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2.スキル集め、中間目標

 ヒュン! スパパッ!


「スキル『発火』を略奪」


 道中見かけた炎人の群れ。それを一呼吸で切り伏せる。己で磨き上げた剣技だけは、神も奪うことができなかったようだ。


「次だ」


 もっと強力なスキルを持ってるやつは……。


 背後を振り向いた途端、目の前に飛んできたのは数発の火球。


 それらを全て両断し、俺は敵に対峙する。


「燃え盛る体にトカゲのような姿……サラマンダーか」


 三匹のサラマンダーが口に魔力を集め始めた瞬間、俺は地面を蹴り砕いて間合いを潰す。


 ボゥッ!


 次の瞬間、サラマンダーたちは炎の壁を展開した。俺はなんとか直前で止まり直撃を免れたが、炎壁を盾にサラマンダーたちは口に魔力を集中させ……。


「発火」


 ……コトン。


 発火を発動中、使用者は副次的効果として炎に耐性がつくのだ。その特性を利用し、悠々と炎壁を突破した俺はサラマンダーの首をはねた。


「スキル『火球』を略奪」

「スキル『炎壁』を略奪」


 スキル二つ持ちか、おいし……。


「危なっ!」


 突然姿を現した火鼠が俺の首に噛みついてきたが、すんでのところでかわす。そして俺の首があった場所に剣を添えると、火鼠は自爆して真っ二つになった。


「スキル『隠密』を略奪」

「スキル『焼熱病』を略奪」


 隠密はいいな。使い勝手がいい。だが、焼熱病は初めて聞くスキルだな……どう言う効果なんだ?


 俺がスキルの効果を知りたいと思った瞬間、略奪剣から思念が流れ込んできた。


「スキル『焼熱病』──当スキルを付与されたものは体内から燃え上がり、内臓を焼かれて絶命する」


 エグいな。……だがこのスキルをあの神どもに付与すれば、あいつらが苦しむ姿が見られるのか。


 火鼠から得たスキルに満足した俺は、次の獲物を見つけようと辺りを見回した。……その時、


「ホォォォオォーー!」


 クジラのような鳴き声とともに、足元から大質量の生物がとびだした。地面を裂いて現れるそれをギリギリで回避。


 見上げると、竜のような硬い鱗を纏った、貴族の屋敷ほどありそうな巨体をもつクジラが空を飛んでいた。


「でかい……こいつは確か、炎海魚。地獄にもいるのか」


 人間界では、この魔獣は災害指定されており、人間では絶対に倒せないと言われていた。


「だが、このくらい倒せなければ神になど到底勝てない!」


 剣を握り直し、砂岩色の鱗を纏った炎海魚に殺意を向けた。その瞬間、


「キイィィィイイィ!」


 鳴き声とともに、一面の紅い大地が全て、青白い炎の海と化す。


「ぐっ……ああぁあっ!」


 俺の体は青炎に包まれて焼かれ、黒焦げになった。


 炎海魚、次遭遇したら必ず倒す! 遭遇しなくても見つけ出して倒す!


 俺は神との実力差をはかる指標に、炎海魚を据え、一瞬意識を失った。


 そうして炎海魚が去ったあと、青炎が鎮火した頃に俺は体を起こす。


「くそっ! あんな天使の加護に助けられた……」


 天使ミカエルが、俺が永遠に苦しみ続けられるようにと、悪意のもと俺に与えた不死の加護。その効果で、炎に肉を焼かれる苦痛を味わったあとに俺は蘇生された。


 けれど死の苦痛など、今の俺にはどうでもいいと思える。それよりも、あのクソ天使の力に助けられたことへの悔しさの方が、俺の精神を抉った。


「もっと……もっと強力なスキルを探さなければ」


 まだ少し朦朧もうろうとする意識の中、俺は再び真紅の荒野を歩き始めた。


「ん? なんだ……あれは?」


 しばらく歩き続けると、視界の端に洞穴らしきものが見えてきた。それ以外は特に何もなく、永遠と同じ景色の荒野が続いている。


 あそこを拠点にするか。一刻も早く神どもに復讐したいが、無理をしすぎた。もう、体がほとんど動かない……。


 洞穴に入ると、出入り口は一箇所しかなく身を守りやすい構造だとわかった。出入り口に炎壁のスキルで炎の壁を作ると、


「ああ、もう……無理だ」


 俺は疲労と魔力不足から来る強烈な睡魔に襲われ、倒れるようにして眠りについた。


***


「僕は勇者アキト。神々の使徒として魔王と戦い、その果てに神自らの手によって地獄に落とされた者だ」


 祠の奥には、先代勇者のものと思しき遺体と日記があった。どうやら、先代の魔王を倒した勇者さえも、あの神々は地獄に落としたらしい。


「ふざけてる。……あいつら、魔王なんかよりもよっぽどタチが悪い」


 神々への憤りに拳を握りしめると、寝ぼけた頭が冴えてくる。


「ふぅっ。……落ち着け俺。怒りはあくまで原動力、頭を冷やして冷静に行こう」


 心を沈めて日記の続きに目を通すと、地獄についていろいろな情報が書き連ねられていた。


「……地獄は五つのエリアに分かれている。そしてそれぞれのエリアには、番人と呼ばれる強力な魔獣がおり、その魔獣によってエリア間の行き来ができなくなっているようだ……」


「番人……か」


 おそらく強力なスキルも持っているだろうが、今の俺ではおそらく勝てない。それに、番人よりもまず、さっきの炎海魚も倒したい。


 もっとスキルを集めなければ……。


 日記を閉じ、スキルを奪いに外に出ようとした時、先代勇者の手に袋が握られていることに気付いた。


「失礼する」


 俺は先代勇者の遺体に手を合わせてから袋の中身を確認する。中にはひと月ほど持ちそうな干し肉が入っていた。俺はふと、地獄に来てから食料を一度も見ていないことに気付く。


「食料、感謝します。……あなたの分まで俺が、必ずあの醜悪な神々を苦しめて見せます!」


 頭を下げ、もう一度先代に手を合わせる。そうして俺は、干し肉を一つ口に入れてから洞穴の外に出た。

「面白かった!」

「続きが気になる!」


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