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前世の因縁 2

作者: 飯屋魚

悲しみ、苦しみ

不幸に不運

あなたがこうむっている、その艱難辛苦かんなんしんく


もしか


前世の因縁を引きずっておりませんか?


ほとほとお困りのようでしたら

その因縁、きっぱりとってご覧にいれましょう


いえいえ、お代はいりません


ただ

少々


あなた様の行く末を覗き見させていただけたのなら


それで充分でございます




そう、その女性は言った。


なんとも変哲のない女性だった。

普通の体格の、普通の顔立ちの、普通の声の、女性。


場末の喫茶店だった。


ふ、と思う。

どうしてこんな所にいるんだろう?


如何いかがなさいますか?」


問われて、ボクはこれまでの女性遍歴を思った。


これまでの25年の人生で、ボクは付き合った相手を愛したことがなかった。


中学生の頃から都合5人。

みんな素敵な女性だった。


だけど、その誰にも愛を感じることがなかった。


キスをしても。

肌を合わせても。


ただただ虚しいばかりだった。


そんなボクの気持ちは相手にも伝わってしまうのだろうか?

好きだと熱烈にボクに告白したはずの彼女たちは、5人が5人とも、向こうから別れを切り出す始末だった。


もしか、ボクは同性が好きなのだろうか?


そう考えて男と付き合たこともあるけれど、やっぱり恋をすることはできなかった。


「やってもらえますか?」


ボクは藁にも縋る想いでお願いした。




その男女は深く深く互いを愛していた。

けれど互いの出自が一緒になることを許さなかった。


男は言った。

誰もボクらのことを知らない遠くへ行こう。


女は言った。

では明日。夜明けに何時もの場所で落ち合いましょう。


しかし。


2人は一緒にはなれなかった。


男は遠く海の向こうへと追いやられ。

女は金持ちの家の後妻に迎えられた。




ほどくほどくほどく

絡み合った思念を

おとすおとすおとす

絡み合った思念を




先生。急患です。


当直だった。

読んでいた雑誌を放りだして、ボクは早足に向かった。


そうしてボクは。

彼女に出会って。

生まれて初めての。

恋をした。


ボクと彼女は愛し合った。

深く深く、愛し合った。


彼女が言う。

「もっと早く会いたかったわ」


ボクは言う。

「遅れてしまってゴメン」


彼女が言う。

「わたしが早過ぎたのかもしれないわね」


ボクは言う。

「キミはちょっとだけ早くて。ボクがちょっとだけ遅れてしまった」


でもね。


ボクと彼女は笑い合う。


「「こうして出会えて、嬉しい」」


3日後。

彼女は死んだ。


彼女の95歳の誕生日だった。

前世にて。

待ち合わせをしたその日、女は待ち合わせの時間よりも早く来てしまい。

男は、待ち合わせの時間に遅れてしまった。

その差、のせいで2人は見つかって別れ別れになってしまった。


というのを今世の擦れ違いで表現してみました。

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