第12章 結婚について
「お前達、何してるんだ?!」
やばい?!
ただの家政婦が社長の息子となんてやはり世間では笑い者扱いだよね。
私は改めて社長の息子と付き合うというのがどういう事か思い知らされた…。
案の定、私と優斗さんはリビングに呼び出される。
これは猛反対される勢いだよな…。
お父様の表情がそれを物語っていた。
私と優斗さんはお互いテーブルから椅子を引き腰を下ろす。
私は目の前に座っているお父様の視線がとても痛くて顔を上げられず俯いたままだった…。
「……優斗、お前は妹尾さんと付き合ってるのか?」
「……はい、付き合ってます」
「そうか。じゃ、妹尾さんにも聞くけど私の息子と本当に付き合ってるのか?」
「…あっ、はい。付き合っています。すいません。家政婦として来たのにこんな事になってすいません」
「親父、彼女は悪くないから。俺の方が先に好きになったんだから」
「………」
優斗さんの言葉で私の胸は熱くなった…。
ぷっ、はっはっはっ!
ただならぬ雰囲気が大きな笑い声のお陰で吹き飛んだ。
「…お、親父?」
「…あっ、悪い。お前達が遊びの付き合いなのか、それとも真剣に付き合ってるのか、確かめただけだよ」
「…まさか、俺達を試したって事か?」
「…うーん、そうなるな!」
「このあほ親父!こっちは何言われるかとひやひやだったんだぞ!」
「…変な付き合いじゃないなら何言われても動じないはずだけどな?」
「……ったく、脅かしやがって」
私は緊張感から解放されたのか全身の力が一気に抜けた…。
ふー、良かった。
私の強張ってた頬も緩んだ…。
「…妹尾さんも済まなかったね。驚かせてしまって」
「…あっ、いいえ。確かに驚きはしましたけど」
「そうだろな。…さて、本題はここから。優斗から多少の事は聞いたが、家庭の事情が大変みたいだね。私としては妹尾さんに住み込みで家政婦の仕事して貰って構わないと思ってる。ただ……君と優斗はその、恋人同士だ。やがて、一緒に暮らす内に結婚って話になるかもしれない。優斗は次期社長になる身なんでお嫁さんになる人にはある程度、仕事の事を覚えて貰って優斗の支えになって貰いたいって考えてるんだが、妹尾さんはどう思う?」
「…えっ?私は」
結婚だなんて、そんな先の事はまだ考えてないよ。
だけど、曖昧な返事は出来ないし…どう答えれば…。
そんな私の横から優斗さんが助け船を出してくれた。
「親父、そんな先の話はまだしないで。先の事はちゃんと考えてるから」
「そうか、分かった。結婚とか言うて焦らせたかな?」
「少しな」
親子の何気ない会話が穏やかな空気を包み込む。
そして、話し合いもこれでお開きとなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
暫くして、私は優斗さんと2階へ上がった。
私の寝室にと優斗さんは自分の母親の部屋でもと提案された。
掃除するのに何回か入ったけど、いつ見ても目を惹くのは大きなふかふかのベッドと三面鏡付きのドレッサー。
私の寝室には勿体ないぐらいの部屋だった。
「…優斗さん、あの、今日はありがとう」
「こちらこそ悪かった、あのくそ親父のせいで」
「気にしないで。後、1つ聞いていい?」
「何?」
「……優斗さんは結婚とかってどう考えたりしてる?」
優斗さんは急に黙り込んだ。
やっぱり、さっきのはお父様を納得させる為のその場の凌ぎの言葉だったのかな?
だけど次の瞬間、良い意味で裏切られた。
「……好きな人が出来たらそりゃ、考えるよ」
「えっ?」
「君は考えないの?」
「私は……家庭があんなだし」
「家庭とか関係なしで考えたら、結婚とかしたい?」
「うん、勿論したいよ」
私は即答していた。
確かに何も考えずに結婚だけしたいとか言われたらしたいに決まってる。一度だけでも純白のドレスを着てみたいっていう憧れは小さい頃からあったけど…。
「…桜」
急に名前を呼ばれただけなのにまだ慣れないというか…ドキドキが止まらない。
「何を考えてる?」
「えっ?何をって」
「顔に書いてる」
「何もないよ!ただ優斗さんと一緒に居れて嬉しいなと思ってただけ」
「…全く、君はそういう事をさらっと言うよね」
「…だって事実だし、それに優斗さんって本当に優しい人ですよね」
「…えっ?俺が?」
「…はい、優しいです」
「…えっと、……それはどうも」
照れ臭そうに前髪をかきあげる優斗さんの仕草が私には可愛く見えた。
気付くと、私の身体は優斗さんの胸の中にすっぽりと収まっていた。
彼の温もりを肌で感じながら、私は幸せな時間を大切にしようと心に誓ったのだった…。




