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マルフォームド  作者: 水鏡 緋依
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第1話 「トリガー」



「っは…」


「はぁーゆめっ…か」


あいとの目からつーと涙が垂れている


今の夢は本当の話だ しゅのはまだ視力が戻らないし、みなとは… 夢の中で見たあの日の3日後に死んだ。


今でもみなとが死んだ日を思い出すと涙が出てくる。

俺たち兄弟は自分で言うのもあれだがとても仲が良かった。日中はほとんど一緒にいて、村の人たちにはすれ違う度


「おはよっ!今日も2人一緒だな お前らほんとに仲よしだな〜 俺の子供たちにも見習って欲しいよ」


だなんて言われて、俺はもう15だから弟とずっと行動するような歳ではないと思っていたけどみなとが


「おにーちゃーん!」


て笑顔で追っかけてくるとついつい構ってしまっていた。

1回みなとを置いてしゅのの家に行ったことがあったけ…その時は帰ったら大泣きしてたな…

それからはどこ行くのもついてきて、ちょっと離れたら


「どこ行くの!?」


て焦った顔で追いかけてきて、ほんとに可愛かったな…

仲がいいて言われて俺は照れくさかったから澄ました顔しちゃてたな、けど本心はとても嬉しかったし本当に自慢の弟だった…


「みなと…っ…」


また目からボロボロと涙が出てきた。止まるように上を向くが全く効果はなくどんどんボロボロと涙が出てくる。


「っ…うぅ……うぅ…」


もう泣かないってあの日にみなとが死んだ日に決めたのに…涙が止まる気配は全く無い。

この涙は夢のせいだ仕方がない…


結局目が腫れるまで泣き続けてしまった。


ーーーーーーーーーー



「起きるか」


ベットからでて顔を洗いに行った。


あいとが泣かないと決めたのは希望がまだあったからだ。


この村の中心には塔がある。


とてもとてもでかい塔で上を見上げても頂上なんて見えない。そしてこの村にはこの塔に関する言い伝えがある。


(この塔の頂上まで登ったものは、望みが1つ叶う)


そう言う言い伝えだ。


俺はこの誰が、なんのために、どうやって建てたのか誰も知らない未知の塔に入っていく人が理解できなかった。なんなら軽蔑してたよ。


金、権力、地位が欲しいのか?それとも単なる好奇心?そんなものために何も分からない未知の世界に足を踏み入れるなんて。


年に10人くらい入っていくけど帰ってきた人は未だに一人もいない、馬鹿なんじゃないかと思った、自分の人生を棒に振って、命をかけてまで欲しいものがあるのかと。


本当かも分からない村の言い伝えを信じて頂上が見えない未知の塔に入っていくなんて、そう思っていた…


でも今はそんなほんとかも分からない村の言い伝えに縋るしかない。みなとを生き返らせれるんだったら自分の人生なんて命なんてどうでもいい。





泣いたせいでもうすぐお昼じゃん。そう思いながら急いで着替え家をでた。


「いってきまーす!」


「…」


家から返事は無いが両親は家にいる。


みなとが死んでから2人ともすっかり変わってしまった。あんなに明るかった俺たちの家が今じゃ毎日お通夜状態だ。


みなとの死を受け入れろと思っている訳でもないし、実際俺はまだ諦めてない。その証拠に今俺は塔に向かっている。でも毎日家があの空気だと気が滅入る。


そう思いながら返事のない家を後に塔に向かった。


「でっか!」


思わず声に出てしまった。普段から塔を見てはいるが、塔の麓に来ることは滅多にない。


塔の周りには水が拡がっていて、坂を登ると俺たちの村の住居が広がっている。


「ザッ…ザッ…ザザザー」


俺は坂をくだって水の前まで来た。今日は見るだけのつもりだったけど、せっかくここまで来たし、入口まで行くか。そう思い水に足を入れた。


「わッ」「冷たっ!」


想像以上の冷たさに思わず声が出た。それにしてもすごく透明で綺麗な水だ。20cmくらいの深さがあるのに足が綺麗に見える。


「チャプ…ジャパッジャパッ」


少し進むと入口まで着いた。これどうやったら開くんだ…?分厚く頑丈そうな塔の入口をみて困惑してしまう。ほんとにこの先に何があるのか分からない… 何を持っていこうか…


「わっ!ザッ…ザザ…うわァァァザザザー」


坂を滑り落ちる音と共に誰かの叫び声がし、後ろに振り返った。


「バッシャッッッ!」


振り返った時には水に落ちていた。よく見ると、今水に落ちたのはしゅのに見えた。


「しゅのぉーー!」


そう言って急いで駆けつけた。


やっぱりしゅのだった。

「どうしたのしゅの、なんのためにここに来たの、目見えないんでしょ、どうやってここまで…」


気になることはいっぱいあったが、しゅのが俺の質問を軽く聞き流しながら手探りで入口に向かって行くので心配で急いでついてった。


しゅのを俺の腕につかまらせた。そのまま2人は塔の入口に向かった。


入口に着いた。しゅのが手で入口を触って確かめている。一旦落ち着いたので気になることしゅのに聞くことにした。


「…あのさ、しゅのはなんでここに来たの?」


「塔を登ろうと思って…その下見に」

「て言うかあいともここに来てるってことは少なからず僕と同じ考えでしょ」


!!


「しゅの!お前!目見えないんだよ!そんなんでどうやって登るんだよ!」


「僕にも分からないよ」

「でも僕、目が見えないならこんな世界生きていけないよ… だからさ、この塔の言い伝えに賭けようと思ったんだよね。もし願いが叶うなら僕は目を見えるようにしてもらいたいんだ。」

「まぁ… 目が見えない僕がこの塔の頂上に行けるとは思わないし、なんなら入った瞬間に死ぬかもね。」


「…」

「なら俺と一緒に塔を登ろう」


「ありがとう、あいと でもイヤだ。」

「目の見えない僕は足でまといになるどんなところかも分からないところにこんな足でまとい連れていったらダメだよ。僕あいとには生きて欲しいから」


「生きて欲しいのは俺も一緒だよ。しゅのに死んで欲しくない」

「俺はみなとを生き返らせるために塔に登ろうと思っている。みなととずっと一緒に暮らしたかったから、生きてて欲しかったから、でもそれはしゅのでも全く同じだよ。小さい頃からずっと一緒に遊んだじゃん…だからしゅのが死んだら俺は2回塔に登らなきゃ行けなくなる…だから一緒に2人で塔に登ろう、ね、」


「んー、わかった。でも、もし、もしだよ、何かあったら僕のことは置いていってね、」


「イャ………ん…わかった。」


2人は一緒に塔を登ることとなった。


この決断があの大きな被害を引き起こすトリガーとなるとも知らず…


最後まで読んでくださりありがとうございます。

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