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第9章 対立

この章は久世優斗の目線で描いてます。



ーー俺は今、千夏からの質問責めを食らっていた。



「…優斗、どういう事か答えて。何で女性物のパンプスがあるの?後ろめたい事がなければ答えられるはずよ。何で黙ってるの?」

「…ごめん、お前にははっきり話すよ。今、親父の提案で家政婦を雇ったんだ」

「家政婦?それなら、別に話してくれたら良いじゃない?隠す必要ないでしょ?」

「…で、そのパンプスは家政婦さんの物」

「そうなんだ。じゃ、一度挨拶させて!」

「えっ?いや、仕事中だし迷惑になるだろ?」

「何で良いじゃない?邪魔にならない様にするから。少し上がらせて貰うよ」

「えっ?ちょっと!」


俺は初めて千夏に嫌気を覚えた。

それに少し図々しい。自分のペースに相手を巻き込まないでくれ、気分を害する…。

早く千夏を帰したい一心で何か言い訳を考えるが見つからない。


その時、リビングの扉が開く音に俺と千夏は一斉にリビングの方へ視線を向ける。




「…あの、家政婦は私ですけど。初めまして」


妹尾さん…?!

馬鹿!何で出てきたんだ?!

俺は説明に困り果ててると……



「…うん?あれ?貴方さっきの?えっと、桜さんでしたっけ?」

「…貴方は確か、千夏さんでしたっけ?」


うん?まさか2人は初対面じゃないのか?

知り合いらしき空気を醸し出してるが…。



「…まさか奇遇ね。こんなとこでまた会うなんて。しかも家政婦として」

「そうですね。信じられない出会いで驚きです」

「けれど、貴方みたいな若い人が家政婦してるなんて……もっと他に良いとこがあったんじゃない?今からでも探し直したら?優斗の面倒も疲れるでしょ?」

「…いえ、大丈夫ですよ。それにここの仕事好きですし」

「…家政婦の仕事が好き?有り得ないわ。貴方もしかして優斗が目当てなんでしょ?だから見境もなく通い続けてるんじゃないの?違う?」

「…私はそんな事」

「だったら、今すぐ辞めてくれない?私はてっきり家政婦なら年配の人だと思ってたのに貴方みたいな若い人だなんて。優斗の隣にいるのは私以外考えられないの!」

「……えっ?どういう意味ですか?」

「えっ?分からないの?優斗はね、私のなの。だから諦めてね」



ーおい!いつから俺はお前のもんなんだよ!


しかも誤解を生む様な発言の数々。

もう我慢の限界だった。



「いい加減にしろよ!!」


思わず俺は声を張り上げてしまった…。



千夏は俺の声に少し肩を震わせた。


「…千夏、はっきり言うけど俺はお前とは付き合えない」

「…えっ?どうして?仲が良いのに……!」

「…俺はお前の事、恋愛対象としては見れない。ごめん」

「………」


千夏の顔からは落胆の色が見られた。

悲しませる事だけど、これが俺の本心だ、嘘は付けない。


「……じゃ、他に好きな人が?」


恐る恐る千夏は俺に訊ねる。

もう、素直になろう。

俺は自分の意思を尊重した…。



「…あぁ、好きな人がいる」

「……そうなの。…分かった」


少し冷静さを取り戻すも千夏からは笑顔が消えていた。


「…もう、帰るわ」

「えっ?」

「…それじゃ、失礼します」


あっさり引き下がる千夏に俺は少し違和感を覚えつつも、胸を撫で下ろしていた…。


はぁー、一先ず良かったと安堵の溜め息を吐く…。


そして、再び妹尾さんと2人っきりの空間になった。


「…ごめん、迷惑かけたね」

「いいえ、気にしないで下さい。それより彼女大丈夫ですか?」

「うん。後でメッセージだけでも送るよ。それより千夏と知り合いだったの?」

「うん。今日ここへ来る道中で出会った人が偶然にも千夏さんだった。靴擦れで足を痛めて歩いてたから声をかけたの。まさか優斗さんと知り合いだったなんて……。世間って狭いね」

「…そうだね」


急に会話が途切れてしまった…。

今のままじゃ、俺は二股野郎に成り下がるよな。

とにかく、この微妙な空気感を崩さないと。

俺は言い訳に聞こえるかもしれない台詞を必死に絞り出してる。


だけど、先に沈黙状態を破ったのは彼女のこの一言だった…。



「…あの、千夏さんとは本当の所、どういう関係ですか?」

「…えっ?」

「…気になってました、実は」

「うん。そりゃ、そうだよ。俺に非がある。だからちゃんと説明させて?」


彼女は頷いていた…。



「……実は、千夏とは仕事の同僚で女性の中では一番気の合う、気心知れた関係かな?俺は彼女に恋愛感情を持った事は一度もない。それは彼女も一緒だと思ってた、つい最近まで。しかも驚く事に千夏に告白された日と同じ日に君からも告白されたんだ。正直、千夏の時はどう断ろうか返事に困ってた。けれど君の時は、純粋に嬉しかった。だから、キスもしたくなった。俺は決して二股とかはかけてないからそれだけは信じて欲しい」

「………」


彼女の心に俺の気持ちはどう響いているかは分からないけど、これが今の俺への精一杯の気持ちだった…。


「…優斗さん、あの」

「うん?」

「…私、やっぱり優斗さんが好きです。だから、家政婦の仕事を続けさせて下さい、お願いします」



ー良し!!


俺は思わず、彼女には見えない位置のとこで手の拳を作りガッツポーズしていた。




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