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【完結】かつて世界を救った勇者は地獄に追放された〜俺は俺を世界から追放した神々への復讐を決意する〜  作者: 早野冬哉
第一章

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25.女神ヘスラの固有スキル

「天雷」


 ドゴドゴオォォン!


 一息に発動された無数の雷が地面を砕く。隙間のないヘスラの攻撃を見て、俺は体の力を抜いた。


「乱風」


 足に風を纏い、雷の雨へと飛び込む。すると、『乱風』の効果で無意識的に雷をかわしてヘスラに迫る。


「光盾」


「氷槍」


 ガキイィィィン!


 光の盾に防がれ砕ける氷柱。そこにヘスラの視線を誘導した俺は、ヘスラの死角から飛びかかる。


 完全に意識外からの攻撃……いけるっ!


「まさか、この程度であたしを倒せるとでも思った? 愚かねぇ……」


 振り下ろした剣は、ヘスラの光剣に受け止められた。余裕の表情を浮かべるヘスラは、俺の剣を流すと、光剣で連撃を繰り出す。その異様な速度と鋭さに押され、俺は一度大きく下がった。


 やはり強いが、それでも勝てないほどじゃない……。


「勇者風情が、このあたしに楯突いて許されるとでも思っているの?」


 静かな、されど激情がこもった美声で俺を嘲笑う女神ヘスラに、俺も負けじと嘲笑を返す。


「この戦いに負けるおまえに、許される必要があるのか?」


 確かに負ける気はしないが、勝ち筋も見えない……。あの予想より遥かに硬い光属性の盾をどうにかしなければ、決定的な攻撃はできない。


 互いに攻めあぐねていると、不意に空から声が降ってきた。


「ルーカス。人間どもは皆町から避難したぞ! 存分に戦うのだ」


 ネルの声だ。ネルはイフリートの背に乗り、遥か上空から避難完了の知らせを届けてくれた。


「なあ女神、せっかくだ。広く使おう」


 そう言うと同時に、俺は『突風』を発動し、路地裏に走った。


「超音波」


 これで常にヘスラの位置を把握しながら逃げて時間を稼げる。その間に、あの盾の攻略法を考える。


「はぁっ? あれだけ威勢のいいことを言っておいて逃げるの? 結局あなたも、威勢がいいだけのザコね!」


 噴水前に残されたヘスラは「天翼」で空高く飛び上がり、街を見下ろす。そして、どこからか現れた雷雲を掴んで唱える。


「『天雷』『連弾』」


 自然の力を使った『天雷』の威力は、先程とは比べ物にならず、一撃で五、六軒の家々を破壊する。そしてそれが、町全体に降り注ぐ。


「乱風」


 複雑な高速機動を可能にする『乱風』、それを持ってしても、雷の攻撃範囲と数の多さが回避を許さない。一瞬にして地上に届く雷が俺を捉えるその刹那、


「金属錬成」


 俺は人間大の銅の柱を空に生み出した。すると当然、雷は銅柱に吸い寄せられ、轟音とともに消え去った。


 今のは少し危なかったな……マゾエスから『金属錬成』を貰っていなければ防げなかった。


 俺は銅柱の横で立ち止まり、空高くに陣取るヘスラを見上げた。その時、ある考えが浮かんできた。


 そうだ、確か金属の中には光を吸収するものもある。アイルドンという希少な金属は光を吸収したはず。金属錬成でスキルの表面に薄いアイルドンの膜を張れば、光の盾は消失するのではないか? ……試してみる価値はあるな。


 瓦礫の山と化した町に立つ俺は、再び『炎翼』を発動し、羽ばたいた。そして、加速しながら一直線にヘスラの元へと向かう。


「バカね! このあたしに対して一直線にくるなんて……そんなに雷に打たれたいのなら、そうしてあげる」


 ヘスラが腕を振り下ろすと、またしても大量の雷が──今度は俺に向かって降り注ぐ。


「金属錬成」


 それを出現させた銅の柱に吸わせ、俺はさらに上昇した。


「チッ……小賢しい真似を……」


 構わず雷を撃ち続ける女神。俺は彼女とまだ距離がある空中で止まった。


「なにをして……」


「スキル付与『風刃』『金属錬成』」


 略奪剣に二つのスキルを纏わせ、振り抜く。


 ブオォォッ!


 重い風切り音をあげて空を飛ぶ刃は、鉛色の光沢を放ちヘスラに迫る。


「こんなもの……『光盾』」


 そんな技は見る価値もないとでもいうように、見下した目で光の盾を展開するヘスラ。だがその顔は、次の瞬間歪むこととなる。


 シュンッ……スパッ……。


 刃が光の盾に触れた瞬間光の盾は消滅し、刃は正確にヘスラの頬を掠めた。


 成功だ! 思った通りアイルドンを纏った攻撃ならば光の盾を無効化できる。


 勝ち誇った笑みをヘスラに向けた俺は、ヘスラの頬から血が流れていることに気づいた。


「よくも……人間風情がこのあたしの顔に傷をつけたわね!」


 大気が悲鳴をあげる。もう取り繕うことはなく、ただ激情のままに顔を歪めたヘスラは、復讐しか考えられていなかった時の俺と同じ目をして傷を治す。そして、


「待ってなさい。すぐ戻ってきてあげるから」


 そう言った次の瞬間、視界からヘスラが消えた。それから一瞬後に、地上にヘスラの陰が見える。だが地上にいたのは女神一人ではなく、避難したはずの人々も引き連れていた。


「あたしの固有スキルはね、生物の傀儡化(くぐつか)なの。勇者のあなたは無垢の民を攻撃できないでしょう?」


 地上に降りた俺に、嘲るような笑みを浮かべるヘスラ。彼女のいう通り人々は皆操られているようで、白目を剥き、低い唸り声を上げていた。


 これがヘスラの固有スキル……厄介極まりないな。確かに俺は民間人を手にかけることはできない。


 ゆっくりと迫ってくる人々を見て、俺は大きくため息を吐いた。


 あれを使うしかないのか。できれば使いたくなかったんだがな……。

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