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第21章 結婚宣言



今、私は優斗さん宅の前でぼんやりと立ち尽くしていた。


結局、スーパーを辞めた私は次の仕事をと就活していたが中々決まらない。そんな私を見兼ねて優斗さんは勝手にお父様に私をまた家政婦の仕事に復帰させて欲しいと頼み込んでいた。


お父様もあっさりと承諾。

で、現在に至るのだ。


ただ、今回は母の事もあり住み込みではないが。


正直、父に監禁され暴力を受けてたあのマンションから出て行きたかった。けれど今の私達にお金の余裕はなく渋々、母と一緒にこのマンションで住むに至った…。



優斗さんには迷惑しか、かけてないな。

何で優斗さんは千夏さんじゃなくこんな私を選んでくれたんだろう?

いまだに分からなかった…。

それに1年も音信不通になったのに私の事を待ってくれてたのには驚きを隠せなかったけど。

何か恩返し出来たら良いんだけどな。


取り敢えず、インターホン鳴らそう!

と、手を伸ばした時だった。



「…あれ、妹尾さんじゃないか?」


背後から聞こえる声に私は振り返るとそこには優斗さんのお父様が立っていた。



「あっ、久世さん!」

「どうしたんだい、こんなとこに突っ立って?」

「いいえ……あの!こちらこそ色々とご迷惑をおかけしてすいません」

「そんな事は気にしないで良いよ。取り敢えず中へ入って」

「はい」


私はお父様に申し訳なさばかりが募る。

どこまで私って女は図々しいんだろう。


そして、私は玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えリビングの方で待つ様にとお父様から指示を受ける。


直ぐ後、お父様が紙とペンを用意し私に手渡してきた。



「…これは?」

「君の住所と連絡先を書いといてくれ。これは優斗のお願いだ。勿論、嘘の住所じゃなく正しい住所でな」

「…はい」

「取り敢えず、書いといて。優斗を呼んでくるよ」

「あっ、はい」


優斗さんどうしたんだろう?物音に気付いて2階から下りて来てくれそうなのに。

もしかして、趣味の音楽かな?

その予想はまさに的中だった。



「…全く、趣味に没頭し過ぎだぞ?優斗」

「別に良いだろ?仕事に支障をきたさないなら」

「あっ、妹尾さん書けたかな?」

「は、はい」


一瞬の隙にその紙を優斗さんに取り上げられ、偽りがないかを確かめる様に目を通していた。


「…優斗さん、嘘じゃないですよ?ちゃんとした住所です」

「うん、分かったよ」


優斗さんはその紙をお父様に手渡すと、急に真面目な顔付きに変わっていた。


「…親父、話がある」

「うん?話?それなら10分ぐらいで済む話にしてくれ。また直ぐに会社に戻らないと」

「あぁ。直ぐ終わる。……桜にも聞いて貰いたい話だ」

「えっ?うん」


聞いて貰いたい話?何だろう?

けれど次の瞬間、思い悩む暇も与えないないぐらいの一言にその場は一瞬、静寂に包まれた…。



「親父、俺は……妹尾さんと結婚するから」



ーーーえっ?!


不意に私はお父様と思わず顔を見合わせた。



「…勿論、彼女の母親の事もある。だからその辺りで親父には頼む事があるが」

「……まぁ、その辺は心配しなくて良いが…。妹尾さんはどうなんだね?優斗と結婚する意志はあるのかな?」

「えっ?いや、私も急でどう答えて良いか…。それにまだ結婚なんて意識した事なかったので」


余りにも急過ぎる。

焦って結婚したばかりに失敗したって話を良く聞くし慎重にならないと。


「…おい、優斗。妹尾さんはまだお前との結婚躊躇ってるみたいだけどちゃんと合意した上で話しろ。ただ一言妹尾さんに」

「はい、何ですか?」

「…もし、家柄の違いが原因で結婚するのを躊躇してるならそれは気にしないで欲しい。君の本心で決めて欲しい」

「はい、分かりました」


まさに私が悩んでたとこを突かれた気分だ。

お父様に演技とかは通用しないね。


再び会社へと戻るお父様を見送り、ようやく優斗さんと二人きりの空間に包まれた。

あっ、やばい。緊張してきた。

頭の中で変な妄想ばかりしてる自分が恥ずかしくなる。


「…それにしてもどうして急に結婚なんて?」

「別に急じゃない。考えてた事だ」

「考えてた事って…。それに私みたいな女1人にどうしてそこまで」

「分からない?…君の事が好きだからだよ。どんどん好きになっていってる、嫉妬するぐらいに」

「嫉妬って?……もしかして?」

「あぁ。やっぱり君に他の男性が近付くのは嫌だと感じた。俺は君と結婚して君を傍に置いときたい。そう思う様になった」

「優斗さんって案外、独占欲強いですね」


私は思わず笑っていた。

今までとは違う優斗さんの表情や気持ちに私は心の中で嬉しさが込み上げていた。


「どうして笑ってるの?」

「…何か嬉しいなと思って」

「嬉しい?」

「うん。……正直、結婚の話には驚いたよ。だって、まだ出会って浅いのに結婚なんて早過ぎると思ったから。けど優斗さんとなら私、結婚したいです」

「……えっ?!……桜、本当に?」

「本当だよ。ただ、母の事が気掛かりで」

「その事は心配しないで。良し!そうと決まれば明日桜のお母さんに挨拶に行かないとな」

「…えっ?!明日?!」



善は急げだ!って意気込んで張り切る優斗さん。


そして、私のウェディングドレス姿を見られる日はそう遅くはないだろう。









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