第2話 失意と覚醒
エリザが勇者と共に旅立った夜。
俺は眠れなかった。
いつも隣に寝ていたエリザの顔は、もう見ることはできないのか。
「この家、こんな広かったっけ。」
いつも一緒にいるのが当たり前だった日常は最早無く、ただ一人、静かな夜を過ごし……ていられるはずもない。
「『この村で、ずっと一緒にいたいな』って、エリザが言ったんだろ!なんでだよ!!」
俺はベッドから飛び起き、アテのない怒りを木材でできた壁にぶつける。
「クソッ!なんでだよ!チクショウ!!」
今度は木材でできた床に怒りをぶつけ、足を踏み下ろす。
バキッ
と、床を踏み抜いてしまい、俺は床にできた穴に落ちて行った。
「ててて……なんだここは?俺の家の下にこんな空洞が?」
家の下にあった空洞は暗闇であったが、まっすぐ伸びた空洞の先は空へ通じているのか、月光が差し込んでいた。
俺は手に伝わる土壁の感触と、先に見える月光を頼りに進むと、どうやら村の中央、井戸の底であったようだ。
そして、井戸の底には月光に照らされた、井戸の壁に彫られた一体の女神像。
神々しく照らされる女神像に、俺は無意識に、自然と惹かれ手をかざす。
「うおっ!」
俺が手をかざした瞬間、女神像がまばゆい光を発し、俺に語りかけた。
「悲しみを胸に秘めたる者よ……誰も責められず、誰にも問うことのできない、悲しみを胸に秘めたる者よ……」
いちいちその通りであるが、その言葉、今の俺に効く。
「おゆきなさい……心のままに……そなたも、数多の勇者の一人となるのです。そなたに、女神の祝福を与えん……」
「おっ、おいっ!!」
手を伸ばす俺に構わず一方的に語りかけ、そして崩れ落ちる女神像。
その跡には、輝く一本の剣が残されている。
「女神の祝福……俺が?あの勇者と同じ女神の祝福を?」
なぜ?何のために?
しかし、疑問に一方で俺はもうエリザのいないこの村でくすぶっていることはできなかった。
俺は輝く剣を手に取り、誰に誓うわけでもなく言葉を発した。
「この剣で俺は……あの勇者よりも先に魔王を倒す!!」