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【完結】かつて世界を救った勇者は地獄に追放された〜俺は俺を世界から追放した神々への復讐を決意する〜  作者: 早野冬哉
第一章

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30.VS女神ヘスラ

「なによ……」


 俺とヘスラが、一進一退の斬り合いをしていると、不意にヘスラが表情を強張らせる。そして周囲を『光爆』で吹き飛ばし、俺と距離を取った。


「どうした? あの二人の元へ送った魔王が倒されでもしたか?」


「うるさいわね! 人間ごときが(さえず)るんじゃないわよ!」


 白々しい口調でヘスラを挑発すると、ヘスラは歯軋りをして俺を睨みつける。もうヘスラの顔には、以前のように美しくお淑やかな印象を与える表情はなかった。


「『光弾』、『天雷』、『連弾』」


 不規則な軌道で迫る弾丸の雨をすり抜け、天雷は銅の柱で逸らす。


「どれだけ数を増やそうと、雷は銅柱を出せば全て逸れる……天下の女神様は学習能力が低いようだな?」


「うるさい! 『光盾』」


 ヘスラの前に展開される光の盾。だが、光を吸収するアイルドンを纏わせた略奪剣の前には意味をなさない。


「いい加減、そのパターンは見飽きたぞ」


「うるさいうるさいうるっっさい!」


 乱暴に振り下ろされる光の剣を略奪剣で打ち消し、突きを繰り出す。が、僅かにヘスラの横腹を掠っただけだった。


「光剣」


 ヘスラはすぐさま両手に一本ずつ光の剣を出して振り下ろす。その間、俺は背中に隠して炎熱火球を出現させる。


「ヘスラ、おまえの攻撃、だんだん単調になってきてるぞ」


 俺は半身になって光の剣をかわすと、隠していた炎熱火球がヘスラの金色の瞳に映り込んだ。


「なっ……光……」


 ヘスラは『光盾』の使用が間に合わず、炎熱火球をもろに受ける。咄嗟に顔を覆った腕は燃え、皮膚を焼いてゆく。


「ああっ……あたしの美しい肌がっ……」


 必死に火を消そうと腕を叩くヘスラに、俺は略奪剣を振るう。


 スカッ……。


 それを紙一重でかわしたヘスラは、消化を終えた自分の腕に、緑色の光をかける。すると、すぐさま焼けた皮膚は元通りの透き通る肌に戻った。


「き、今日のところはこのくらいにしておいてあげるわ! 大罪人であるあなたを見逃すのよ、器の大きいあたしに感謝することね!」


 どうやら手札を全て使い果たしたようで、虚勢を張って天界への門に向かって走り出すヘスラ。俺は門の目の前に体を滑り込ませて行く手を阻む。


「逃すわけがないだろう! 俺はおまえらを倒して、復讐するためだけに地獄から這い上がってきたんだ」


「チッ……邪魔しないでよ!」


 そう言って歩みを止めたヘスラは、魔力で己の体を包み込んでいく。


 この予備動作……転移する気だ。させるものかっ!


「氷槍」


 ヘスラの足元から氷柱が大量に出現し、思わずヘスラは飛び退く。すると、維持できなくなった魔力の塊は霧散した。


「これもダメなの? ならこれはどう? 『閃……』」


「蔦操作」


「『……光』」


 閃光が発動する直前、俺が肥大化させた蔦がヘスラの足を絡めとる。当然その蔦は、閃光に紛れて逃げようとしたヘスラを捕らえて離さない。


「あなたしつこいわよ!」


 キレ気味に叫ぶと、ヘスラは光の剣を出して蔦を切る。


「おまえこそ、逃げるのを諦めたらどうなんだ?」


「この……」


 噴水だけが残った広場で、噴水を背にヘスラに剣を向ける。すると突然、ヘスラの顔色が変わった。


「ふっ……やっぱり世界は、神々(あたしたち)に味方するようね」


 そう言った途端、ヘスラは俺に向かって突進……すると見せかけて、俺の脇を通り抜ける。


 はっ……門に入るつもりか!


「岩壁」


 俺は振り返るよりも先に天界への門の前に岩壁を出現させ、振り向く。だがヘスラは、最初から門になど向かっていなかった。本当の目的は、噴水の裏に隠れた子供だったのだ。


「なんでまだ……」


「さあね。理由なんて知らないけど、まだまだ世界はあたしに優しいようね」


 子供の首に腕を回し、光剣の刃を当てるヘスラ。もはや彼女の行動は女神のそれでは無く、ただのゴロツキと変わらなかった。


「ヒイッ……」


「……君はレンの弟か?!」


「あれっ……お兄さん、さっきの……」


「あらなに知り合い? ……余計に殺せないわねぇ」


 いやらしさを増したヘスラの声を無視して、俺はレンの弟に目を向ける。


 ごめん、俺は今から君を怖がらせるハッタリを言う。


 心の中でレンの弟に謝ると、俺は彼に冷たい声を投げる。


「悪いが、俺はそのクソ女神に復讐するために生きてきたんだ。たとえ君一人の命が失われようと、女神さえ倒せれば俺はそれでいいんだよ」


 俺はそう言うとすぐにヘスラに冷酷な目を向ける。


「な、なによ? ど、どどうせハッタリでしょう? 勇者であるあなたが……」


「俺が罪のない子供を傷つけるはずがないと、そう言いたいのか? ……俺から勇者を剥奪したのはおまえらだというのにか?」


「それは……」


 俺の赤い目に気圧され、一歩下がったヘスラを見て、俺は手のひらを突き出した。


 本当は鎌鼬(かまいたち)だが……。


「スキル付与、『風刃』」


 『風刃』と偽り、俺は略奪剣に『鎌鼬』を乗せて、略奪剣を構える。


「さらにスキル付与、『腐食』、『焼熱病』、『氷刀』、『毒生成』、『金属錬成』」


 多様なスキルを幾重にも重ねられた略奪剣の刀身は七色に輝き出す。


「ひっ……み、見なさいよ! 今あなたが剣を触ればこの子供は死ぬわよ!」


 レンの弟を盾のように持つヘスラ。俺はヘスラに侮蔑の視線を送り、剣を振るった。

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