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ワーキングホリデーの記憶  作者: 快速5号
第一章 ワーキングホリデー
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第七話 新たな住処

最初にオーストラリアの土を踏んだのは、7月末のシドニー。

季節は真冬だった。


当たり前の話だが、南半球のオーストラリアでは、日本と季節が正反対。


日本でいえば、梅雨が明け、セミが鳴き始める夏の盛り。

けれど、シドニーの空気は冷たく、朝晩の寒さに身体が驚いていた。


でも、あの時、空港を出てすぐに肌が感じたあの“冬の空気”は、今も忘れていない。


それとは対照的に、ケアンズで感じた空気は、むせ返るような湿気と、肌に張りつく熱気だった。


降り立った瞬間、まるで空気に抱きしめられたような、厚みのある風が体を包み込んだ。


今でもふとした季節の風に触れるたび、思い出すことがある。


「これはあの時の、ケアンズの風に似ているな」と。


“肌の記憶”は、旅の記憶よりも長く残るのかもしれない。


ケアンズとは、そんなふうに感じさせる場所だった。


**



ケアンズにも、シドニーにあったような日本人向けの情報施設があった。


滞在初日の午後、私はそこに立ち寄り、掲示板の「住人募集」から2軒の物件をピックアップした。


立地と部屋代が魅力的に映ったためだ。


まず一軒目に電話を掛けると、

「ごめんなさい、もう決まってしまいました」とのこと。


まあ、そううまくはいかないか――と、少しだけ肩を落としながら、二軒目に電話をかける。


電話口に出たのは、落ち着いた声の女性だった。


「まだ空いてますよ」


その返事に少しホッとしながら、話を聞いてみると、

場所はケアンズ市内でも目印になっているキャプテンクック像のすぐ近くとのこと。


すぐに訪ねてみると、そこは小ぢんまりとした一軒家で、

3部屋のうち2部屋には、すでに日本人女性が2人暮らしているという。


「もともと男女で住んでたんです。ちょうど男性の住人が帰国して空いたところなので、気にせずどうぞ」


そう言って迎え入れてくれた彼女たちの気さくな雰囲気に、私は心を決めた。


新しい拠点が決まった——ケアンズでの暮らしが、ここから始まる。





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