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欠皿目 狐のお休み
今日も今日とてがんもどきを供えている。
皿を欠け茶碗から小さな月の絵柄の入ったものにしてみた。こちらも欠けているが。
パーン
パーン
力を入れて二度柏手を打ち顔を上げれば
いつものお狐さんの前だった。
「……ふうん」
澄ましたような顔のお狐さんを見下ろし
にやり、と春子は笑った。
凄みのある顔で笑いながらふん、と鼻から息を吐く。
「疲れちまったってか。いいよ。いつまででもゆっくりしてな」
ふっふっふと笑いながら屋台を引いて
春子は今日も仕事に向かった。
ひゅるりと風が吹き、お狐さんの前掛けがひらひら揺れた。




