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第13章 親戚登場


ピリリ、ピリリ


あっ、もう朝か…。

私は目覚ましを止めてパジャマから普段着へと着替える。

半分寝起きだから視界がぼやける。

駄目だ、駄目だ!

私は頬を思い切り両手で叩いた。


良し!オッケー!


私が1階へと降りてくると何やらリビングの方で賑やかな声が響いてくる。

お父様が携帯片手に誰かと電話中みたいだった。


と、不意に私は電話を終えたお父様と視線がぶつかった。


「あっ、妹尾さん、おはよう!」

「はい、おはようございます!」

「実は折り入って頼みがあるんだが……」

「あっ、はい、何ですか?」

「…いや実は急遽、今日私の妹が娘を連れてここへ来るそうだ」

「えっ?そうなんですか?」

「私は仕事があるし、来て貰っても家政婦さんぐらいしか居ないと伝えたら逆に家政婦さんに会ってみたいと言い出して…。だから、少しの時間だろし妹達に会ってくれるか?」

「……それは構わないですけど、私、何もおもてなしとか出来ませんが?」

「それは大丈夫だ。じゃ、妹達の事、頼んだよ」

「…あっ、はい」


と、簡単に引き受けたけど大丈夫か、私?

信頼されるのはとても有り難くて嬉しいけど…。

取り敢えず、粗相のない様に徹底しないと…。




「…桜、大丈夫か?」

「あっ、優斗さん。…私は大丈夫ですよ」

「本当か?まぁ、親戚付き合いで何回か会うけど良い人だから心配ないよ」

「そうですか?なら大丈夫かな…?」


私の不安を取り除く様に優斗さんは私の額に軽く口付けをする。


「ー?!」

「…まだキス慣れてないね?」

「…簡単に慣れるキスなんてあるんですか?」

「……そう言われると困るな。俺は直ぐにキスしたくなる性格だから」

「…私は優斗さんとは違います」


頬を赤らめながら私は優斗さんに抱き付く。

そんな私を優斗さんは優しく抱き締め返す。

あぁ、この抱擁感が堪らなく幸せだった。



仕事へ行く優斗さんを見送った後、私はいつ頃来られるか分からない妹さん達を迎える準備を始めた。

私は一先ず、リビングの部屋にある衣類などを片付けてテーブルとソファーだけにして座りやすい空間を作った。


後は掃除機。

リビングだけじゃなく玄関の廊下の方もと、朝から張り切っていた。


気付くと時計の針が昼の12時を指していた。

この様子じゃ昼過ぎに来られそうね。


私は一旦、一呼吸をして椅子に腰を下ろそうとした瞬間だった。



ピンポーン!


えっ?もしかして妹さん達…?

私は一息付く暇もなく、玄関の方へと足を向かわせる。

そして、玄関の扉をそっと開けた…。



そこに立っていたのはウェーブのかかった艶のある髪に清楚感溢れる40代ぐらいの女性と高校生ぐらいの可愛い女の子だった。

この人達が噂の妹さんとその娘さんに違いないと確信した…。



「…あら、もしかして貴方が家政婦さん?」

「あっ、はい、そうです」

「てっきり年配の方だと思ってたのに、こんなに若い女性だったなんて!あっ、私、相良道子(さがらみちこ)と言います。そしてこの子は私の娘、紗奈(さな)よ」

「あっ、初めまして。私は妹尾桜と言います。えっと、話は取り敢えず中で。…どうぞ」


と、私はリビングへと2人を案内した。



「…綺麗に片付いてるのね」

「これも家政婦の仕事ですから!」


私は優斗さんから予め聞いていたことがある。

それは妹さん達がジャスミンティーを好きな事。


私は2つのカップにジャスミンティーを注ぐ。

ジャスミンの匂いが部屋中に漂っていた。



「…お待たせしました」

「ありがとう。ジャスミンティー好きなの知ってたのね?」

「はい。優斗さんに聞いていました」

「優斗が?」

「はい」


道子さんはカップを手に持ち、軽く揺らした。

ジャスミンの匂いを暫く堪能するとようやく一口、口に含むと道子さんは私の方へにっこりと微笑み返した。


「…可愛い人ね。もしかして優斗の彼女?」

「えっ?!いや、その…」


言って良いのかな?付き合ってるって…。

躊躇ってる私の態度はあからさまに道子さん達にばればれだった。


「隠す必要ないわ。今まで優斗の彼女を何人か見てきたけど、貴方みたいな人は初めてね」

「初めてって?」

「今まで何人か彼女を紹介されたけど、正直言って優斗とは釣り合わない人が多かった。あっ、それは見た目が悪いとかじゃなくてね。だけど貴方は……」


その後の言葉に少し淡い期待を抱きながら待ってたけど道子さんからその言葉を聞く事はなかった。

だけどただ一言だけ私に告げた。


「…優斗と仲良くしてね」

「あっ、はい!」

「ジャスミンティーもありがとう、美味しかったわ。さて、そろそろ失礼するわ。紗奈行くわよ」

「………」

「ちょっと聞いてるの?……紗奈!」


道子さんは紗奈ちゃんのか細い腕をぐっと掴んだ。


「さぁ、帰るわよ!」

「嫌!ここに居る!」

「何を馬鹿な事言ってるの!桜さんに迷惑でしょ!」


断固として母親の言う事を受け入れない紗奈ちゃんの姿を見て私は提案した。


「…あの、道子さん、もし良かったら今日1日紗奈ちゃんをこの家で預りましょうか?」

「えっ?でも迷惑じゃない…?それにお兄ちゃんにも悪いし」

「あっ!そうか。私だけの判断で決めてしまいました。ごめんなさい」

「そんな謝らないで。…じゃ、お願いしようかしら?」

「えっ?」

「お兄ちゃんには私から話しとくから」

「あぁ、ほんとすいません。出過ぎた真似をしてしまって」

「気にしないで。それじゃ紗奈、私行くから!迷惑だけはかけないでね!」


紗奈ちゃんは無言で頷いていた…。


何だろう、この親子……仲違いしてるのかな?

まるで今の私みたい。


そう、紗奈ちゃんが今の私と重なって見えたのだった…。












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