第15章 特別な存在
ーーとうとう、私…優斗さんと……?
緊張と不安が同時に襲いかかる。
だけど、優斗さんなら何も怖くない。
私は彼に全て委ねる決心を固めた…。
「…桜」
「あっ?!はい!」
「桜はベッドの上で寝て。俺は適当にその辺で寝るから」
「えっ?」
「うん?どうしたの?」
「あの、私はてっきり……その」
私は言葉に詰まる。
「…正直、君の言いたい事は分かってる」
「えっ?じゃ、何で?」
「…お互いそういう気持ちになった時が一番良いと思うよ、やっぱり。特に相手が桜だし、嫌われたくないから」
「何で嫌うの?嫌う訳ないのに…」
「……君は特別だからかな?」
「えっ?」
特別って……私が…?
私の胸はざわめき始めた…。
「…とにかく、先に休んで。俺はシャワー浴びてくる」
そう言って優斗さんは部屋を出る。
何だ、私の早とちり…?
でも、優斗さんも優斗さんだよ。あんな誘っている様な台詞言うから。
だけど、私もその気にさせたのかも?優斗さんの部屋に行くぐらいだし男性からしたら期待しちゃうよね、やっぱり。
私は優斗さんのベッドに腰掛けると布団を捲った。
溜め息を吐くとベッドに横たわり布団を首辺りまで被る。
優斗さんのベッドって結構広いな。
これなら2人ででも寝れそうだけど…?
そしたら一晩中、優斗さんの温もりを感じながらあんな事やこんな事とかも……?!
って、何を妄想してるんだ、私は…?!
ガチャ
ーー?!
「…あれ、まだ寝てないの?」
「…あっ、うん、って言うか寝むれなくて」
「………」
「優斗さんもベッドで一緒に寝ない?」
「?!」
「ベッド広いし2人で寝るには十分だと思うし?」
「……あっ、うん、そうだね」
私は少し身体を右側へとずらすと布団を捲り上げた。
「…どうぞ、優斗さん」
「………」
「優斗さん?」
「…やっぱり、無理かも」
「えっ?」
優斗さんは私の身体を覆い被さる様に乗っかってきた。
両手で私の髪を撫でながら、ゆっくりと唇を重ねる。
お互いの息遣いが激しくなっていく中、優斗さんは私の寝間着のボタンに手をかける。
「…優斗さん、あの私」
「うん?どうしたの?」
ボタンを素早い手つきで1つ、2つと外していく。
そして、優斗さんもまた寝間着を脱ぎ捨てる。
筋肉質の逞しい身体に私の目は釘付けだった。
そして、お互いの肌が密着する…。
「……桜、怖い?」
私は黙って首を振った。
「…不安はあるけど、怖くはない。優斗さんが好きだから」
「…桜、ありがとう」
そう言うと、優斗さんは私の耳元に唇をそっと近付ける。
「あっ!」
私の耳元に彼の吐息が吹きかかった。
「…声、出してどうしたの?もしかして鳥肌でも立った?」
「……?!」
今日の優斗さんは意地悪だ。
分かってて、からかってるんだ。
だけど、好き。
彼と心も身体も結ばれたい。
この日、私達は一線を越えた…。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ガサガサ
うん…?さっきから何…?
私は優斗さんの腕の中で抱かれながら幸せな気分に浸っていた。そんな気分を壊すかの様に耳に入ってくる物音が今の私には耳障りに聞こえていた。
あぁー、もうちょっと優斗さんの腕の中から離れたくない…。
そんな思いは次の瞬間、虚しくも砕け散った…。
ガチャ!
「優斗お兄ちゃん、おはよう!!」
ーーー?!
私達は驚いて一斉に飛び起きた!
そんな私達の姿に紗奈ちゃんは目をぱちくりさせながら見ていた。
紗奈ちゃんが部屋で寝てたのすっかりと忘れてた?!
それに私達は全裸。布団で隠してるつもりでもこの現場は高校生には刺激が強すぎる。
「…紗奈、着替えるから少しだけあっち向いててくれるか?」
「はい、はい。分かりました」
呆れ顔で紗奈ちゃんは私達に背を向けた。
「…桜はまだ寝てて良いから」
「…あっ、うん」
そう言って優斗さんはベッドから身体を起こすと私は不意に昨日の出来事を思い出し、赤面していた…。
あぁー、全て優斗さんに見られた。
特に脂肪がたっぷり付いてるであろう下っ腹も…。
優斗さんは下半身にジーンズのズボン。上半身はシャツを1枚羽織る程度の簡単な着替えだった。
「…紗奈、着替え終わった。こっち向いて良いよ」
この言葉に紗奈ちゃんはくるりと私達の方へ振り返る。
「…全く、優斗お兄ちゃんは油断も隙もないね」
「済まない。紗奈が泊まってるのすっかりと忘れてて」
「まぁ、仲良しなのは良いけどね!それと私、もう帰るね」
「うん?もう帰るのか?って事は、気が済んだのか?」
「…そういう訳じゃないよ。私も彼氏との事、認めて貰えるまで頑張る事にした!」
「そうか。頑張れよ」
「うん!後、桜さん?」
「あっ、うん、何?」
「桜さんって大人の女性として十分魅力あるよ。だから優斗お兄ちゃんと頑張ってね!」
「…あっ、ありがとう!」
優斗さんは紗奈ちゃんを玄関まで見送ると再び、自分の部屋へと戻ってきた。
「…全く、紗奈も口が達者になったな。あれは母親譲りか」
「どうだろうね。でも私は楽しかったよ。……ねぇ、優斗さん?」
「うん?」
「私の事、特別に思ってくれてるって本当?」
「うん」
「それって言葉で言うならどういう気持ち?」
「…うーん、そうだな。言葉では言い表せないぐらい大切な存在かな?」
「………」
何だろう。こんな言葉、親からも一度も聞いた事ない…。
私は自然と溢れ出す大粒の涙が自分の頬を濡らしていた…。




