12.ピクシーからの頼みごと
「アレ? なんでニンゲンがいるの?」
「ホントだなんで〜?」
木の陰から村を見つめる俺に気づいたピクシーたちが群がってくる。
そういえばピクシーは人間界にも存在するが、彼らは自らが住まう森に精通すると聞くな……。
「俺はルーカス。君たち、ドライアドの居場所に心当たりは……」
「そうだアレをお願いしてみよう」
「そうしよそうしよう!」
ピクシーたちの無邪気な勢いに押されて、俺は彼らの置かれる状況を聞くことになった。
「あのねあのね……ラクシュ様が番人になってからね……」
ヒラヒラと宙を舞いながら、ピクシーたちは順番に言葉を繋いでいく。
「どんどんどんどん、森が暗くなっていったの」
「それでねそれでね、もうここしかお日様が指す場所が残ってなくて……」
風が止むように、ピクシーたちの動きが止まる。
「ここももうすぐ真っ暗になっちゃいそうでね」
「わたしたち、住む場所無くなっちゃいそう……」
シュンと落ち込むピクシーたちは、言外にこの場所を侵食してくる暗い森から守って欲しいと告げてくる。
「もうねもうね、今日が終わる時にはこの村全部、真っ暗になっちゃう」
今晩……か。それだとおそらく、ラクシュと話を付けるには時間が足りない。……それに、ドライアドはおそらく……。
俺は村の中心にある太い木を見やり、胸を張る。
「うん、事情はわかった。俺でよければ協力させてくれ。俺も一目でこの自然と調和した村が気に入ったんだ。だから俺もここを守りたい!」
***
「さすがは勇者ルーカス様! 困りごとあらば、どんな時でも放って置けない。なんという慈愛……」
ひとしきりルーカスの行いに感銘を受け終えると、ネルは紫の瞳を細める。
「だが、ラクシュが妾の許可もなく闇森を侵食させていたとは……緑縛地獄は地獄に住まうものにとって憩いの場……これは、看過できぬな」
ネルは、おい、と秘書を呼びつける。するとすぐに扉が開き、秘書の悪魔がこうべを垂れる。
「イフリート、グリーシス、隷虐地獄の番人マゾエス、それに虚黒地獄の番人クーダマリーに伝令、緊急会議を開くと伝えよ。議題はラクシュの処罰についてだ」
ネルは足を組みかえ、緑縛地獄の巨木を見据える。そうしてかつての陽の光に照らされた緑豊かな緑縛地獄を夢想した。
「まずはラクシュ以外の番人たちから承諾を得る。覚悟しておけよラクシュ」
***
ピクシーたちの話によると、森の手前にあった畑は、ネルの指示によってラクシュが木を根からまるごと引き抜くことで作られたらしい。
「なら俺も、それに倣うとしよう」
そう言ってピクシーの隠れ里を取り囲む木の一本に触れる。
「蔦操作」
俺の手から伸びる蔦が、木の根に沿って地面に潜る。そして……、
「スキル付与『腐食』」
木の根に絡めた蔦から『腐食』を発動し、根から木を腐敗させる。程なくして、目の前の木は黒く脆くなり倒れた。
「すごいすごい」
「土の下に木の根がまったく残ってないよ!」
「いやいや大したことではないよ。……他の木も同様にして構わないか?」
「もちろんもちろん、いいよいいよー」
そうして俺は、隠れ里をぐるりと周り、一番手前に生えていた木々を腐らせた。
「でもでも、すぐにまた木が生えてくるよ」
「ああわかっている。『毒生成』」
万能スキル『毒生成』。それを使って俺が周囲にばら撒いたのは除草剤ならぬ除木剤。
念には念を……だな。
「『氷槍』、『連弾』」
無数の氷柱が、隠れ里を囲うように地中に現れる。
「スキル付与『腐食』」
これであの厄介な木が侵食しようとしても、氷槍にふれて腐敗するというわけだ。
「ルーカスすごーい! 木が生えてくる気配がまったくないよすごいすごい」
「これでボクらの里は安全だぁ。ありがとうルーカスありがとう」
はしゃぐピクシーたちを見て、俺はラクシュのいる巨木に目を向ける。
それにしても、あいつもおそらくはピクシー……なぜ同族をこうも滅ぼそうとするんだ!
俺が真紅の瞳に怒りを滲ませて、巨木を睨みつけた。……その時だった。
「グルルルル……」
「うわぁ! 精霊喰いがでたぁ!」
森の暗闇から、突如として黒毛の狼のような魔獣が現れた。そしてその頭には、蜘蛛のように真っ赤な目が八つ付いていた。
「まだまだくるよぉー……」
ピクシーたちのいうように、精霊を主食とする黒狼は、茂みから次々と顔を覗かせた。俺は彼らを威嚇するように剣を抜く。
「ルーカスルーカス気をつけて! あいつらみんな魔力もたべるから、スキル攻撃も食べちゃうの」
「わかった。では、剣だけで戦おう」
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