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【完結】かつて世界を救った勇者は地獄に追放された〜俺は俺を世界から追放した神々への復讐を決意する〜  作者: 早野冬哉
第一章

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10.次の番人の元へ

 闘技場の入り口に向かうと、イフリートとハリスが肩を組んで笑い合っていた。


「な、言ったであろう。ルーカスは強いと」


「そうだなまったくだ! まさかあの兄ちゃんがこれほどまでの実力者だったなんてな」


 すっかり意気投合した二人に手を振ると、ハリスが駆け寄ってくる。


「兄ちゃんすげぇな! まさかあの番人様に勝っちまうとはよ……オレぁ夢でも見てるんじゃないかと思ったぜ」


「夢ではなかったであろう。なんせ我が貴様の頬を叩いてやったのだから」


 よく見ると、ハリスの右頬には紅葉がついていた。


「イフリート……」


 彼の名を呼び白い目を向けると、ハリスが急に飛び退いた。


「イ、イフリート様?!」


「ん? ああそう言えば名乗っておらんかったな。我はイフリート。別に今更敬語なんぞ使わんでよいぞ」


「あ……ああ、じゃあそうさせてもらうわ。オレぁハリスだ。よろしくなイフリート」


 イフリートと握手をしたハリスは、媚びるように手揉みを始め、俺に囁く。


「なあ兄ちゃん。その強さ、ヘイルムの町のために使う気はねぇか? 今なら町を守れて金も稼げるいい話が……」


「いえ結構です。俺はあのむかつく神々に地獄を味わせたい!」


 食い気味に語った俺の目標に、ハリスは一瞬だけキョトンとしたが、


「そうか、兄ちゃんなら、いつか本当に倒せるかもしれないな!」


 そう言って俺の肩を叩いた。


「ルーカス。疲弊しているところ悪いが、ネル様がお呼びだ」


「ああわかった。……ではまた、ハリスさん」


 俺はハリスに手を振ると、イフリートと一緒にヘイルム城へと向かった。


***


「ルーカスよ、其方の次の相手が決まったぞ」


 謁見の間に、ネルの声が響く。


「本当ですか! ありがとうございますネル様」


「してネル様。ルーカスの次の相手とは、どの番人でしょうか?」


 イフリートの問いに、ネルの表情が渋くなる。そして、ネルの反応を見たイフリートは次の相手が誰か察したようだった。


「まさか……」


 なんだ? ……もしかして次の相手、面倒くさい性格してるとかか?


「あー……其方の次の相手は緑縛地獄の番人ラクシュ。悪いが今回、其方のほうからあやつの元へ行ってもらう」


「それはどういう……」


「なんでも、あやつは己が統括する緑縛地獄で其方と勝負したいらしい」


「はぁ……」


 さっきの二人の反応といい、自分が有利な場所で戦うことを望むあたり、もしかしてラクシュという番人は小心者なのか? ……まあ、関係ないか。


「わかりました。いつ頃に向かえばよろしいですか?」


「明後日の朝、ヘイルムを出れば間に合う。……イフリート、おまえが運んでやれ」


「了解しました!」


 そういうとすぐ、イフリートは俺に親指をあげてみせた。


***


「えっ? あんたもうここを出ていくのかい」


「兄ちゃん、もしかしてまた番人様に挑む気か?」


 宿屋の食堂で、俺は女将さんとハリスに旅に出ることを話した。


「ああ。それで聞きたいことがあるのだが……緑縛地獄とはどんなところだ?」


「緑縛地獄? ああそこなら前に一度、穀物の買取交渉に行ったことがあるよ。前にも言ったけど、あそこは地獄で唯一日光と同じような光が差すんだよ。だからそこでだけは植物が育つのさ」


「でもよぉ、あそこの森おっかねぇよなぁ。人喰い植物が至る所に生えてるしよぉ……おまけに木の葉が邪魔して地面まで光が届かねえんだぜ。ろくに物も見えねぇよ」


「そうか……」


 まあ光は火属性スキルでどうにかできそうだし、人喰い植物にさえ気をつければなんとかなりそうだ。


 食事を終えた俺は立ち上がり、二人を見た。


「では、また会おう」


***


 ──遥か上空。イフリートの背に乗り、俺は緑縛地獄を目指していた。


「なあイフリート。君もネル様もラクシュという名前に渋い顔をしていたが、緑縛地獄の番人とはどういった者なんだ?」


「あ……ああそうだな。会えばすぐにわかるだろう。……見よルーカス。緑縛地獄が見えてきたぞ」


 イフリートの声と同時に、目が眩む。


 これは……日差しだ。本当に地獄に日差しが差すのか。


 久々に浴びる陽の光を堪能していると、遠くに森が見え始めた。


「ルーカス。しっかり掴まれ、降りるぞ」


 そう言った途端、イフリートは羽ばたくのをやめ、森の手前に向かって急降下した。


 ズシィィイィィン!


 地鳴りとともに地面に降り立つイフリート。その大きな背中から飛び降りた瞬間、


「キミがルーカスだねっ? いらっしゃ〜い!」


 目の前に現れたのは、手のひらサイズ……よりは幾分か大きい男の子の精霊だった。


「君は……誰かな?」


 緑の髪を後ろで三つ編みにした少年は、クルクルと俺の周りを飛び回る。


「ボク? ボクはねぇ、ラクシュって言うんだよ。 何を隠そうボクこそが、ここ緑縛地獄の番人なのさっ!」


 ノリノリでピースして、無邪気に笑うラクシュを見て、俺はネルやイフリートの態度に納得がいった。


 こいつ、仕草や振る舞いが昔近所に住んでたイタズラっ子にそっくりだ。


 横に目をやると、イフリートは顔を押さえて頭を振っている。


 となると、勝負って絶対戦闘のことじゃないな……。俺はいったい、これから何をやらされるのだろうか?

「面白かった!」

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