルはまとめ役という事もあり優秀だった。おそらくルオとモンロンがいなくなった後でも満足いく狩りを出来るだろう。


「よし、ビー、今日は深くいくぞ。」


「そうしよう。こっちは人数が少ないからそうじゃなきゃかてないもんね。」


 アイコの疑念、動き出したマオバ達古参組の動向などつゆ知らず、ルオとモンロンは狩り勝負に集中していた。

読んでいただきありがとうございます。


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