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第5話 魔王城と魔王

 「ほう……人族の勇者と、サキュバスの小娘か?面白い組み合わせだな。」

 

 魔王城内部、謁見の間。

 豪奢に彩られた空間は王の威厳を強調し、おどろおどろしいオブジェクトなどない、厳粛な空気を醸し出している。

 

 魔王は体長が高く、人族の裕に5倍はあるだろう。

 他の魔族がほぼ人族と変わらない身長であったことから、魔王の存在は特殊なものなのだろうか。

 魔王の体長に合わせたのか、天井は高く、玉座の幅も高さも人族のものより遥かに大きいものであろう。

 

 それにしても、眠らせてきた門番然り、城内の警備すらもままなっていない道中……ほぼ障害無く魔王の許へと辿り着いた。

 

 「魔王!貴様はこの王都の惨状を何と見るかっ!?道端で倒れる人々の姿を見て何を思う!?」

 

 俺は魔王に対し、この王城に辿り着くまでに見た魔族の人々の惨状を問うた。

 

 「ふむ……ならば我からも問おう。我のこの体躯、なんと見るかね?」

 

 魔王の体長は人族の5倍程度、贅沢に太っているわけでもなく程よい筋肉をしていそうな体躯と思われる。

 しかし、魔王の問いの真意はなんだ?

 

 「答えられぬか?ならば良い、教えてやろう。」

 

 魔王はゆっくりと玉座から立ち上がり、その巨躯の全貌を明らかにする。

 

 「我は他の魔族の5倍の体躯を持っている……即ち体積は125倍、この意味がわかるかね?」

 「強い、と言うことか?」

 

 俺の返答に魔王は首を横に振る。

 

 「必要とする食糧の量が多く、また燃費も悪いと言うことだ……我は食糧を得る為に、生きる為にこの魔族領で戦い抜き、結果として王となったのだ!!」

 「その為に領民を飢えさせていてもかっ!?」

 

 魔王が領民を飢えさせている理由はわかった。

 わかったのだがわかりたくはない。

 

 「力こそが全て。勝者が生き抜き敗者は死あるのみ……それが魔族の掟である!!」

 「クソッ!!」

 

 俺は剣の柄に手をかけ、戦闘態勢に入る。

 

 「そうだ、それで良い……挑戦は拒まず、そして捻じ伏せる!それこそが魔族の王たる者の義務だからな!!」

 「てりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 ガキィ!!

 

 鈍い剣戟の音が響く。

 俺の剣は魔王の左腕で防がれ、その左腕の一払いで後方に戻された。

 

 「やりおる……この我の肉体に傷を付けるとは。」

 

 しかし、俺の剣もただの剣ではない。

 女神の祝福と共に受け取った輝く剣である。

 

 いける……

 魔王の繰り出す攻撃は床を破壊し柱を折り、凄まじい破壊力をもたらす凶器であるが、その巨躯からの動作は非常に読みやすい。

 俺は魔王の攻撃をかわしつつ、伸ばした腕を、脚を、輝く剣で刻み続ける。

 

 「フゥ……フゥ……この、鬱陶しいヤツめ!」

 

 やがて、魔王が息をつきはじめ、顔から、体中から、汗が大量に噴き出している。

 巨躯の体内に熱がこもり、体中がみるみる紅潮していくのがわかる。

 

 魔王も限界が近いのだろう。

 だが、俺もまた魔王に対する決定打はない。

 

 -心を(うつろ)とし、剣にその身を委ねるのです。

 

 その時、俺の頭の中に直接響くような声がした。

 剣が語りかけているのだろうか……

 

 「わかったぜ!信じる!!」

 

 俺はその場で構えを解き、だらんと下げた剣を持つ右手に感覚を委ねる。

 

 「ようやく観念したかっ!そのまま砕け散るが良い!!」

 

 その隙を逃すまいと、魔王が拳を振り下ろす。

 が、そこには既に俺はいない。

 

 「なにっ!?」

 

 剣に身体を委ねた俺は、光速の斬撃を魔王の腕に、脚に、胴に、首筋に、瞬く間に刻んでいく。

 

 -今です!!

 

 頭の中に直接響く声と共に俺は俺の身体の制御を取り戻し……

 魔王の頭上、高く飛び上がった状態から魔王めがけて剣を振り下ろす。

 

 「トドメだ魔王!秘剣!天翔連閃!!」

 「グッ……グアァァァァァァァ!!」

 

 無数の斬撃からの縦一文字、魔王の左右半身は別々の方向へと倒れ込み……絶命した。


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