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巨神兵は堕ちた  作者: ミツメ


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16/17

目線の先

 大きな戦いの後にはそれ以上に大きな後始末がつきまとう。それは敗戦国も戦勝国も同じ。今回に関しては、両国とも敗戦であり戦勝であるという歪なものだったが、後始末に関してはその部分はあまり関係なかった。


 武功を挙げたもの、逆に糾弾されるもの。一晩にして多くを得て、多くを失うものが現れる。

 国を賭けたとも言っていいフィールでは、その殆どに武勲が与えられ、傭兵の中では二隊、『マドル隊』と『ガイカナン隊』が勲章を授与した。フィールでは騎士爵は無いため、両隊とも食客として歓迎を受ける形となった。


 あの日の宴の後、マドル隊は古参の数人と、新規の数人を残して解散となった。正しく言えば、マドルとそれに率いる者がいればマドル隊のため、解散ではないが、今回の戦いで背中を預け合った仲間の殆どは傭兵業を辞めることを決断した。

 大きな利益を得たという理由もあるが、辞める理由の殆どは生き死にのテーブルに再び立つ事への恐怖だった。


 マドル隊は活躍もあってか、多くの血が流れる凄惨な戦地へ赴くことが多かった。あの時は役目や麻痺した神経により、熱を持てていたがその熱を再び燃やすことはなかなか難しいものだった。


 次々と新たな夢へ飛び出していく中、残った人数は合計で十人。今回の戦争に参加した時よりもだいぶ人数が減っていた。

 その中に当然ルオはいた。

 戦いの渇望でも、恐怖への克服でも、勝者の慢心でもなく、英雄願望と腹いっぱいで眠れるという理由がここにはあった。

 晩餐会でも普段と変わらず、貴族へ挨拶回りをするマドル達を気にも留めずに、初めて見る豪華な会場と食事に興奮し放題だった。


 あれこれと食事に手を伸ばし、その度にころころと表情を変える。幸せとはこの事なのかと視線を変えるたびに目に映る未知を堪能していた。


「あなたは誰の下男ですの?」


 ちょうど異国の料理が並べられた机に手を伸ばすところだった。

「これ食べちゃダメなのか?」


「何を言ってるのかしら。好きに食べたらいいの。ウロが聞いているのはお前の雇い主なの。」


「やほいぬし??」肉を頬張りながら答えるルオ。


「そうなの。それとも兵隊さんかしら?」


「俺はマドルのところの傭兵だぞ。マドルならあそこで話してる。」ルオは貴族達と交流を図るマドル達を指さした。


「どおりで小汚いのかしら。ただ、お父様方はせっかくの料理そっちのけでお話ばかり。お前のように嬉しそうに食べるのは見てて気持ちがいいんですの。」


「うん。こんな料理初めてだ。お前が用意してくれたのか?ありがとう。」


「お前じゃない。ウロなの。」


「そうか、ウロありがとな。」


「あっちにもっと美味しいものがあるかしら。ウロについてくるの。」


 大陸における三派閥。ナリを主とするナリ派。フィールが属する反ナリを掲げるブロイソ派。南方の大陸であるハントレ大陸を支配する帝国からの殖民からなる帝国派の三つ。


 この晩餐会ではフィールを軸とはしているが、その戦いを支えたブロイソ派の有権者と、秘密裏に協力していた帝国派の者達も参加していた。

 様々な思惑が渦巻く晩餐会。今後の情勢にも必ず影響するこの場で、食事を楽しむ余裕がある者などルオくらいしかいなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――


 数日間の王都の滞在ののち、マドル隊は次の戦場に向けて出発する事になった。晩餐会の前から殆どが別れており、この日まで一緒にいる者達の殆どはこれからもマドル隊として傭兵を続ける者達だった。

 マドル達はこれまで通り、ルオ達新参は以前とは比べ物にならないくらいの費用を費やして準備を行う。

 手に馴染んだ武器以外は新しいものにするか、鍛え直してもらい、防護、装備品、消耗品、馬、荷台、など様々な物を新たにより高性能なものへ変えていった。


「おい、ルオお前食いもんばっかり詰め込んでるけど、良いのか?それで。」


 マドル隊、1番の古株であるシャケがルオのパンパンになった鞄を見て聞く。


「うん。これで俺は無敵だ。」


 シャケはルオではなくマオバに視線を送る。

「大丈夫。装備品と防護服は俺らと同じものを用意してあるし、手斧も鍛え直して三本持たせてある。ちょこちょこ足りないものはあるけど、まぁ無くても少し困るくらいだからちょうどいいだろ。」


 マオバが二人で動くと言ったあの日からマオバはルオの保護者のような扱いになっている。

 マオバは、ルオの秘密を結局誰にも話さない事に決めた。それは少し怖さがあったからでもあり、自分だけの秘密にしたいという気持ちもあったからだった。ルオを利用してやろうというわけではないが、ルオという勝ち馬の手綱は自分が握っていたいという独占欲のようなものが一番の理由かもしれない。


 なんにせよ、ルオは正式に自分たちの仲間となった。寝食を共にして、背中を預け、命をかけあう存在。次の戦地までの間、古参の面々は当然だが、ルオたち新参も鍛錬の日々を送ることになる。ルオに特別な力があったとしても戦闘能力をつける必要がないわけではない。寧ろ、とてつもないパワーアップになるだろう。

 

 次の戦場は北西の小国群。日夜争いがあり、最も傭兵需要が高く、最も危険な地域とも言われている。マオバ隊は燃え尽きない野心を滾らせて進む。

読んでいただきありがとうございます。


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