表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『異世界で行列の出来る法律相談始めました〜DV裁判中に刺されて死んだ俺、目覚めたら魔法も剣もない世界で六法全書が最強だった件〜』  作者: カトラス


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/65

【第63話】 『スキルに同意したら一生無料!?──スキル発動型詐欺の罠』

 朝から気が重かった。


 なぜなら、依頼人が開口一番こう言ったからだ。


「……ええと、スキルに“うん”って答えたら、家具がタダでもらえるって言われまして」


 エミリアが顔を伏せてプルプル震えている。笑いをこらえているのか、怒っているのかは判断不能だ。


「まさかと思いますが、その“スキル”、発動型詐欺ですね?」


「たぶん……はい。『感謝の契約グレース・コンセント』っていうスキルで……『承諾した瞬間に全財産が引き落とされる』って……」


 俺はそっと頭を抱えた。


 スキル名がもう胡散臭い。“感謝”とか“承諾”とか、それっぽい言葉を並べてるくせに、やってることは完全に合法ギリギリ詐欺じゃないか。


「高野先生、このスキル……条文上は“同意”扱いになるんです」


「なんで!?」


「“本人の声帯による発話”と“スキル発動の魔導式”が合致したことで、“意志の一致”と見なされたと……」


 スラーディアが補足しながら登場する。


「でもね~、このスキル、被害届がめっちゃ多いからね~! わたし、嫌いだよ、こういうの~!」


 俺もだよ!


 しかも今回は、スキル詐欺師が法廷に堂々と出廷してきた。


「やあ、みなさん。契約とは信頼と感謝の証。誤解があったなら、誠意をもって話し合いましょう」


 薄笑いを浮かべる男。その胸元には《感謝の契約》の紋章がきらりと光る。


「……この野郎、言葉だけは立派にしやがって」


 俺は六法全書・改を開き、魔導契約法の条文をめくりながら、あえて意地の悪い質問をぶつけた。


「“感謝”って具体的にどんな形で表現されましたか?」


「もちろん、満面の笑みと、“はい、ありがとう”という言葉です」


「その時、相手の口座から金が引き落とされたのは?」


「その0.2秒後です」


「悪魔か!」


 スラーディアがぼそりと呟く。


「これは“感謝”じゃなくて“強奪”じゃないの~?」


「異議あり! これはあくまで“承諾に基づく契約”です!」


 詐欺師がスキルを発動しようとした瞬間、横から氷室玲奈が現れた。


「……そのスキル、無効化申請します。スキル効力に偽装要素あり。《法鏡照臨》、発動」


 空中に光の文字が浮かび上がる。


 ――“対象の意志確認に不備あり。スキル発動時、意識誘導の魔導干渉を検出”――


 氷室が冷たい声で告げた。


「“はい”と言ったのは、意思表示ではなく、ただの挨拶よ」


「うわ、かっけぇ……」


 俺は思わず漏らした。


「……やっぱあの女、天敵だわ」


 こうして《感謝の契約》スキルは詐欺スキルと認定され、詐欺師は財産全額返還と損害賠償の支払い命令が下された。


 法廷の外。


 依頼人が深々と頭を下げてくる。


「先生、ありがとうございました! 次からは“ありがとう”にも気をつけます!」


「うん、それがいい。俺も気をつける……胃がもたれるわ……」



 冒険者ギルドの裏手、人気のない酒場の片隅。

 薄暗い照明に照らされた木製のテーブルを囲んで、くたびれた男たちが集まっていた。


 ──俺、高野誠一。異世界転生弁護士。


 今日は珍しく、裁判じゃなく“聞き取り”という名目で酒場に来ている。いや、正確には、聞いてるだけで胃が痛くなってる。


「……また俺だけ“無料期間”が終わって、スキル消えたんだよ!」


 そう叫んだのは、目の前に座る戦士ロルド。筋肉が服からはみ出してるくせに、今は大剣を抱えて落ち込んでいた。


「スキル【超腕力++】、お試し契約だったらしい。気づいたら剣が持てなくなってて……あのとき“利用規約”なんて誰も読まねぇって……」


 その横で、元シーフのバルゴが手を挙げる。


「俺なんかさ、契約したスキル《瞬間移動:地方限定》が“特産品市場に飛ぶ”って奴だったんだよ。戦場からいきなりサツマイモ畑にワープしてみ? 味方に殴られたぞ」


「そりゃそうだ……」


 俺は思わずうなった。

 目の前には、スキル詐欺に引っかかった男たちがズラリ。勝手に名乗ってるらしいが──


《スキル詐欺被害者の会》


 ……ああ、胃薬持ってくりゃよかった。


「しかし、あんたが第63話でやってくれたのは、スカッとしたぜ」


 ロルドがビール片手に笑う。


「スキル詐欺会社の代表に、バチッとこう言ってたろ?」


 彼は立ち上がり、酔った演技で両手を広げて叫んだ。


『“契約書”とは、“同意”の上で交わされるものであって、“スキルが勝手に目の前に表示されたからポチった”は、同意とは言わねぇんだよ!』


「……って! 酒場がざわめいて、ネズミまで拍手してたもんな!」


「お前、それ何度目の再現だよ……」


 俺は額に手を当てながら、こっそりエミリアに“今すぐ回収して”とアイコンタクトを送る。


 が──それより早く、カウンターの影からぴょこっと現れたのは、受付妖精のミニエルだった。


「ご相談なら、高野法律事務所へどうぞ~! ただいまキャンペーン中で~、被害額がスライムゼリー以下なら、初回相談無料で~す♪」


「スライムゼリー!? あんなの1コインだぞ!?」


「ってか、俺の食費以下なんだけど!」


 酒場の空気が一瞬で“突っ込み大会”に変わる。


 俺は椅子を引いて立ち上がった。


「……あのな。相談してくれるのはありがたいけど、いいか、ちゃんと“契約”読むクセ、つけようぜ?」


「はぁーい……」


 しょんぼりとうなだれる男たち。

 だが──


「……あっ、またスキル表示来た!」


「再契約しますか? って出てる! 押していい?」


「お前ら懲りてねぇな!!」


 俺の怒号が酒場に響いた。


 こうして今日も、《スキル詐欺被害者の会》は賑やかに活動中だ。進歩は……まあ、期待しないでおこう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ