表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/50

40.シシリアーノ(フォーレ)

 学食で久しぶりに朱音といずみが同席して昼食を食べている。

「朱音は就職はどうなの?」

「うん、いくつか内定もらってるんだけどね」

「だんなさんは」

「まだだんなじゃないわよ。将来を約束してるだけ」

「両方の親の許可出てるんでしょ? じゃあすぐだんなじゃん」

「まあ」

「で、どうなの?」

「あ、機械メーカーから内定が出てる」

「よかったね」

「うん、でも」

「一緒に暮らすのは難しそう?」

「うん。お父さんの事もあるから、実家の近くで就職したほうがいいかな……と」

「彼は何て言ってるの?」

「配属が何処になるのか分からないから、それがいいって」

「そーねー」

「いずみは?」

「うん。悩んでたんだけど、やっぱり大学院に進もうかなっと思ってる」

「そっかー。いよいよ一緒にいられるのはあと少しなんだね」

「定演。惑星出来てよかったなー」

「いずみのコンミスすごくよかったよー」

「ありがとう。人生いち練習した。もういいわ」

「あはははは」

「ほんとに何度も徹夜で練習した」

「徹夜で練習って、弦楽器ってすごいよね」

「だって間に合わないだもん」

 いずみは両手の手のひらを目に当ててホーッと息を吐いた。

「お疲れさまでした」

「ほんと、大変だったー」


「あ、せんぱーい。偶然ですー」

「碧ちゃん」

「ご一緒してもいいですか」

「どーぞどーぞ」

「お邪魔しまーす」

「最近どお?」

 朱音が声を掛ける。

「はい、頑張ってます。あ、そういえば、秋良先輩、最近は練習に来るときってツナギですよね」

「というか、家を出る時からだけどね」

「仕事に行ってるみたいじゃん」

 いずみが突っ込む。

「大人気ですよー」

「え?」

「秋良先輩って、ツナギのイメージ無いじゃないですか」

「そ、そうね」

「そのギャップが後輩に刺さるみたいで」

「そなの?」

「あ、でも、女子だけじゃなくて、男子もツナギ着てホルン吹いてる姿がかっこいいって」

「彼氏さん、大人気ですなー」

「茶化さないでよ」

「ね。思い出さない? 一年の新歓のとき」

「あー。初めて一年生が揃ったときね」

「みんなよそよそしかったよね」

「緊張してたよね。秋良とかカッチコッチだった」

「へー。その頃からもう気になってたんだ」

 いずみがにまっと笑う。

「あ、いやいや。ちがうちがう」

 朱音が胸の前で両手をぱたぱたと振る。

「何がちがうよ。今更」

「そうは言っても、やっぱり照れるよ」

「先輩方もそんな時期があったんですね」

「そりゃそうよー」

 朱音といずみは同時に声を出した。

「あっという間に卒業だねー」

「夢中だったなー」

「先輩方、まだ定演がありますので、気を引き締めてお願いします」

「分かってますよ」

「碧ちゃんもしっかりして来たねー」

「そういえば、今日は練習は来られるんですか?」

「私は大丈夫だけど、いずみは?」

「私も大丈夫」

「それじゃ、お待ちしてます。私、そろそろ行きます。お邪魔しました」

 二人は立ち去る碧の背中を見つめていた。

「なんだか、嬉しいような、寂しいような」

 いずみが話し始める。

「先輩たちも、こんな思いしてたんだね」

 二人はしみじみと、哀愁をかみしめた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ