41.戦場のメリークリスマス(坂本龍一)
「ねえ、秋良。今年のクリスマスはどうする?」
「クリスマスかー」
「今年は学生最後のクリスマスだよ」
「そうだねー。二人で過ごすか、それともみんなでワイワイやる?」
「パーティーしようよ!」
「いいね」
「碧ちゃんたちと、あといずみも呼びたいな」
「みんな予定は大丈夫かな」
「碧ちゃんといずみに連絡するね」
朱音はスマホでメッセージを送り始めた。
◆
秋良と一貴は朝から部屋の飾りつけを、朱音たち女性陣は料理の仕込みを始めた。
料理の匂いと、クリスマスの飾りつけで部屋が華やかになってゆく。
お昼ごろには飾りつけは何とか終了して料理も出来上がった。
テーブルに料理が並び、グラスにスパークリングワインを注ぎいよいよパーティーが始まった。
「カンパーイ」
各々料理に手を伸ばす。
「あー。お腹空いた」
「チキン食べたーい」
「ピザ取って」
「スープもありますよー。フランスパンと食べてー」
「おいしいね」
「うん、うまい」
「飲み物取って」
「ケーキは最後に出しまーす」
食べ物はどんどんなくなって行く。
「あー。食べた食べた」
「お腹いっぱい」
「満足満足」
朱音は残った食べ物を大きな皿にまとめる。
秋良は空いた皿を持ってキッチンへ向かい、洗い始めた。
「お二人さんさ」
一貴が朱音たちの様子を見ながら話し始めた。
「なに?」
二人が同時に返事をする。
「いや、息ぴったりだね」
「管楽器だからね」
「いやいや、もう、いつでも一緒になれるな」
「うふふ」
朱音はまんざらでもない様子だ。
「まあ、いつも一緒にいるしな」
「いいなー」
一貴の横にいた碧が一貴の横顔に向かって言った。
「ウン」
一貴は一つ咳ばらいをする。
「そっちはどうなのさ」
「まあ、ぼちぼち……」
「全然です!」
「あっ」
「だって本当でしょ。チューだってなかなかしてくれなかったし」
「お、おい」
「まあ、まあ。でも意外だな。一貴がそんなに奥手だったなんて」
「そうですよ。もっといろいろ……」
「オホン!申し訳ないけどさ、私もいるんだけど」
いずみがあてられた表情でたまらず中断する。
「あー。ごめんごめん。そう言えば、いずみは大学院に行くんだっけ」
「そう。受験生」
「勉強好きなんだ」
「まあ、そうかな。専門的な勉強が楽しくなったから」
「へー」
みんな関心している。
「こうして居られるのはあと数か月かー」
一貴が言った。
「寂しくなるからそんな事言わないで」
朱音が遮る。
「みなさーん。ゲームしませんか。私いくつか持ってきたので」
碧が声をかける。
「おお、やろうやろう」
「テーブルどかすぞ、一貴、そっち持って」
5人はしばらくカードゲームで盛り上がった。
碧はだいぶやり込んでいるらしく強かった。一貴はその反対でかなり弱い。
(あー。そんな感じなんだ)
秋良はそれは口には出さなかった。
夕方になり、そろそろ解散しようという事になったところで朱音がてきぱきと残った料理をフードパックに詰め込み始める。
「朱音、そんなに気を使わなくてもいいのよ」
「ううん。二人じゃ食べきれないもの。持って帰って」
「それなら、遠慮なくいただくわ」
「先輩、ありがとうございます」
「いいのよ」
秋良と朱音は玄関で袋をぶら下げた3人を見送った。
パタンとドアが閉まる。
「急に静かになった」
「そうね、少し寂しいわね」
「片付けしようか」
秋良と朱音は無言で部屋の片付けをした。
片付けの後、夕食に昼の残りを食べたが、ちょっと物足りない。
「アイスクリームが食べたい」
朱音が提案した。
「買いに行こう」
外はすっかり日が暮れて冷え込んでいた。
その分空はよく晴れていて、星がたくさん見えている。
二人は腕を組んで歩きながらそのきれいな星空を見ている。吐く息が白い。
「朱音」
「ん?」
秋良は朱音を抱きしめて口づけた。
「もう、こんなところで」
「だってさ」
「だって何よ」
「愛おしくなった」
「ばか」
朱音はそう言うと秋良の胸に顔をうずめた。
「帰ったらアイス食べながら映画見よう」
「うん」




