全てが終わった後に
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―2051年 9月14日
アメリカ アラスカ州山中
国連犯罪者収容所
コンクリートの壁面に、重苦しい金属音とそれに続けて数人分の規則正しい靴音が響く。
この場所では1日に三回しか聞かない音だ。それ以外に聞く音といえば、冷たい風の音と、他の収容者のいびきと、数日に一回のワゴン者やトラックのエンジン音だけだ。
しかしもう夕食の時間も、果ては日付の変わる時間も過ぎている。複数人の靴音などそれより珍しい。
「Time limit is Ffour o'clock.」
聞き慣れた看守の声だ。
(相変わらず退屈そうな美声だ。歌手に転職すればいい歌手になるだろうに)
「OK.Thank you.」
振り返りながら手元のリモコンを操作する看守と話している相手―看守が言っていた「客人」だろうか。まだ若い男性の声だ。いかにも英語慣れしていなさそうな声だ。
看守が操作したリモコンから発せられる電波で、「彼」の部屋の電気が灯る。やはり接客担当は彼らしい。
「彼」は、この監獄において最も珍しいであろう、「客人」を迎え入れる事にした。
「あの事か。ああ、よく覚えている。」
私の質問に答え、「彼」が重い口を開く。
「2年分の話だ。話せば長い。お前はどこまで知っている?」
重くもどこか優しい雰囲気を孕む不思議な声だ。一瞬、「事件」の実行者であるという事を忘れさせられた。
彼の名は、カンダ=シロウ。私が追っていた、「事件」の最重要人物だ。
とりあえず、私は「事件」に関して知っている事を残らず話した。
2037年、日本と世界を震撼させた事件が起こった。
首相大臣連続狙撃事件。
当時の首相、島田安弘総理大臣を始めとし、与野党、下底トップを問わず、まるで見せしめのように、テレビに映っているその瞬間に、類を見ない正確な狙撃で2ヶ月で25人の政治家が狙撃された。
当時は全ての報道機関が躍起になって報道したが、一年経ってからは、報道すらされない程に忘れ去られ、彼ーカンダ=シロウが実行犯として逮捕された際も全く報道されず、また、警察内部でもほとんどの構成員がその事実を知らされていなかった。
私は、逮捕された事、また、彼の戸籍が「2041年2月14日:死刑執行」で締めくくられている事、彼が何らかの理由で死刑執行に至らずここに収容された事までしか知らなかった。
「へえ、表の人間にしてはずいぶんよく知っているな。おかげで話す事が少なくて済む」
そう言うと、彼―シロウが分厚いファイルの束を渡してきた。
表紙には、「警視庁最高機密文書在中」の文字。
「そいつを見れば大方の事実は把握できる。帰ったら公開するなり好きにしろ。そろそろ真相を明かしてもいいくらいにはなっている筈だ。しかし、ここまで来てこれだけってのは寂しいか…解説でもしてやるよ」
そう言うと、彼はコンクリートの壁に身を委ね、静かに乾いた唇を開いた。




