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巨神兵は堕ちた  作者: ミツメ


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13/17

ただ前へ

 マオバ隊が敵兵を妨害する間、ルオは単独行動を繰り返ししていた。理由は単純で自分が最も武功をあげたかったから。だからこそ、ギリギリまで敵を待つし、本来作戦にない場所にまで足を進めていた。


 単独行動を繰り返すうちにルオは自分に不思議な力があると気付いた。自分はどうやっても死なない幸運があるのだと。

 そんなわけない事は、初めてその現象を目の当たりにしたマオバによって説明されたが、ルオは一向にマオバの話に耳を傾けなかった。

 体が真っ二つになったとか、死ぬところを見たと言われても信じるはずがない。きっとマオバは死にかけて頭がおかしくなっているのだと、憐れみすら感じた。


 ルオは組み分けされて、それぞれ逃げるように言われたがどうにもマオバの様子が怪しくて、隙をついてマオバを追うことにした。ルオは、マオバの放った英雄という言葉に違和感を覚えていた。自分たちはそんな活躍を出来ていない。もしかするとマオバは自分だけその英雄になろうとしているのではないかと。

 マオバの後を追うのはなかなか難しく、やっと追いついた頃にはあの状況になっていた。一度目の勝利宣言は叶わず、二度目の勝利宣言でルオはやっと英雄の切符を手にすることができた。

「見たか!俺の手柄だ!」


 ルオは呑気にそう言いながら鼻歌を口ずさむ。マオバば現状を理解するのに少し時間をかけたのち、

「とりあえずここ離れるぞ。」

 と冷静さを取り戻して判断を決めた。


 あれだけの強者であれば味方を引き連れている可能性も少ないとは思ったが、軍部の人間であることは確かだ。あのレベルの強者と連戦になるのは命がいくつあっても足りない。


 全身の痛みを我慢しつつ、どうにか歩けることに感謝する。森を抜け、フィール陣営のいる場所まで進む。追っ手や伏兵に気を張っていたが、それらはなくすんなりと陣営拠点へ帰って来ることが出来た。

 ここに来る間、ルオとマオバば特に会話を交わす事はなかった。ルオは一方的に話しかけていたが、あまりにも素っ気ないマオバの反応を見て途中からやめた。マオバば冷静に慣ればなるほど、際立つ身体の痛みとあり得ない光景に頭を悩ませるしかなかった。


「お前らどこの隊だ?」


 満身創痍のマオバと反対に呑気に歩き回るルオを見て、問いかけられる。

「マドル隊です。これを、」

 マオバは胸元から隊旗を見せる。


「おぉ!!あのマドル隊でしたか!失礼しました。すぐに休める場所を用意いたします。」


「先に来てなかったか?同じくマドル隊のやつらが」


「いえ、お二人が初めてです。報告も上がっていません。」


 はっ、とマオバは声にならない言葉を漏らす。咄嗟に振り返り、うろちょろ歩くルオに声をかける。


「おい、ルオ。お前、どの道で最初進んだ。」


「どの道、ですか。んー、森を抜けてから草原地帯をまっすぐ行ってたような、」


「おい、馬を貸せ。」


「え、あ、しかし、」


「早く貸せ、」


 ルオの返答にマオバは足を引き摺らせながら、休養場へ案内していた兵士に頼む。語気を強めるマオバに兵士の男も「馬を用意しろ」と指示を出した。


「ルオ、お前はここで休んでおけ。同じマオバ隊のやつらが帰ってきたら同じように休んでおくように伝えておけ。」

 ルオは頷く。マオバは続けて、

「もし、近くに負傷者や所属不明の部隊がいたらこいつに顔を見せて確認してくれ。」

 馬を持ってきた兵士にそう声をかけると、無理やり馬に這い上がり走らせた。


「傭兵軍って言ってたもんな、」


「ありゃいい指揮官だよ。お前、よかったな。」


「どういう事だ?」


「お前さん達の作戦は詳しく知らんが、あっちから来たって事は敵戦地の中から抜けてきたわけなんだろ?そりゃ追っ手の百や二百いてもおかしくない。正規軍の騎兵だろうから、寄せ集めの傭兵じゃなぁ、」


「お前、よせよ。そうだと決まったわけじゃないんだ。」


 ルオは無理やり別れてマオバの後を追った時のことを思い返す。確かにずっと馬が地面を蹴る音が聞こえていた。マオバの姿が小さくなっていくのと同じように、風の音に消えていく蹄が踏み締める音を思い出した。


――――――――――――――――――――――――――――――


 マドルの作戦は大成功だった。元々は中央路以外を叩く事で、物資の流れを一本化し、戦局の見極め、状況によっては突撃による物質強襲を求められていた。少しでも足を止められればと考えていたブレイソ山間部戦線のフィール陣営。

 しかし、その結果は思っていた以上。まさに大金星を上げてくれた。


 ブレイソ山間部主流補給路、全隊撤退。ブレイソ山間部ナリ戦線、右方左方ともに後退。マドル隊の功績により、全体の状況がやや優勢からかなり優勢へと動いた。

 立役者であるマドル隊は現在、休養という名目で戦争需要で活発になっている城塞都市『アリリキ』に訪れていた。


 貸切の札が掛けられた『羊の爪亭』では、今回の作戦に参加したマドル隊の全員が大杯を持ち、中央に座るマドルの言葉を待っていた。

「今回の作戦。みんなよくやってくれた。最初からついてきてる奴ら、今回で仲間になってくれた奴ら。全員の力のおかげだ。特にマオバ、お前の隊の活躍は今回の成功に直結していた。」


 他の席では腕が窮屈なほど、人に溢れているが、組み分けられたマオバ隊の席は空席が目立つ。


「全ての勇姿に。俺たちの勝利に。乾杯。」


 マドルは小さく口角を上げるだけで、大金星をあげたとは思えないような声色で杯を掲げた。

 そんな様子はお構いなしに盛り上がる傭兵達。勝利を挙げた酒場には、湿っぽい空気は必要なかった。



「マオバ、次も行くぞ、」


「もちろんだ。」


 この休養が終わればマドル隊は再び戦地に赴く。今回の作戦が成功したことによって、マドル隊はより一層重要な役割を任されるだろう。それこそマドル隊の求めていた事であり、そのために今までやってきた。

 はじめて小隊数の隊長をしたマオバにとって今回の結果はすぐに飲み込めるものではなかった。

 長くやってきた仲間を亡くし、けれどその仲間達のおかげで自分たちは夢へと前進していた。ここで止まっては行けない。と強い信念が芽生えていた。


「一つ頼みがある。」


「なんだ?」


「ルオは俺のところに置いといてくれないか?あいつは俺が面倒を見たいんだ。」


「あぁ、それはいいけど。伝令に来たお前の隊の奴らはめちゃくちゃ馬鹿だって、」


「そうだな。馬鹿だ。」


 はじめての酒の味に騒ぐルオを見てマオバは馬鹿馬鹿しく笑った。

読んでいただきありがとうございます。


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