31.決着、復讐
「ちょっと……ほんとに打つの?!」
レンの弟をその場に置き去りにし、ヘスラは背を向けて走り出す。
ヒュオッ!
俺が放った『鎌鼬』は、レンの弟の眼前で右に逸れ、弧を描いてヘスラの背を貫いた。
「あがっ……」
『腐食』の効果と『焼熱病』の効果で身悶えするヘスラは涙を流し、地面に爪を立てて痛みに耐える。
「ぐうっ……か、『解呪』」
『解呪』により『腐食』と『焼熱病』から解放されたヘスラ。だがそのタイミングで、『毒生成』と『氷刀』の効果が発動する。
ザクザクザクッ……。
ヘスラは毒によって過呼吸になる。そして体内から三本の『氷刀』が生え、ヘスラは肉を貫かれた。
「ま、まだよ……『治癒』」
さすがは女神、しぶといな。……ありがたい。その方が遠慮なく復讐できるからな。
俺はヘスラが自らを治療している間にレンの弟に駆け寄った。
「大丈夫か? 町の南門を出て街道沿いに歩くとみんないるから、そこまで一人で行けるかな?」
呆然と立ち尽くすレンの弟の頭を撫でると、
「あ……うん、わかった」
確かな足取りで南門へと向かって行った。その小さな後ろ姿を見送ると、俺はヘスラに向き直る。ヘスラはちょうど、うめき声を上げながら氷の刀を体から抜いたところだった。
「終わりだヘスラ……」
「ふざけんじゃないわよ! このあたしの体を……どれだけ傷つければ気が済むの!」
起き上がろうと顔を持ち上げるヘスラ。俺はその頭を踏みつけ、地面に激突させた。
「ぶっ……」
「ふざけているのはおまえたちだろ! 俺は何度も死にかけて、最後は相打ちになってまで魔王を倒し世界を救った……それが、魔王が生まれ落ちたのがおまえたち神々のミス? それをどう許せと……」
「うるさい! あたしたちは神よ。何をしようが許される。それが自然の摂理でしょう?」
鼻血にまみれた顔で、地面にうつ伏せに倒れているヘスラは、それでもなお自分が絶対であると主張する。
スパッ……。
ヘスラが持つ、長く美しい金色の髪を切り落とす。
「あ、あ……あたしの髪っ!」
ヘスラは必死に切られた髪をかき集めるが、俺は髪束を掴んで燃やした。
「発火」
「あなた、こんなことして許されると……」
「まだわからないのか?」
俺はヘスラを憎悪と憐れみが混ざった目で見下ろす。
「おまえは負けたんだ。もうおまえは神でもなんでもない──ただの敗北者だ! 誰にも何にも抗えない、ただの負け犬なんだよ!」
「いやよそんなの……」
「嫌だろうとなんだろうとおまえは俺に負けた。それだけが事実だ」
そう言うと俺は、ヘスラの顔面を蹴った。力無く宙を舞うヘスラの体が地面に差し掛かると、今度は腹を殴った。それを何度か繰り返すと、ヘスラは気を失ったが、俺は頬を殴って叩き起こす。
「……今のは夢? 夢に決まっているわよ。あたしが……」
「いいや現実だ」
意識を取り戻したヘスラの太ももに剣を突き立てる。
「アァァ……」
そして太ももから剣を抜く。そのショックでまた、ヘスラは気絶。今度は腕を切って起こそうと剣を振り上げたその時、
「ルーカス!」
自分を呼ぶネルの声に手が止まった。振り返ると、そこにはイフリートとレン、そしてネルがいた。
「ルーカス、もう十分だろう……後は妾たちに任せよ。その女神には、地獄で一番重い罰を与えるつもりだ」
俺の憎悪の感情は、ネルの言葉で沈んでゆく。
「そうか……わかった。後は任せる」
俺は血を払い、剣を収める。そしてイフリートは気絶しているヘスラを担ぐ。
「ヘスラへの復讐は終えた……あと一人、ゼスを倒せば俺の復讐は遂げられる……」
俺は独り言を呟き、天界を見上げる。
トンッ……。
そんな俺の体に、ネルは抱きついてきてくれた。
「ルーカスが生きててよかった」
「心配……かけたな」
ああ……温かい。
「本当に女神を打ち倒すなんて、ルーカスはやっぱりすごい奴だな。……でも、無茶なことはもう……」
結構余裕だったんだけどな。手こずったが、結局かすり傷程度のダメージしか貰っていないし、魔力も余裕あるしな……。でも、
「心配してくれて……嬉しいよ」
胸の中にいるネルの頭を優しく撫でると、ネルは紫髪の頭を俺に擦り付けた。そうしてしばらく抱き合っていると、
「んんっ……あーえっと、そろそろいいっすかね?」
咳払いするレンを見て、俺は現状に向き直る。
「レンか。おまえも生きていたんだな」
「当然っすよ。……それで、皆さんはこれからどうするんすか?」
そう言われて俺は、辺りを見回す。そこには、瓦礫の山があるばかりで、町の原型など亡くなっていた。
「そうだな。まずはこの町を直す。それから俺たちは帰るよ」
そう言って俺は、唯一無事だった噴水の前に立つと、ヘスラとの戦闘を終えても余裕がある魔力をふんだんに使って、スキルを発動した。
「『岩石操作』、『岩石生成』、『形質変化』、『接合』」
俺は『岩石操作』で瓦礫を町の外に放り投げる。そして、『岩石生成』で建物のアタリを取り、形質変化、接合で、カラクの町を元通りの街並みへと作り上げた。
「これは……」
「凄すぎっすよルーカスさん……」
「さすがの我でも引くくらいの魔力量とスキルの精度だな……」
口々に感嘆を述べる三人。俺はそれを聞き流し、
「転移」
住民たちを噴水前に呼び戻した。
「ネル、イフリート。帰ろうか」
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