33.緑縛地獄再び
「緑縛地獄もかなり明るくなったな」
以前は木々が敷き詰められ、地上に一切日光が差し込まなかった緑縛地獄。だが今は、木々が程よく伐採され、地面にも日差しが差し込んでいた。
俺はネルから頼まれた依頼──突如現れた魔獣たちを討伐するため、『炎翼』を使って緑縛地獄の上空を飛んでいる。
「今ドライアドは確か、巨木に住んでいると言っていたな」
かつては悪行を働いて処刑されたラクシュが住んでいた巨木。その頂上近くに立つドライアドの姿がぼんやりと見えた。
「ルーカス様、よくぞおいでくださいました」
透き通った肌と緑色の髪が日差しを反射して、ドライアドの周囲が輝く。彼女は恭しくお辞儀をすると、エメラルドのような美しい瞳で俺を見た。
「着いて早々申し訳ないのですが、今から前線に合流することは可能でしょうか?」
「ああ、問題ない。案内してくれ」
「ありがとうございます。詳しい事情に関しては道中、移動しながら説明させていただきます」
***
「「「風刃」」」
「「「風刃」」」
数十のピクシーたちが、二組に分かれて交互に風刃を放つ。その隙のない攻撃に、魔獣たちは薙ぎ払われ、なかなかピクシーたちの元まで辿り着けないでいた。
「狼型に植物型、それに巨蟲や邪精霊までいるのか。聞いてはいたが、これはどう考えても異常だ」
狼と食人植物、稀に巨蟲は同時に発生してもおかしくはない。だが邪精霊は他の魔獣からも敵対されるため、他の魔獣と同時に現れることなどあり得ない。
「ここはわたくしとピクシーたちで十分です。……先程も説明致しましたが、森の奥にはおそらく魔獣発生装置があると思われます。ルーカス様には、その装置を破壊していただきたいのです」
「わかった……ここはあなたたちに任せます」
俺は『乱風』を発動し、足に風を纏わせる。そして、魔獣たちが巣食う森へと突っ込んだ。
「ギイィッ!」
「ガルルッ!」
ザシュッ!
四方から飛びかかってくる狼と巨大アリ。俺は一切スピードを緩めずそれらを突き、切り裂く。
パキパキパキパキパキッ……。
前方にいる黒い霧──邪精霊の周囲の草木が黒く割れてゆく。
邪精霊を倒すには光属性のスキルが必須……ドライアドには光属性スキルを渡しておいたし、俺が倒す必要はないな。
俺は天使や神々から手に入れたスキルを使いたくないがために邪精霊をスルー。複雑なステップで邪精霊の攻撃をかわして、さらに森の奥へと進んだ。
***
「あれか?」
しばらく森を進むと、明らかに人工物である黒い手のひらサイズの立方体が宙に浮いていた。そこからは紫色の魔力が絶え間なく流れ出している。やがてそれは形を成し巨大カマキリへと姿を変えた。
ヒュッ……スパッ!
カマキリの鎌を避け、同時に首を切り落とす。そうして装置に近づき、剣を上段に構えたその時、
「ピィィイィィー!」
鷲のような鳴き声とともに、上空から巨体が降ってきた。
「鷲の頭と翼にライオンの胴体……間違いなく、こいつはグリフォンだな」
風王の加護を持つとされるグリフォン。炎海魚と同じく災害指定された魔獣で、人間界では百年前、グリフォンによって大国が一つ滅ぼされたと聞く。
伝承に聞く話だと、集団相手では炎海魚の方が強いとされているが、一対一の戦闘に関してはグリフォンの方が圧倒的に強いらしい。
「だがそれでも、天使はともかく女神よりは弱い!」
一歩でグリフォンとの距離を詰め、そのまま剣を水平に振り抜く。だが、グリフォンは空に飛び上がってかわした。
シュパアァァァアァァン!
予備動作なしで繰り出された六本の風刃。それを第六感で受け流す。
危なかった! なんだ今の攻撃は?! 速すぎる……。だが、どうせ見えないのなら……。
「攻めあるのみ! 『氷槍』、『連弾』」
俺は空に無数の氷柱を展開し、グリフォンに向かって一斉に射出。それを、翼に乗せた『突風』で吹き飛ばすグリフォン。
やはり防がれるか……だが、間合いに入り込む隙はできた!
無数の氷柱でグリフォンの視界が遮られた瞬間、俺は『炎翼』と『乱風』でグリフォンの背後に回り込み、剣を振り下ろす。
ガキンッ! スパンッ!
一撃目に反応して、グリフォンは鉤爪で俺の剣を防ぐが、体が大きく流れる。その隙をついた二撃目にはグリフォンも対処できず、俺の剣は翼を根本から切り落とした。
「ピギャッ……」
翼を失い、情けない悲鳴をあげて地面に衝突したグリフォン。最後の悪あがきとして放たれた『風刃』の乱れ打ちを難なく潜り抜け、俺はグリフォンの頭を貫いた。
「スキル『斬撃速度上昇(大)』を略奪」
斬撃速度上昇か……久々の新スキルはありがたいな。
俺はグリフォンの死体に手を合わせ、火球で火葬した。そして、その灰が風に運ばれていくのを見届けてから、宙に浮かぶ黒いキューブ──魔獣発生装置を両断した。
「よし、ドライアドたちのところへ戻るか」
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