No.0 世界が堕ちた日
1985年。世界はとある存在によって恐怖に堕ちることとなる。その存在とは人間では考えられないような超常的な異能を発揮出来る存在、通称「発現者」の登場であった。
発現者は皆同様に発症理由不明、空間をも操れる超常的な力、乱れた精神状態及び狂気を帯びた行動が観られた。そんな存在に世界は恐れ、拒絶し、見て見ぬふりをしようとした。が、現実はそう上手くはいかなかった。
・・・いや、全てはそこから始まったのかも知れない。
最初のうちは発現者の数も少なく、各国の政府から設けられた制度や規律によって、ある程度制御が出来ていた。しかし、直ぐに新たなる問題が発生した。
発現者の発生範囲の大幅な拡大化であった。
元々、発現者の発現地は日本の関東地方、中国の南部地方、そしてフィリピンの一部地域と決められていた。
だが、ある日を境にその範囲は世界中へと拡大することとなった。そのことによって政府側も対処不可となり、いつしか迫害を恐れた発現者は能力を使う事を出来るだけ避けるようになったことも相まって、発現者と一般人の区別もつかなくなってしまった。
もはや世界は発現者を認めざる負えなくなってしまったのだ。
発現者という存在を。
それからというもの、発現者も社会に参入するようになったが、それでも発現者と発覚した者に対する社会的な迫害は止まることを知らなかった。
その理由は単純明白、恐れて止まなかったのだ。己よりも力を持ったものが、己よりも地位を得てしまうかもしれないという事実が。
その後も時代を重ねるごとに受け入れられるようになってはきたものの、発現者差別は世界から消えることは無かった。
とある独りの男が動き出すまでは……。
発現者が現れてからかなりの年月が経ち、世界的にも発現者の存在が当たり前になり始めた。それとともに、発現者の発症率が高い場所がより鮮明となった。
そして、その中でも一際発症率が高い都市の存在が世界を震撼させた。
通常、発症率は通常3%程であり、高いところでも6%を超えることはまず無い。しかし、その都市は脅威の20%を叩き出した。
どう考えても有り得ない数値である。否、有り得てはいけない数値であった。
あまりに発現率が高過ぎるその都市の名を世界はこう呼んだ。
「深淵都市」と。