45.四属性の脅威
「溶岩雨」
ゼスは高揚した声で溶岩を降らせる。
「『氷槍』、スキル付与『腐食』」
俺は『腐食』つきの氷柱で溶岩を打ち消すと、残った氷柱をゼスに向けて放った。
「炎壁」
だがゼスは悠々と炎の壁を展開して氷柱を溶かした。
「『炎熱火球』、『氷槍』、『天雷』、『虚斬り』」
ゼスは四属性のスキルを同時に発動。大きな火球と鋭い氷柱が俺に向かって真っ直ぐに飛んでくる。
「『岩石生成』、スキル付与『発火』」
その二つを燃やした岩壁で防ぐが、同時に空から雷の雨が降り注ぎ、前方からは岩壁を砕きながら広がる黒い亀裂が迫る。
「くっ……」
詠唱が間に合わない……。
俺は勘だけで雷をかわして黒い亀裂から距離をとった。そうして作った一瞬の隙に俺は詠唱した。
「金属錬成」
お馴染みの銅柱を近くに出現させて雷を逸らす。だが、詠唱の隙ができたのは俺だけでは無かった。
「『炎竜砲』、『氷吹雪』、『光弾』、『黒雲』」
『黒雲』を自分ではなく俺の周囲に出現させるゼス。
『炎竜砲』に『氷吹雪』……。俺の知らないスキルに加えて視界を奪うとは……まずはこの黒い雲から抜け……。
ドオォォオォォォン!
「ぐっ……」
突如雲を突き破ってきた炎の光線が、俺の左太ももを貫通し、肉を焼いた。そしてそれとほぼ同時に、人間ほどの大きさがあるトゲだらけの氷の塊が、『黒雲』の中から現れる。
キイィィイィィン!
脊髄反射で氷の塊を弾くと俺はすぐに詠唱した。
「炎壁」
全面に展開した炎の壁が、氷の塊を瞬時に溶かす。しかし今度は光の球が炎の壁を抜けてくる。
光弾?!
光の球が輝きを増し今にも爆発しそうになるが、俺には逃げ道がない。炎の壁を消せば、視界の悪いこの状況だと氷の塊の餌食になるからだ。そして『金属錬成』で壁を作ろうにも『光弾』との距離が近すぎる。
先にこの黒い雲を払うしかない! 間に合うか……。
「突風」
一瞬にして雲が霧散し、視界が開けた。それとほぼ同時に『光弾』の爆発が始まった。
ドカアァァァン!
辺り一帯が光にまばゆい包まれる。
「ふん。他愛無い……所詮は人間、神に勝てるわけがなかろうて……」
勝ちを確信したゼスが、目を細めて『光弾』の爆心地を見た。だが、俺はもうそこにはいなかった。
「隠密」
『光弾』の爆発の直撃を免れ気配を完全に断った俺は、ゼスの視界に入らないように空高く飛んだ。そして、ゼス目掛けて無音で急降下。剣先が、ゼスの肩を捉えた。
「……ワシをあまり、見くびるで無いぞ」
「なっ?!」
ギョロリと眼球を動かして俺に焦点を合わせたゼスは、俺が肩を切った方の腕で俺の手首を掴んで剣を止めた。そして、反対の手に持った杖が、俺の鳩尾を強打。
「氷鎧」
それをギリギリで氷鎧を鳩尾に出して受けると、掴まれた手首からも出現させてゼスの手を振り払い距離をとった。
くそっ! 攻撃は通るのに決定打がない……どうすれば……。
「なんじゃ? もう万策尽きたのかのぉ? じゃったらもう諦めて死ぬがよい!」
ゼスも攻撃してこない? そうか、向こうも決め手がないんだ。互いに決め手がないのなら、ゼスも考える時間が欲しいはずだ。会話で時間を稼ぐ。
「断る。偉そうなことを言うくせに攻めてこないのは、おまえも手札がなくなったからじゃないのか?」
「……」
無言の肯定をしたゼスに向かって俺は口角を上げて見せる。
「この若造が……まあよい。お主にもう打つ手が無いことは明らかじゃ。じっくりと策でも考えるとしよう」
「ははっ……そのまま油断してくれれば首を落としてやるがな」
すると、ゼスがやれやれといったふうに目を閉じて首を振る。
「ふん。ワシがいつお主の攻撃を本気で防ごうとした? ワシはいつでも油断しておる。そうでなければこの右膝の怪我もしておらんわ!」
俺はゼスを無視して思考を続ける。すると一つ、考えが浮かんだ。
そうか。『毒生成』による毒も、『腐食』も光属性スキルの『浄化』で無効化できるから意味がないと思っていたが、同時にかければ『浄化』が二回必要になる。そこに畳み掛けて攻撃して『浄化』スキルを発動する隙を与えなければあるいは……。
「あとは……どうやって当てるか、だな」
「お主、何か思いついたような目をしておるな?」
俺の変化に気付いたゼスがすぐさま杖を構える。
だが攻撃自体は今までだって通っている。あとはそこに『毒生成』と『腐食』を付与するだけだ!
そうして俺がゼスに攻撃しようとしたその時、右側から二つの宝玉が飛んできた。
「やはり運命はワシに味方するのじゃな」
ニヤニヤと下賤な笑いを浮かべるゼスが杖を掲げると、緑と茶色の宝玉が杖に嵌った。そして案の定杖とゼスが風と土属性の魔力を纏い出した。
「もう一人の分身もやられたようじゃが、これでようやくお主を屠る準備が整ったと言うものよ」
「それは俺のセリフだ! 俺もようやくおまえを倒す手段を見つけたぞ!」
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