プロローグ
初投稿
書庫の埃をはらう手が止まった。
「え、なにこれ……地図?」
あれ? そういえば、俺、この世界の地図なんて一度も見たことなかったな。
「とりあえず見てみるか……」
ん? んんん??
これ、どう見てもヨーロッパの地図じゃねえか!?
ちょ、ちょっと待てよ……
俺、まさかファンタジー世界に転生したんじゃなくて、逆行転生してるってこと?
いやでも、ドワーフとかセイレーンとかケンタウロスとか……いるんだけど!?
しかも俺、吸血鬼だし!
で、これはいつの地図だ……1600年?
この屋敷もそのくらいに建てられたはず。
今は1800年……ってオーストリア帝国あるじゃん!?
おいおい、俺が大好きでゲームで延々プレイしてたオーストリアだぞ!?
プレイ時間の半分はオーストリアに費やしたんだぞ……今ここにいるってマジか。
そして今いる場所……この印は……トランシルヴァニア!?
おいおい、ここオーストリア帝国の辺境じゃねえか!!
つまり俺、帝国の一部に潜んでる状態!?
いままで怠惰に生きてきたが、それも今日で終わりだ!
このままだとオーストリア帝国は第一次大戦で崩壊する!
ファンタジー種族がわんさかいるのに、地図は史実どおり。
つまり歴史は元の世界と同じように進むってことだ。
それが意味すること……
オーストリア帝国が滅ぶってことだ!
オーストリアは共和国として残っている?
んなアンシュルスされそうな国なんてごめんだね!
しかも共和国だぞ!
俺は生粋の君主主義者だぞ、死ねってのか!?
幸い、手慰みにエンジンを作っていた。
元はエンジン設計の技術者だからな。
今は1800年、鉄道はまだ発明されていない。
つまり、このエンジンでオーストリアに産業革命を起こせるってことだ!
このエンジンは俺の魔力で動くが、石炭への転換も簡単だろう。
しかもここはトランシルヴァニア、石炭はある程度埋蔵されているはず。
見えたぞ……
俺に与えられた使命は明白だ。
エンジンを軸に会社を作り、帝国を産業革命で再び栄えさせろ、と。
だがしかし問題がある。
俺が吸血鬼だってことだ!
俺たち長命種は俗世に絡むことを嫌う。
絡んでいる奴を見つけると力づくで止めようとする。
会社を立ち上げることすら許されないかもしれん……
ま、問題は解決済みだ。
屋敷の使用人を、表向きの会社の顔にすればいい。
「おい、そこの使用人! いまから俺の会社の社長になれ!」
「はい? 何をおっしゃっているのですか、お坊ちゃま」
「だから俺がエンジンを使った会社を作るって言ってるだろ! 帝国の輸送を支えるんだ!」
「この、ただ回るだけの機械でですか?」
「車輪に組み込めばできる! 分かったな?」
「なるほど、そういうことですか。では、わたくしめに俗世の干渉を……」
「そういうことだ!!」
頑張って書きます よろしくお願いします