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19.組曲「惑星」

今年の定期演奏会は記念演奏会です。

 オーケストラの練習場の中はざわついていた。


 今年の定期演奏会のメインの曲が組曲「惑星」と発表されたからだ。

 それも全曲演奏する予定であると。


 今年が団設立75周年ということで、記念演奏会と位置づけられていたのだが、それでもこんな大曲になるとは誰も思っていなかった。

 

「おい、秋良、俺、ちょっと興奮気味だ」

 一貴が高揚した表情で話しかけてきた。

「俺もだ」

 秋良も同じだ。


 他の団員も色めき立っている。


「『惑星』を全曲なんて一生に一度できるかどうかよね?」

「ほんと! そう思う」

「でも、すごい大変そう」

「7曲もあるもんね」

「特殊楽器どうするのかな? エキストラを頼むのかな?」

「女声合唱は合唱部に頼むんだって」

「大編成だからOBにも声かけるって!」

「わー。合奏楽しみー」


 グスターヴ・ホルスト作曲 組曲「惑星」 


 秋良がこの曲を初めて聞いたのは中学生の時だ。

 同じホルンを吹いていた友達のCDを借りて聞いた。


 指揮:カラヤン 演奏:ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 録音:1961年


 衝撃だった。

 曲も、演奏も何もかも。

 すぐに秋良も同じCDを買った。


 ウイーンフィルのリミッターが外れるとこうなるという演奏だと思った。

 (こんな演奏すごすぎる)

 (何なんだこのホルンの音は!)

 心が震えた。

 しばらく興奮が収まらなかったのを覚えている。


 「惑星」と言えば、なんといっても4曲目の木星が有名で特に第四主題のAndante maestosoは歌詞をつけて歌われている程だ。


 しかし秋良はなんと言っても2曲目の金星が押しである。

 1曲目の「火星」との対比も素晴らしい。

「金星」は「火星」を聞いた後に聞くのがベストだ。

 この曲はシンプルなホルンのソロから始まるが、この旋律はホルン以外ではありえないと思う。

 ほかのどんな楽器でもこの旋律は活かせない。

 それほどホルンに最適化されていると思う。


 ーー


 組曲「惑星」は以下の7曲で構成されている。

 

 1. 火星 戦争をもたらす者

  Mars, the Bringer of War


 2. 金星 平和をもたらす者

  Venus, the Bringer of Peace


 3. 水星 翼をもった使者

  Mercury, the Winged Messenger


 4. 木星 快楽をもたらす者

  Jupiter, the Bringer of Jollity


 5. 土星 老いをもたらす者

  Saturn, the Bringer of Old Age


 6. 天王星 魔術師

 Uranus, the Magician


 7. 海王星 神秘なる者

 Neptune, the Mystic


 どの曲もすべて名曲である。


 6曲目の天王星はポール・デュカスの「魔法使いの弟子」の影響を受けている。

 この曲はディズニーの「ファンタジア」にも収録されていて、ミッキーがとてもかわいい演技をしている。


 ホルストは実は吹奏楽の世界では知らない者はいないと言える。

 吹奏楽のための曲を書いており、特に第一組曲、第二組曲はコンクールで自由曲として演奏されることもしばしばである。


 この「惑星」は日本のSFの音楽にも明らかに影響を与えていると思われる。

 特に宇宙が舞台のSFアニメの音楽は「惑星」の影響を受けていると思われる曲が散見される。

 と言うより、「惑星」を聞いていると、宇宙戦艦や銀河鉄道のイメージが浮かんで来るというのが正しいのかもしれない。


 ーー


「秋良、今日バイト終わったら家に寄ってもいい?」

 朱音が声をかけて来た。

「いいけど、くたびれてない?」

「大丈夫。『惑星』のCD持ってるんでしょ? 一緒に聞こうよ」

「分かった」

「それと、お泊りしたいし」

「お、おう。わかった。珍しいな朱音の方から言ってくるなんて」

「たまには、そうした方が良いんでしょう?」

「まあ、うれしいけど……。ん? 朱音さん」

「はい」

「どなたからか。アドバイスされました?」

「え? いーやーどうかしら」

 朱音は視線をそらす。

「基本奥手の朱音さんが大胆なことを言うので怪しんでます」

「だって、たまには彼氏ドキドキさせないとだめだよってみんなが……」

「あー。そうなんですね……。でも、普段からドキドキさせられているのですが?」

「え。普段できてるの? 私」

「そうだよ」

「よかったー。私、奥手だからみんなに心配されてるの」

「大丈夫だから。朱音の事、とても愛しいと思ってるよ」

「うん」

 朱音はふにゃりと微笑えんだ。


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