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【完結】かつて世界を救った勇者は地獄に追放された〜俺は俺を世界から追放した神々への復讐を決意する〜  作者: 早野冬哉
第二章

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44.ルーカスの戦い

 さっきゼスが使った闇属性防御スキル、『断空』は連続攻撃によって破れる……か。


 だがゼスには光属性スキルの『光盾』もある。『金属錬成』で光を吸収するアイルドンを付与しなければそもそも『光盾』で防がれる。


「スキル付与『金属錬成』」


 俺は略奪剣の表面を薄いアイルドンの膜で覆った。そして『炎翼』と『突風』で空にいるゼスと距離を詰める。


「虚斬り」


 杖術の要領で杖を振り下ろすゼス。すると杖先が通った空間は黒くひび割れ、枝分かれした黒いひびが俺に迫る。


「この程度……」


 俺は体を捻って黒いひびの僅かな隙間を潜り抜けた。


 バリバリッ……。


 ゼスの杖が電気を帯びる。


 まずいっ!


「金属錬成」


「天雷」


 前方以外を黒いひびに囲われて、逃げ場のない俺に幾多の雷が降り注ぐ。だが何とか銅柱の生成に間に合い、避雷針の要領で雷を逸らすことに成功した。


「『炎熱火球』、『連弾』」


「光盾」


 ドゴオォォン!


 無数の火球による爆撃を、ゼスは光の盾で防ぐ。


 だが視界は遮った!


「『氷槍』、スキル付与『金属錬成』」


 これ一本で小さな町なら滅ぼせそうなほど巨大な氷柱を一本、アイルドンでコーティングして放つ。


 バリィィィン!


 『光盾』が割れる音。それと同時に煙が吹き飛ぶ。


「断空」


 ゼスは巨大氷柱を防ぐために空間を分断する『断空』を使った。そして氷柱が砕けると同時に、『断空』の短い効果時間が終了し、空間の断絶がなくなった。


 『断空』は絶対防御だが、再発動には数瞬かかる!


 俺が手を横に振り払うと、砕けた氷が氷柱となり、アイルドンも付与されたままでゼスに襲いかかる。


「舐めるでないわ!」


 ゼスは襲いくる氷柱を圧巻の杖術で弾く。だがそれでも、一本の氷柱がゼスの骨ばった右膝を貫いた。


「ぐおっ……」


 それでもなお尽きない氷柱の攻撃。ゼスは再び『断空』を発動した。


「お主の攻撃は悪く無かった。じゃが、ワシを鎮めるにはちと足らぬ……」


 俺が元いた場所を見つめていたゼスは、慌てて周囲を見回す。


「どこじゃ? どこにいったのじゃ?!」


 まだ『断空』の再発動には時間がある!


 俺はゼスの真上から、重力を味方につけ最高速度で切りかかった。


「上かっ!」


 ガキイィィィイィィィイィン!


「くそっ……これでも仕留められないか」


「ふん……」


 優越感がこもった笑みを浮かべるゼスが、杖で俺の剣を受け止め、そのまま鍔迫り合いへともつれ込む。


「光剣」


 ゼスは突如杖を片手持ちに変えて、左手に光の剣を持つ。そしてゼスはそのまま、俺の右脇腹目掛けて剣を振り抜く。


「氷刀」


 俺もゼスの動きに対応して略奪剣を左手持ちにした。そして右手で逆手に握った氷の刀で、光の剣を受け止めた。


「……何故だ? 何故おまえのような外道が神に生まれ落ちるんだ!」


 俺は略奪剣と氷刀を握る力を強め、ゼスを押し込む。


「ふん。ワシはなるべくして神に生まれ落ちたのじゃ。それはワシの天界での序列が三位であることが証明しておる!」


「もし本当にそうであるならば、天界はすでに腐り切っているということだな」


「お主のごとき矮小な人間風情の尺度でワシら天界の神々を測るな! 不遜にも程があるぞ!」


 ゼスの杖と光の剣から伝わる力が強まる。


 きた!


 俺はゼスが押し返す力を流し、ゼスの姿勢を前に崩した。そして、ゼスの脳天目掛けて略奪剣を振り下ろす。


 ズバンッ!


 だが切り落としたのはゼスの左腕だった。咄嗟にゼスが光の剣で頭を守ろうとしたからだ。略奪剣に付与されたアイルドンの光吸収効果によって光の剣は消え、勢いのままに俺の剣はゼスの手首を捉えたのだ。


「ぐおっ……」


 ゼスは顔を顰め、距離を取ろうと真後ろに飛ぶ。


「逃すわけがないだろうっ!」


 俺はすぐさまゼスを追いかけようと、炎の翼を羽ばたいた。


「光弾」


 だがその瞬間、ゼスの詠唱に応えて光の粒が俺とゼスの間に散乱した。そしてその光の粒たちは眩く輝き出す。


「くそっ……『金属錬成』」


 俺はやむなくゼスを追いかけるのをやめ、自分の前にアイルドンで壁を作った。


 ドカアァァァン!


 直視できないほどの輝きを放つ爆発。アイルドンが光を吸収してくれるとはいえ、俺は思わず目を覆ってしまった。


 右膝に左手。かなりダメージを与えられたな。このまま押し切れるといいんだが……。


 光が止み目を開けると、数十メートル先でゼスが浮遊していた。だがゼスが仕掛けてくる気配はなく、怪我を気にしていた。


「どうした? さっきまではあれほど自分は神だから何をしても許されると偉そうにしていた割に、その程度の怪我で怖気付いたのか?」


 俺は今ほとんど無傷。そしてゼスには着実に攻撃を当てられている。あとは精神的に崩せば……。


「それで挑発しているつもりでおるのか? 全く持って浅はかじゃな。ホッホッホ!」


 そういうとゼスは、怪我を気遣うのをやめて高らかに笑い出した。


 なんだ? ゼスの雰囲気が変わった?


 徐にゼスが杖を掲げた途端、左側から赤と青色の宝玉が飛んできた。


「どうやら分身の一人がやられたようじゃが、これで本体であるワシに力が戻る。……相手の黒い鎧をきた剣士も重傷のようじゃし、さすがはワシの分身じゃ! タイミングといい働きといい素晴らしい!」


 飛んできた二色の宝玉がゼスの杖に嵌る。その途端、ゼスと杖が光と闇属性だけでなく、火と氷属性の魔力も帯びたことがわかった。


「元勇者よ。神であるこのワシに傷をつけたこと、後悔するがよい!」

この話を読んでいただきありがとうございます!


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