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【完結】かつて世界を救った勇者は地獄に追放された〜俺は俺を世界から追放した神々への復讐を決意する〜  作者: 早野冬哉
第一章

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26.女神のしもべ

「さあ行きなさい!」


 ヘスラの声に、操られた人々が一斉に走り出す。


「蔦操作」


 俺は人々を蔦で絡めとり、動きを止めようとしたが……。


 ブチブチブチッ。


 ヘスラが力を与えているようで、人々は容易に蔦から抜け出した。そして、足の速い男が、ひと足先に俺の元に辿り着き、素早い動きで殴りかかってくる。


 トンッ。


 俺はその拳をかわすと、男の首を峰打ち。だが男は平然と立ち上がった。


 やはり操られた人には気絶という概念が通用しないのか……。


 そしてすぐに大勢の操られた人々が俺になだれ込んできた。


「このスキルだけは使いたくなかったが、やるしかないな!」


 俺は後ろに下がって操られた人々全員を視界に入れる。その瞬間、


「あたしもいるのよ!」


 人々を巻き込みながら、天雷が俺に向かってきた。そして巻き込まれた人々は、口々に悲鳴を上げ、転げ回っていた。


 許せない……。


「金属錬成」


 銅柱を生成し、雷を逸らす。そして、次弾の雷が来る前に、光属性スキルを発動した。


「転移」


 するとその瞬間、ヘスラに操られた人々は白く光り姿を消した。


 光属性スキルは神々の恩恵のようなもの……復讐相手の力みたいで使いたくなかったんだがな。


「あなたなんで光属性のスキルを使えるのよ! ……ああ、その忌々しい剣の力でミカエルから奪ったのね」


「あの人たちはおまえが捕捉できないであろう場所に転移させた。もう操ることはできないぞ」


「チィ……、よくもあたしのおもちゃを……」


 歯軋りして眉間に皺を寄せたヘスラは、地面を蹴り割った。だがすぐに落ち着き、傲慢な態度を取り戻す。


「まあいいわ。あたしのとっておきのおもちゃ、見せてあげる。『収納解放』」


 亜空間に物を出し入れするスキルで、ヘスラが取り出した物は、人のような外見をしていた。


「人? ……いや魔族か」


「ええそうよ。……でもね、ただの魔族じゃないの。この二人は世界の記憶から消し去られた歴代の魔王たちの死体よ」


「魔王の……死体?」


「そう、あたしが操る最高の傀儡、最高のおもちゃよ」


 二人の魔王だと?! 以前は魔王一人相手でも相打ちだったというのに……。いや落ち着け。ヘスラに操られている分、元来の魔王よりは弱体化しているはずだ。それに、今の俺はあの時よりもずっと強い!


 現れた魔王たちは色褪せており、ところどころツギハギした跡がある。どちらも外見は似ていて、僅かに残った髪色は、それぞれ赤と黄色で、それぞれが持つ杖に嵌め込まれた水晶の色も同じだった。


「もはやおまえ、女神ではなくただの呪術師だな」


 俺の挑発的な笑みに顔を歪めると、ヘスラは二人の魔王を動かした。


「炎熱火球」


「岩壁」


 赤の魔王が幾つも炎の球を生み出し、黄の魔王が岩壁で防御を固める。


 あれ……この程度か? 地獄の番人たちと大して実力が変わらないのか?


 岩壁の大きさや厚さはマゾエスが出したものとさして変わらず、炎熱火球にいたっては炎の色は青ではなく赤かった。


 ヒュンッ!


 『風刃』を乗せて振るった剣が、炎熱火球と岩壁を切り裂く。


「その程度のしもべで俺を倒せるとでも思っているのか?」


「いいえ。そこまであなたを低く見積もるつもりはないわ」


 そう言って余裕な笑みを浮かべたヘスラは、魔王二人の肩に手を置き、魔力を流す。


「『炎王の加護』、『岩王の加護』、『女神の加護』。女神ヘスラの名の元に、汝らに至高の加護を与えん」


 その瞬間、二人の魔王からはそれぞれ火と土属性の適正が高まる気配がした。そしてその後ろでヘスラが勝ち誇る。


「喜びなさい。あなたはあたしたち全員で痛ぶってあげるわ。このあたしに楯突いたこと、激痛の中で後悔して死になさい!」


「炎熱火球」


「岩弾」


「光槍」


 前方からは炎と岩。上空からは光の槍が降り注ぐ。その全てが掠れば終わりの必殺技だ。


「『炎壁』、『氷槍』。スキル付与『腐食』」


 先ほどとは比べ物にならない威力の炎熱火球だが、『青炎』のスキルを持つ俺の炎の方が強い。そして『腐食』を付与した氷の槍は、飛んでくる岩を全て溶かす。


「金属錬成」


 光を吸収する金属──アイルドンの盾を錬成し、光の槍を受けきる。


「あなたしぶといわねぇ……」


 キレ気味に言うヘスラに、俺はアイルドン製の盾を投げる。


「あなたたち!」


「岩壁」


 ヘスラの指示で、黄の魔王が、軽く二階建ての建物を超える高さの岩壁を出現させ、盾を弾く。


 よし、狙い通りだ。これであいつらからは俺が見えない。


「『炎熱火球』『連弾』」


 回転をかけた青い火球は、岩壁の左右からヘスラたちを襲う。そして俺は、『炎翼』を広げ、岩壁を飛び越え……。


「岩石生成」


「ぐっ……」


 突如俺を挟み込むように現れた二つの大岩。俺は瞬時に一方を切り刻んだが、もう一方は剣で受ける羽目になった。


「あなたこそ、あたしをなめすぎよ」


 大岩に弾き飛ばされる直前、僅かに見えたヘスラは『光盾』で炎を防いでいた。


「確かに舐めすぎていた。だが、それでも俺の勝利は揺るがないぞ!」


 無傷で地面に着地した俺は、岩壁越しにヘスラに叫ぶと、剣を握り直した。


 やはり先に、魔王二人をどうにかしなければ……。

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