記憶
「おにーちゃーん!お兄ちゃんってば、まってよ!」
みなとが走りながら追いかけてくる。
そんな彼をみて可愛いやつだな、と思い後ろを振り返る。
「 ごめんごめんみなと、ほら手繋いどこ 」
手を差し出すとギュッと握り返してきた。
「あっ こんにちはー!」
村の住民とすれ違った。
「あら、こんにちは!2人でお出かけ?やっぱり2人は仲良いいいわね〜」
仲がいいという単語に2人は照れくさそうに微笑む。みなとの手を握る強さがさっきより強くなった。嬉しかったのだろう。あいとも満更でもない顔をしている。
この人はあいとの幼なじみ、しゅのの母親。しゅのはこの前高熱を出して倒れた。
「みなとちょっと先に帰っててお兄ちゃんおばさんと話あるから…」
「わかった!」
そう言うとみなとは繋いでいた手を離すと家の方向へと元気よく走っていった。転ばないといいが…あいとはそう思いながらおばさんに目を向けた。
「それで、おばさん…しゅのの様態どうですか?」
深刻そうな顔をして聞いた。昨日もお見舞いに行ったがまだ熱は下がっていなかった。
「それが…やっと熱が下がったの、でも視力が戻らなくてあの子絵を書くの好きだったでしょう、だからもうずっと上の空で…」
「…」
高熱がでたぐらいで目が見えなくなるのか…何かほかに原因が、そう思ったがこの現状を前にするとそうであるとしか思えなかった。
あいつの将来の夢絵描きだったな、相当ショックだろう…
「そうですか…あとでお見舞い行きますね」
「ありがとう あいとくんが来てくれたらあの子も喜ぶよ 」
そう言うと2人は別れた。
あいつリンゴ好きだったな、リンゴでも持っていってやろう…そう思いながら一旦家へ帰った。
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「ゴホッ...ゲホッゴホッゴホッ...」
「みなと大丈夫?ほらお水飲んで」⠀
「お兄ちゃん…っ目も見えないし…っ耳も聞こえないよ…っなんで…っ…うぅ…」
みなとが泣きながら俺に言ってきた。
最近村で病が流行っている。最初に高熱が出て、次に目が見えなくなる、最後耳が聞こえなくなって…死ぬ。耳が聞こえなくなるまで悪くなって治った人はこの村にはいない。あの時のしゅのの高熱もこの流り病と同じものだろう。
ちなみに昨日、隣のおじいちゃんが死んだ。85歳だったから十分長生きだと思う。耳が聞こえなくなってから3日後だった。
最後まで読んでくださりありがとうございます。初めての小説です…
これからどんどん投稿していけたらと思います。