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第7章 最初のキスはミント味

この章も久世優斗の目線で書いています。


俺は朝から妙にそわそわして落ち着きがなかった。


そう、今日は妹尾さんが俺の家にやってくる最後の日。

勿論、親父の耳には入ってない。俺だけが知ってる事。



だけど、俺もこのままでは納得出来なくて…。

もしも今日引き留めず帰してしまったら一生、彼女と会えない気がした。それだけはどうしても避けたい。


後悔しない様に俺は彼女を受け入れる準備を始めていた。

まずは彼女のあの父親だが、俺は家柄なんて関係ない。

どんな父親だろうと受け入れる。

金銭面の問題もお互い働いてたら問題ない。

ただあの父親が絡んだら大変だがその時は弁護士に相談だな…。


えっと、後の問題は……俺の親父だけど、それは心配ないだろし問題は解決。


不意に時計を見上げると、彼女の来る時間が刻一刻と迫っていた。


ふー、そろそろ時間だな。



ピンポーン!


絶妙なタイミングでインターホンが鳴り響く。


俺は部屋を飛び出し、階段を駆け下りる。


けれど、人足遅かった。

彼女は親父に出迎えられ、リビングの方へと案内されている。


何を話してるか、内容までは耳に届かない。

でも表情を見る限り、まだ辞める事は言い出してない様子だ。



♪~


ーうん?この音は親父の携帯の着信音じゃ…?


案の定、親父は急な仕事が入ったらしく彼女に断りを入れると直ぐ様、会社へと向かった。


と、言う事は今、この家には俺と妹尾さんの2人。

絶好のチャンスは今しかない!


この機会を逃すまいと俺は意を決して彼女に声をかけた。


「…あの、妹尾さん?」

「…えっ?!あっ、優斗さん」


凄い慌て振りだ。


告白してくれた次の日は誰だって恥ずかしいし気まずいよな。


その推測は見事に的中だった。


だけど、余りにも顔を反らされるのはちょっときついな。



「…妹尾さん、掃除終わったら俺の部屋に来て?良いね?」

「…はい」


俺は約束を取り付けると、自ら自分の部屋へと戻る。

何か、強引過ぎたかな?

自分の行動は端から見たら諦めの悪い未練たらしの男にも見えるかも。

それぐらいは承知の上だった。


あっ、そうだ。今、作詞作曲中の歌を披露するか?

俺は現在、自分の歌を2曲持っている。

たまに路上ライブで披露している素人だけど、俺の歌声は幸い、観客を魅力していた。

ピアノ持参は無理だからと音源だけを録音し、向こうで流しながら歌唱している状態だ。

まぁ、でもそれなりに俺は満足感を満たしていた。


親父の仕事もやりながら、趣味の音楽もここ数年続いてるのは奇跡とも言える。親父も趣味ならと文句を言わないし。


と、今は3曲目の作詞作曲に息詰まっていた…。


うーん、俺は主にバラード。

皆の心に響く曲じゃなきゃ意味がない。

何か、閃きが起こらないと…。



コンコン


ーー?!


「……あの、優斗さん?」


妹尾さん?!


「…今、開けるよ」


部屋の扉を開けて妹尾さんを招き入れる。


「……ごめんね。来て貰って」

「…それは良いんですけど。また曲を考えてたんですか?」

「うん。…実は今、息詰まっていて…」

「そうなんですか?意外です」

「意外かな?曲作るのって簡単じゃないしね。けれど、俺の歌で聞いている皆が癒されたら良いなと思って」

「…十分、癒されました私は。優斗さんの声は皆を幸せにする魔法みたいですよ」

「…えっ?魔法?」

「あっ、例えが幼稚臭かったかな?ごめんなさい。私は音楽の事は詳しくないけど、優斗さんの歌は好きですよ。趣味だって言ってるけどプロを目指しても良いぐらい。だけど今の仕事もきっと優斗さんの中で好きな仕事なんじゃないですか?それって私にとっては羨ましいです。だって私には何もないんです。好きな事も、やりたい事も。ただ…日々働くだけの毎日を過ごしてるって感じです。……あっ?喋りすぎました!すいません」

「………じゃ、今から好きな事を見つけなよ」

「……私は良いんです。自分自身、色々な事を諦めてきました。だからもう慣れました。けれど、優斗さんは色んな可能性があるから頑張って欲しいです」

「…もしかして、その色々な事を諦めてきたって言ってる中に俺の事も含まれてる?」

「…えっ?!」


図星だな?…彼女の表情からはそう窺えた。


「…何言ってるんですか。違いますよ。あっ、告白の件なら忘れて下さい。私どうかしてたんです、きっと」

「…俺は忘れないけど?」


これ以上はまずい!と、話題を変えようとピアノの方へ視線を向ける彼女の顔を俺は両手で優しく包み込んだ。


思わず俺は彼女の目に吸い込まれていた。

それに彼女もまた俺から視線を外そうとしない…。


もう無理だった…。

気付くと、俺は彼女の唇に軽く自分の唇を押し当てる。


一瞬だけ唇を離すと、また再び唇を重ねる。


次第に濃厚なキスへと変わっていく。


そして、彼女との最初のキスはミント味がしたのだった…。







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