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25.天王星 魔術師

みんな魔法にかかっているのでしょうか

「先輩 隣の席いいですか」

 秋良、朱音、一貴の3人で学食で昼食を食べようとしていたところに碧が声を掛けてきた。

「いいよ」

 一貴はすぐOKした。

「ありがとうございます! お二人もよろしいですか?」

 秋良と朱音は顔を見合わせる。

 秋良はうなずくと

「いいよ」

 と返事した。


「お邪魔します」

 そう言うと碧は一貴の隣に座った。

「その節は……すみませんでした」

 碧は秋良に向かって頭を下げた。

「あ、いやいや。いいんだ」


「あははは。ごめん。そうだよな。こういう空気になるよな」

 一貴が話し始めた。

「じつはさ、俺たち付き合い始めたんだ」

「はい?」

 秋良と朱音は同時に声を出した。

「最初に二人に伝えておかないと。と思って」

「ああ、うん」


「梅香崎先輩」

「本当にご迷惑おかけしました」

 碧は朱音に頭を下げる。

「ううん。いいの。ほら、ここ学食だし、頭とか下げなくていいのよ。気にしてないし」

「あー。やっぱりちょっとむかつく」

「おい!」

 一貴が突っ込む。


「付き合いだしたのは碧ちゃんが早退した頃?」

「もう少し後だけど……」


「私、今、すごく反省しています」

「あの時、椎木先輩に告白した時、本当に自分の事しか考えていなくて」

「それで、断られてすごく苦しくなって、悲しくなって」

「早退した日は、一貴さんが、声を掛けてくれて」


「あの日は一貴の楽器は俺が片付けといた。ものすごく素早かったよな」

「すまん。秋良、恩に着る」

 一貴は両手を合わせて秋良を拝んだ。

「いいってことよ。相棒」


「お二人、仲いいんですね」

「うん。でも、一貴のそれには気が付かなかった」

「すまん。一方的な思いだったし」

「いや。責めてないよ。びっくりしただけ」


「最初に声をかけられたときは、驚いたんです。なんでこの人がって」

「声をかけてきたの誰なのか分かった?」

 秋良が尋ねる

「はい。いつも椎木先輩の隣にいる先輩ということは分かりました」

「そして、どうやら私が椎木先輩に振られたことも知っているみたいでした」

「だから、もうオケのみんなに知られちゃってるんだと思って、目の前が真っ暗になりました」


 碧と一貴の二人はファミレスにいた。

 碧はボロボロと涙を流して泣いている。

 一貴は碧が落ち着くまで、向かいの席で待って話しかけた。


「秋良と何かあったんだよね」

「……」


「もうみんなにばれてしまってるんですね」

「いや。みんなは知らない」

「じゃあなんであなたは知ってるんですか?」

「俺は、秋良の、相棒だから……」

「い、いや違う。秋良に聞いたのでもない」

「……」

 碧は潤んだ目で一貴を見つめている。

「お、俺は君をずっと見ていたから……」

「え?」

「も、勿論、秋良の相棒だから気づいたというのも本当。でも、秋良は何も言ってない」

「……」

「き、君も結構無謀なことをするよね」

「どういう意味ですか?」

「いや、あの二人の間に割り込むのはやっぱり」

「そんなこと、わかってました。わかってました……」

 碧はそう呟くと俯いた。


「でも、気持ちを伝えないと心が破裂しそうだった……。だよね?」

 碧は黙って頷いた。

「俺も高校の時、告白して撃沈したことがある」

「その時の心持ちはわかるつもり」

「……」

「だから、君が嫌じゃないなら、一緒に居させてほしい。誰かに話すときっと心が軽くなると思う」


 それから二人は秋良の事やオケの事などしばらく話した。


「私、一貴さんに話を聞いてもらって、すごく気持ちが楽になりました」

「そして、私を見ていてくれた人がいるんだって、うれしくもなりました」

「私、ずっと一人で空回りしてて、弱みを見せない様、力んでました。人に話を聞いてもらえるのが、こんなに安心するものなんだって初めて知りました」

「そして、そんな私だったから、椎木先輩に見てもらえてなかったんだなとも分かりました」

 碧は淡々と話し続けた。


「今だから分かります。私は椎木先輩が好きだったけど、それ以上に朱音先輩がうらやましかった」

「人を好きになって、好かれて、幸せそうで、あんなにきれいになって」

「妬んでました」


「椎木先輩、改めてごめんなさい」

 碧は頭を下げた。

「先輩の困った顔が忘れられないです」

「好きと言いながら、その人を困らせてしまっていました」

「あ、いや、ほら、もう謝んなくていいから」

「一度きちんとお詫びしたかったんです」

「それと、どうか一貴先輩と私のことをよろしくお願いします」

「それは勿論だよ」

「朱音先輩もお願いします」

「もちろんよ」


「じゃあ、今度4人でWデートしましょう」

 朱音が提案した。

「いいんですか?」

「いいに決まってる。一貴もいいよな」

「お、おう」

「決まりね」


 トレイを戻しに席を立った一貴と碧を見送りながら朱音がつぶやいた。

「なんだか、ハトが豆鉄砲くらった時ってこんな感じなのかしら」

「一貴、あいつきっと魔法使えるんだ。俺もかけられてるのかな」

「いやー。やめてー」

「秋良には私の魔法がかかってるんだから!」

「え?」

「な、何でもない。さ、昼休み終わっちゃうから」

 朱音はトレイを持って立ち上がった。

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