第20話『猫耳氷織との甘い夜』
お風呂から出た俺達は、リビングでゆっくりしている両親にお風呂が空いたことを伝えて俺の部屋に戻る。
部屋に戻り、録画してある2人とも好きな日常系アニメを観ながら、俺達はドライヤーで髪を乾かしたり、同じ動きのストレッチをしたり。氷織はスキンケアもしたりした。アニメを観ながらだったので楽しくすることができた。
日常系アニメを見終わったときには、2人とも観ている現在放送中のラブコメアニメの放送時間が迫っていた。せっかくだからと、リアルタイム視聴をしようということになった。放送開始までに俺がアイスコーヒーを用意することに。
アイスコーヒーを飲んだり、花火大会から帰ってくる途中のコンビニで買ったマシュマロを食べたりしながら、氷織と一緒にラブコメアニメをリアルタイムで観ることに。そのときはもちろん、隣同士でクッションに座りながら。
このアニメは漫画が原作で、俺も氷織も持っている。なので、キャラクターやストーリーのことを語りながら楽しく観ることができた。
「面白かったです! 今週のお話もあっという間でしたね!」
「面白かったな。この作品はアニメになっても面白いって思うよ」
「そうですね。あと、リアルタイムで明斗さんと一緒に観られたのも良かったです」
「そうだな。お泊まりならではだよな。このアニメは録画したものを一緒に観ているけど、リアルタイムで観たから特別感があったよ」
「そうでしたね。今日放送されたエピソードを観たら、今回のお泊まりや花火大会のことを思い出しそうです」
「俺もだ」
お泊まりのときにリアルタイムで観るのっていいな。今後も、お泊まりする日に2人とも好きなアニメが放送されるときは、一緒にリアルタイムで観たいなと思った。
「今は午後11時過ぎですか。アニメを観ますか? それとも……他のことをしますか?」
「そうだな……」
明日はバイトもないから早く寝る必要もないし、せっかくのお泊まりだ。氷織とまだまだ楽しい夜を過ごしたいな。
アニメを観るのも良さそうだし、今観たアニメの原作を本棚から出して作品のことを語らうのも楽しそうだ。あとは……肌を重ねるか。テレビや本棚を見ながら考えていると、氷織の荷物や、射的でゲットした黒白のハチワレ模様の猫のぬいぐるみやカチューシャが入っている紙の手提げが視界に入る。
「……そうだ」
「何かありますか?」
「俺からのお願いになっちゃうんだけど……今の水色の寝間着姿での猫耳カチューシャを付けた氷織を見てみたいな。花火大会のときにカチューシャを付けた浴衣姿の氷織が可愛かったからさ」
紙の手提げを見たときに、猫耳カチューシャを付けた浴衣姿の氷織を思い出した。それをきっかけに、寝間着姿の猫耳氷織がどんな感じなのか興味が湧いたのだ。
「なるほどです。いいですよ!」
氷織は柔らかい笑顔で快諾してくれた。
「ありがとう」
「いえいえ」
氷織はクッションから立ち上がって、猫耳カチューシャの箱が入っている紙の手提げがあるところまで向かう。
紙の手提げから、猫耳カチューシャが入っている箱を取り出す。その箱からカチューシャを取り出し、頭に付けた。
「どうですか?」
と言いながら、氷織は俺の方に振り返った。氷織は両手を猫の手の形にして「にゃあっ」と猫の鳴き真似をしてくれる。
「おおっ……」
浴衣姿の猫耳氷織もとても可愛かったけど、寝間着姿の猫耳氷織もとても可愛いな。なので、思わず声が漏れてしまった。
「凄く可愛いよ、氷織。よく似合ってる」
「ふふっ、ありがとうございます。嬉しいです」
氷織はニッコリと笑ってお礼を言う。そのことでより似合っている印象に。この世で一番猫耳カチューシャが似合う人なんじゃないだろうか。
「写真を撮ってもいいかな?」
「はい、いいですよ」
「ありがとう」
俺はスマホで寝間着姿の猫耳氷織の写真を何枚も撮る。両手を猫の形にしたり、射的でゲットしたハチワレ猫のぬいぐるみを抱きしめたりした写真を。
猫耳カチューシャがとても似合っているから、どの写真に写る氷織も可愛いな。また、今取った写真はLIMEで氷織のスマホに送っておいた。
「氷織。写真を撮らせてくれてありがとう」
「いえいえ」
俺は氷織の頭を優しく撫でる。すると、氷織は柔らかい笑みを浮かべて。可愛いなぁ。氷織の撫で心地もいいし、まるで本当の猫を撫でているようだ。
「可愛い猫氷織だ」
「ふふっ。そう言ってくれて嬉しいです……にゃあっ」
「ははっ」
「……猫耳カチューシャを付けて、明斗さんに撫でられていたら……猫ちゃんのように撫でてもらいたくなってきました。いいですか?」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございますっ」
氷織は嬉しそうにお礼を言った。
今は氷織と向かい合っている体勢なのもあり、まずは氷織の頬に両手を添えて、指の腹を使って氷織の顔を優しく撫でることに。猫カフェでこういう撫で方をしたことがある。
指の腹で撫でられるのが気持ちいいのだろうか。氷織は「ふふっ」と声に出して笑う。
「気持ちいいか?」
「はいっ。気持ちいいにゃ~」
「それは良かった」
こういう撫で方を氷織にしたことは全然なかったから、氷織がどう感じるかちょっと不安だったけど、気持ち良さそうで良かった。
「いい子だね~」
猫を撫でるときのように、氷織にそんな言葉を掛ける。
すると、氷織は嬉しそうな笑顔で「にゃ~ん」と返事をしてくれて。物凄く可愛いんですけど。正式に付き合い始めてから3ヶ月以上経つけど、氷織の新たな魅力を一つ発見できたな。猫耳氷織……かなりいいぞ。
「本当に可愛いぞ。あと、氷織も俺に撫でてほしいところがあったら遠慮なく言ってくれていいからな」
「分かりました。じゃあ、猫っぽく背中を撫でてほしいにゃあっ」
「ああ、いいぞ」
「では、撫でやすいようにベッドへ……」
そう言うと、氷織はベッドに上がって、うずくまったような体勢に。
「香箱座りっぽいな」
「うつぶせでもいいかなと思ったのですが、猫っぽい姿勢になってみたくて。それでうずくまってみました」
「なるほどな。じゃあ、背中を撫でるぞ」
「にゃあっ」
猫っぽく返事する氷織。猫耳カチューシャを付けて、顔を撫でられたことで精神的に猫モードになってきているのだろうか。
俺は氷織の背中を優しく撫でる。ロングヘアなので氷織の柔らかい髪の感触も感じられて。だから、まるで本当の猫っぽく感じられる。
「どうだ? 氷織」
「気持ちいいにゃあっ。こういう体勢で撫でられることは全然ないので、本当に猫になったみたいです」
「ははっ、そっか。良かった」
「ふふっ。あと、腰のあたりをポンポンと叩いてほしいです」
「それをされるのが好きな猫っているよな。猫カフェでも喜んでいる猫がいたよ。分かった」
俺はそれまで背中を撫でていた右手を腰のあたりまで移動させて、ポンポンと優しく叩く。
「どうだ?」
「いいにゃあっ。頭をポンポン叩かれるのは気持ちいいですけど、腰を叩かれるのも気持ちいいですね。これが好きな猫ちゃんがいるのも納得です」
氷織は可愛い笑顔でそう言ってくれる。
腰を叩くのも気に入ってくれるなんて。まるで氷織が本当の猫のように思えてくるよ。もし、氷織が猫になったら、オスメス問わず猫から人気を集めるんだろうなと思った。
あと、今の光景を第三者が見たら……俺が変態に思われそうだ。ベッドの上にうずくまる猫耳カチューシャを付けた恋人の女の子の腰のあたりを叩いているから。
「あの、明斗さん。明斗さんに撫でられたり、叩かれたりするだけでなくて、私も明斗さんに猫っぽい振る舞いをしたいです」
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます」
氷織は嬉しそうに言うと、ベッドから降りて俺のことを抱きしめてくる。その流れで俺の胸に頭をグリグリと押しつけてきて。動物系の動画やバラエティ番組で、飼い主に頭をグリグリ押しつける猫を見たことがある。あと、「にゃあっ」と猫の鳴き真似もしてくるので、本当に猫っぽい。
そういえば、夏休み中に氷織の家に泊まったときは、氷織の頭に顔を埋めて匂いを嗅いだっけ。あれをやるか。氷織は猫っぽく振る舞っているし、猫吸いって感じで。そう決めて、俺に押しつける氷織の頭に顔をそっと埋めて深呼吸する。
お風呂から出たばかりなので、氷織の髪はとても柔らかく、シャンプーの甘い匂いが感じられて心地良い。
「ふにゃあっ」
頭を押しつけるのに集中していたからか、氷織はそんな可愛い声を漏らして、体をピクッと震わせた。
「あ、明斗さん?」
「猫吸いをしてみた。今の氷織は猫みたいだから。この前のお泊まりでもやったし」
「ふふっ、そうでしたね。突然のことだったのでちょっと驚いちゃいました」
「そっか。可愛い反応だったよ」
「……ちょっと照れくさいですけど、良かったです」
そう言うと、氷織は俺の胸から顔を離して、俺を見上げながら笑ってくれる。上目遣いや頬をほんのりと赤くさせているところを含めて本当に可愛い。そんな氷織の頭を優しく撫でると、氷織はニコッと笑いかけてくれて。その直後、
――ペロッ。
「おっ」
氷織に首筋をちょっと舐められた。まさか舐められるとは思わなかったので、思わず声が出てしまった。
「ひ、氷織……」
「……猫は愛情表現だったり、仲間だと認めたり、何かしてほしいって甘えたりするときなどに人を舐めるらしいです」
氷織は妖艶な笑みを浮かべながらそう言ってくる。その笑顔が可愛いのはもちろん、猫耳カチューシャを付けているし、首筋を舐められたのもあって凄くドキッとさせられる。
「猫のように明斗さんと触れ合ったら……ドキドキしてきて、えっちしたくなってきました。……明斗さんとえっちしたいです」
俺を見つめながら、甘い声でえっちの要求をしてくる氷織。それがまた可愛くてドキッとさせられる。
「えっちしたくて、俺の首筋を舐めたんだ」
「そうです……にゃんっ」
はにかみながらそう言い、猫の鳴き声を出す氷織。可愛いなぁ。
「分かった。しようか。ただ、猫耳氷織が可愛いから……猫耳カチューシャを付けたままでしてくれるかな?」
「もちろんですっ」
「ありがとう、氷織」
氷織の頭を優しく撫でて、俺は氷織にキスをした。
それからは主にベッドの中で、猫耳カチューシャを付けた氷織と肌を重ねた。
これまで肌を重ねたことは何度もある。ただ、猫耳カチューシャを付けた氷織とするのは初めてだから新鮮で。
猫耳カチューシャを付けているからか、氷織は猫っぽく「にゃんっ」などといった可愛い声を漏らして。首筋や胸元などを舐めてきたり、甘噛みしたりすることもあって。積極的に動くときもあって。それらのことに興奮させられる。
もちろん、いつものように、互いにキスし合ったり、「好き」などという言葉を言ったりしながら、氷織との気持ちの良い時間を過ごしていった。
「今回も気持ち良かったですね」
「気持ち良かったな」
何回か肌を重ねた後、俺達は裸の状態で向かい合う形でベッドに横になっている。ちなみに、今も氷織は猫耳カチューシャを付けたままだ。
「肌を重ねるときの氷織はいつも可愛いけど、今日は猫耳カチューシャを付けているから、いつもとは違った可愛さがあったな。凄く良かったよ」
「ふふっ、良かったです。私も猫ちゃん気分になって、いつも以上に明斗さんに色々なことをしちゃいました」
「そうだったな。舐めたり、甘噛みしたりしてきて可愛かったぞ。たまに激しく動いたこともな」
「凄く気持ち良かったので。明斗さんもたまに激しいときがありましたよ」
「凄く気持ち良かったし、猫耳氷織がとても可愛かったからな。それに興奮して」
「そう言ってもらえて嬉しいですっ」
えへへっ、と声に出して笑うと、氷織は俺に身を寄せてきて、俺の胸に顔を埋めてスリスリしてくる。猫っぽくて可愛いなぁ。そう思いながら、俺は氷織の頭を優しく撫でる。
体をたくさん動かした後だけど、氷織から直接伝わってくる強い温もりが心地いい。
少しの間、俺の胸に顔をスリスリした後、氷織は胸から顔を離す。氷織は満足そうな笑みを浮かべていた。
「お泊まりをするのでえっちすると思っていましたが、まさか猫耳カチューシャを付けてするとは思いませんでした」
「俺もだよ。うちには猫耳カチューシャはないし、射的でゲットするとは思わなかったし。ただ、氷織がカチューシャを付けてくれたから、今日がより思い出深い一日になったよ」
「私もですっ。猫のように明斗さんと戯れるのも楽しかったですし」
「俺もだ。……これからもたまに、肌を重ねるときに猫耳カチューシャを付けてくれると嬉しいな。凄く可愛かったし」
「分かりました……にゃっ」
氷織はニコッとした笑顔でそう言い、左手を猫の形にしてくれる。滅茶苦茶可愛いな、俺の恋人。猫耳カチューシャを付けた氷織と戯れたり、肌を重ねたりしたことで氷織がより魅力的になったよ。
「ありがとう、氷織」
お礼を言って、俺は氷織にキスをした。
肌を重ねているときに、猫耳氷織とたくさんキスをしたけど、キスは何回してもいいものだなと思う。
数秒ほどして唇を離すと、氷織は嬉しそうな笑顔を向けてくれる。
「ふああっ……」
氷織は声に出しながらあくびをする。猫耳を付けているのであくびする姿もいつも以上に可愛いな。
「たくさん体を動かしましたから眠くなっちゃいました。今日は花火大会にも行きましたし」
「そっか。俺も眠くなってきた。バイトもあったからな」
「そうですか。では、寝ましょうか」
「そうだな」
「……猫耳カチューシャは外しておきましょう。寝ている間に、何かの拍子に壊してしまうかもしれませんし」
「それがいいな。ローテーブルに置いておくか」
「はい」
テーブル側に俺が横になっているので、俺は氷織の頭から猫耳カチューシャを外して、ローテーブルに置いた。
「えっちしている間もずっとカチューシャを付けていたから、猫耳がない氷織を見るのが久しぶりに思える」
「ふふっ、そうですか」
楽しげな様子でそう言うと、氷織は俺の左腕をそっと抱きしめてきた。氷織の温もりや体の柔らかさが直接感じられて気持ちがいい。
「おやすみなさい、明斗さん」
「おやすみ」
夜の挨拶をすると、氷織からおやすみのキスをしてきた。
氷織は唇を離すと、そっと目を瞑る。あくびをするほどなのもあってか、氷織はすぐに気持ち良さそうな寝息を立て始める。寝顔がとても可愛い。
ベッドライトを消して、俺も目を瞑る。
バイトがあったり、ついさっきまで氷織と一緒に体を動かしていたりしたから疲れもあるし、氷織と寄り添って寝るのが気持ちいいのもあり、すぐに眠りに落ちていった。