20.火星 戦争をもたらす者
タイトルはちょっと大げさです
「朱音! 大変だよ!」
いずみが朱音の教室に飛び込んで来た。
「秋良が!」
「秋良がどうしたの」
「倒れたって!」
朱音といずみが病室に着くと、すでにチェロの石橋と秋良の相棒の一貴がいた。
秋良と楽しそうに話をしている。
秋良の左手には点滴がつながっている。
「よー。朱音」
「よー。じゃないわよ。大丈夫なの」
「おー。徹夜でレポート仕上げて提出したらさ、くらくらして。もうだいぶ気分も良くなった」
「もー。心配したんだから!」
「ごめんごめん」
秋良は手をのばして朱音の頭を撫でた。
「おほん! あーお取込み中にすみませんが、我々も居るので」
歩がたまらず声をかける。
「え! あーすみません」
「ま、元気になったみたいで良かった」
「だいぶ気分が良くなりました」
「お前は『惑星』の主役の一人だからな、体調管理はしっかりしてくれよ」
「私、しばらく秋良の家に泊まり込みます」
「お、ナイスアイデア!」
「せ、先輩」
「いや、ちゃんと食事を作ってもらえ」
「うん。うん」
周りも頷く。
「おま、嫁入り前だぞ」
「ちょうどいい。嫁にするいい理由になるじゃないか。大体、傍から見てるとお前ら夫婦みたいだし」
「そうだそうだ!」
周りも同調する。
「先輩!」
碧が病室に飛び込んで来た。
「心配しましたー。大丈夫なんですか」
「あ、ああ。大丈夫だよ」
突然のことで、秋良は狼狽えている。
「あの子確か、フルートの」
歩が一貴に耳打ちする。
「出雲碧です」
「ほー。秋良もてるのな」
「そうみたいです、ね」
一貴の表情は暗い。
「碧ちゃん」
朱音が声をかける。
「梅香崎先輩……。あの、椎木先輩が倒れたって聞いて、びっくりして、それで、それで、居ても立っても居られなくて、来ちゃいました。ごめんなさい」
碧はうつむいて、話した。
「ううん。私もあなたの立場だったらきっと心配でたまらないと思うから」
「え?」
「もう! わかってたんだから。あなたの気持ち」
「ええ? でも……」
碧の顔が強張る。
「私、決めてるんだ。ずっと秋良の隣にいるって。そして覚悟もしてる。そのためには何でもするって」
「先輩……」
「だから、こうして好敵手が堂々と現れたら、対応はします。だって秋良が大好きなんだから」
(うへー)
歩はびっくりした。
そして、秋良をうかがうと、驚きのせいか、のぺっと無表情だった。
いずみは目を見張っている。
「なあ、一貴、梅香崎ってこんなキャラだったっけ?」
「だったみたいですね。正直びっくりしています」
「好きな人ができると人はかわるんだな」
歩は心底感心した。
「梅香崎は本気で秋良のそばに居るつもりなんだと思います」
「そうみたいだな」
「だから、好敵手にも堂々と対応する」
一貴はため息をつくように
「それに引き換え我が相棒はなんともはや」
と言った。
ぷっ。歩は噴出した。
「確かに、呆けてるようにしか見えんな」
横で黙って話を聞いていたいずみは我慢できなくなってげらげら笑いだした。
それを見た歩と一貴ももうこらえられず、一緒に声を出して笑い始めた。
秋良、朱音、碧の3人は何が起こったのか理解できず、涙を流して笑っている3人をぽかんとして眺めていた。




