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第1章 家政婦の仕事始めます

現実恋愛の作品になります。


お金を稼ぐ為に一軒家での慣れない家政婦の仕事を始めながらも恋にも悩み始める1人の少女の苦闘を描いた物語になります。



ーーえっ、嘘?貯金袋がない?!


「お母さん、起きて!!一大事よ!!」


私と母の2人でこつこつと貯めた全財産100万円が入った貯金袋がない?!


「…どうしたのよ、桜。朝早くから」

「呑気な事、言ってる場合じゃないわ!100万円の入った袋が無いのよ!」

「えっ?!嘘でしょ?!」

「だから言ったのよ!100万円もの大金を袋に何か入れて置いたら駄目だって!」

「だって何かあった時の為に置いといた方が良いと思って。それよりあの人は?」

「そんなのお金持ち出して逃げたのよ、あの馬鹿親父!!」



私、妹尾桜(せのうさくら)は今、人生のどん底に突き落とされていた…。

事の発端は父親が1人で会社の事業を立ち上げようとしたが失敗に終わり多額の借金を作ってしまった事だ。


その借金のせいで父親はギャンブルに手を出してしまい人が変わってしまった。そう、毎日酒を飲みながら暴言を吐く始末。

そのせいで私達の貯金は全て借金の足しにされた挙句、狭いマンションに3人暮らしだった。


だけど、私と母、2人でお金を貯め始める事2年。

ようやく100万まで到達したタイミングで私は母に父との離婚を促した。

そして、母も無事に離婚が成立した矢先の事だった。


まさかの現金持ち逃げ…。

恐らく、私達が寝静まった頃合いを見計らって現金を持ち逃げして逃げたに違いない。


「…お母さん、どうする?!親父探し出してひっぱたく?!」

「…もう、良いわよ。どうせ見つからないわ。あの人、逃げ隠れ得意だから」

「……それじゃ、私が困るのよ」


そう、つい最近仕事で大失敗をしてしまい契約を切られ解雇。

今は職探しの真っ最中だった。

けれど、12社受けたが全滅…。

お先真っ暗状態だ…。

大体、母は親父に甘いのよ。だから今まで騙され続けたんだわ。

と、心の中だけで留めていた…。



「…桜、余り焦らないで。私も働いてるし、もしお金が足らなくなってきたらブランドバッグや宝石でも売れば良いわ」

「そんな事しないで良いよ。何とか考えるから」


そう、母が若い頃、働いてた時に購入したブランドバッグや宝石は今なら結構の値が付くらしいと母は言うけど…。

あぁー、駄目、駄目。それだけは避けないと…。


とにかく早く就職しないと!



私は毎日職業安定所へ通う日々を送っていた。


そして今日も職安からの帰り道だった。

いつも通る少し高級感漂う1軒家が立ち並ぶ住宅街。

その中で、ある1軒家の玄関に家政婦募集中と書かれた貼り紙を見つけてしまう。


しかも日給1万円?!

魅力的だな。どうしよう、聞いてみようかな…?

私は後にも先にも引けず立ち往生していると、



「…あの、うちに何か?」

「えっ?」


ここの家主かと思われる私と同年代くらいの若い男性が声をかけてきた。


「…あの!この貼り紙見たんですけど、まだ募集してますか?」

「あぁ、それ俺の親父が貼ったのだけど、結構大変だよ?庭の草むしりもあるし」

「あっ、それは大丈夫です!家事には自信ありますし!」

「……それより君いくつ?」

「…えっ?歳ですか?えっと25ですけど」

「俺より2つ下か。けれど君みたいな若い人が家政婦なんて。もっと良い仕事あるんじゃない?」

「……あっ、それは。……私、家政婦の仕事好きだし!」


とは、言っても、家事は得意ではないが……私は言葉を濁しながらも必死に働きたいと志願していると、ようやく男性の方が折れてくれた様でふーと溜め息を付く…。


「…分かりました。じゃ、入って下さい」


男性は渋々ながらも私を玄関の方へと案内する。


すると、私の目に飛び込んだのは全然手入れされてない庭。

雑草が凄い勢いで伸びている。

これは大変だ。

今から弱音を吐いてる場合じゃない!

私は自分の頬を両手で叩いていた。



と、玄関の扉が開く…。


私が気になったのは大量の埃の山…。

靴箱の回りにも埃が固まっている。

これは全然掃除されてない様だった。


すると、男性は2階に居ると思われる誰かに向かい叫んだ。



「…おい、親父!ここで家政婦したいって人来たけど!」


そして、2階から下りてくる1人のダンディなおじさん。

格好も渋くて中々格好良かった。



「初めまして。化粧品【サラージュ】の会社社長の久世尚人(くぜなおと)です。そして君を出迎えたのは私の息子、久世優斗(くぜゆうと)です」


ーーえっ?社長?!で、出迎えたのが息子?!


「……あっ、始めまして。妹尾桜と言います」

「お、これはまた若い女性だ。取り敢えず、週に5日で良いかな?」

「はい、大丈夫です!」

「それじゃ明日から来てね。内容はまた明日説明します」

「あっ、はい!ありがとうございます!」


えっ?いとも簡単に採用…?

だけど、これでやっていける!

そう思うと、私は肩の荷が下りた…。


「君、大丈夫か?」

「あっ、はい。えっと、優斗さんですよね?明日から宜しくお願いします」


そして挨拶の一環として私は彼に手を差し伸べた。


「うん、何だ?」

「ただの握手ですよ?何だと思いました?」


私は少しだけ意地悪な笑顔を向ける。


「…別に何も思ってないよ。変な想像をするな」


と、少し照れ臭そうに優斗さんは私の手を握り返す。


「…ありがとうございます。ご用があったら何でもおっしゃって下さい!」

「…………」

「どうかされました?……っていうより掃除したのっていつですか?凄い埃の量ですけど」

「…覚えてないけど多分、母親と離婚してからだから半年ぐらい前かな」

「…えっ?離婚ですか?」

「…あぁ、母親が俺の親父に愛想尽きたらしい」

「…そうですか。私のとこも最近離婚したばかりで」


しかも親父にお金持ち逃げされた挙句、私も仕事解雇されたなんて恥ずかしくて嫌でも言えない…。


「そうか。まぁ、離婚するのは親の問題だし俺は関わらなかったけれど。……それよりさっき、ご用があったら何でもおっしゃって下さいって言ってたけど仕事以外の事でも良いって事か?」

「…えっ?仕事以外って?」

「…あっ、今の発言忘れて。冗談」

「…あぁ、そうか、冗談か。……はぁ、良かった冗談で」


私はその場を誤魔化す為に笑い飛ばしていた…。



そして、これから起こる波乱な仕事と恋が始まろうとしていたとはこの時の私は知る由もなかった…。



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