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第5話『代理購入品をお渡し』

「これで全て廻り終わりました」

「お疲れ様、氷織」


 午後1時過ぎ。

 これで、氷織のお目当てである5つのサークルを全て廻り終わった。


「5つサークルを廻って全て購入できました! これまで、全てを買えたことはなかったので嬉しいです! 沙綾さんからも頼んでいた同人誌を代理購入してもらえましたから! それに、沙綾さんから頼まれていた新刊セットも買えましたし!」


 氷織……とても嬉しそうだ。今日一番の笑顔になっている。自分のお目当てのものだけでなく、葉月さんに頼まれていた新刊セットを買えたことも嬉しがるのは氷織らしいと思う。

 ちなみに、2つ目に行った『よみつき』というサークルの新刊を購入した直後に、葉月さんから氷織が代理購入を頼んだ同人誌を買えたとメッセージをもらった。そのときも氷織はかなり喜んでいた。


「良かったな、氷織」

「はいっ! あと、明斗さんが同人誌に興味を持ってくれて、何冊も買ったのも嬉しかったです」

「GLは好きな方だからな」


 廻ったサークルの中にはGLの同人誌を頒布しているサークルがいくつかあった。試し読みしたら結構良かったので、それらのサークルの同人誌は俺も購入したのだ。購入した同人誌を読むのが楽しみだ。


「じゃあ、全部廻り終わったから、葉月さんと火村さんに会いに行くか」

「そうですね。2人とは、東展示棟のコンコースの1番ホールの入口近くで待ち合わせすることになっています。行きましょう」

「ああ」


 俺達は火村さんと葉月さんとの待ち合わせ場所に向かって歩き出す。

 コアマが始まってから3時間以上経つけど、ホールの中は多くの人で賑わっている。

 5番ホールの出入口からコンコースに出ると、ホールと同じで人がたくさんいて。イベントが始まってから時間が経っているからか、同人誌を読んだり、グッズを眺めたりする人も結構いる。また、お昼過ぎの時間帯というのもあり、おにぎりやパンなどの昼食を食べている人もいて。楽しそうにしている人が多く、いい雰囲気だ。

 待ち合わせ場所である1番ホールの入口周辺が見えてきた。その場所にも多くの人がいる。火村さんと葉月さんはいるだろうか。今のところは姿が見えないけど。

 それからすぐに、俺達は1番ホールの入口前に到着する。


「火村さんと葉月さんは……いないな」

「いませんね。まだ同人誌を買い終わっていないのかもしれません。沙綾さん、6つか7つほど廻ると言っていましたから」

「そうなのか。じゃあ、今も買い物をしているかもしれないな」

「ですね。私達はここにいるとメッセージを送りましょう」

「そうしよう」


 氷織と俺は俺達4人のグループトークに、買い物が終わって待ち合わせ場所にいる旨のメッセージを送った。

 氷織がメッセージを送ってすぐ、火村さんと葉月さんから了解の返事が届く。葉月さんからは『最後のお目当てのサークルに行っている途中ッス』というメッセージも送られた。


「氷織の推測通り、今も買い物中か」

「ですね。ただ、あと一つだそうですから、そこまで時間はかからないかと思います」

「そっか。俺達はここで待っていよう」

「そうですね」


 それから、氷織と俺は2人とも買ったGLの同人誌を一緒に読んだり、小腹が空いたので持参したお菓子を食べたりして、火村さんと葉月さんが来るのを待った。これまで、同人誌を読んだことは全然ないので新鮮だし、結構楽しい。

 4人でメッセージをやり取りしてから20分ほどして、


「氷織、紙透、待たせたわね」

「ひおりん、紙透君、お待たせッス」


 火村さんと葉月さんがやってきた。サークルを廻ったのが楽しかったのか、2人とも明るい笑顔だ。また、どこかのサークルの購入特典なのか、2人は美麗な男性が描かれた紙の手提げを持っている。


「2人ともこんにちは」

「こんにちは、沙綾さん、恭子さん。無事に会えて良かったです」

「ええ! コアマの会場で氷織に会えて嬉しいわ! その服もポニーテールもよく似合っているわ!」

「ありがとうございます。恭子さんのジーンズパンツとノースリーブの縦ニットも似合っていますよ。スラックスにパーカー姿の沙綾さんも」


 確かに、2人の服装はよく似合っていて可愛いな。だから、俺は「そうだな」と2人を見ながら頷いた。


「ありがとう! 氷織!」

「どうもッス!」


 火村さんと葉月さんは嬉しそうにお礼を言う。

 火村さんはとても嬉しそうに氷織のことを抱きしめる。火村さんの場合は氷織に服装を褒められたことよりも、ここで氷織に会えたことの嬉しさの方が大きいかもしれない。


「氷織あったかい。汗混じりのいい匂いがする……」


 甘い声でそう呟くと、火村さんは「うへへっ」と厭らしさも感じられる声で笑う。火村さんは多幸感に満ちた様子になっていて。人がいっぱいいる場所でも火村さんはブレないな。ただ、そんな火村さんの頭を氷織は優しい笑顔で撫でていた。


「沙綾さん。私が代理購入を頼んだ同人誌は買えたと教えてくれましたが、それ以外の同人誌はどうでしたか?」

「全部で7つを廻って、6つのサークルの新刊を買えたッス。全部買えることの方が珍しいッスし、ひおりんの代理購入も頼まれた一番買いたい同人誌も買えたので、個人的には上々の結果だと思っているッス」


 葉月さんは爽やかな笑顔でそう言った。買えなかった同人誌はあったけど、本人が満足そうにしているなら良かった。あと、氷織が頼んだ同人誌を買えたことが上々な結果の理由の一つであることに葉月さんの優しさを感じる。


「そうでしたか。上々だと思える結果になって良かったです」


 氷織はニコリとした笑顔でそう言った。


「良かったな、葉月さん」

「どうもッス! ひおりんはどうだったッスか?」

「お目当てのサークルの同人誌は全て買えました!」

「それは良かったッス!」

「ありがとうございますっ。それに、明斗さんと初めて一緒に同人イベントを廻ったので楽しいデートになりました」


 氷織はニコニコしながらそう言ってくれる。俺とのデートが楽しいと友達に言ってくれるのって凄く嬉しいな。


「楽しかったな。氷織と一緒にサークルを廻って、俺もGLの同人誌を何冊か買ったよ」

「おぉ、それはいいッスね!」

「あたしも沙綾目当てのサークルの同人誌を何冊か買ったわ。BLもGLも。氷織が沙綾に買うのを頼んだ同人誌もね!」

「そうですか! 夏休み中にその同人誌のことで一緒に語らいたいですね」

「そうねっ!」


 火村さんはとっても嬉しそうな笑顔でそう言った。

 火村さんも同人誌を買ったか。氷織や葉月さんほどではないけど、火村さんもBLやGLは好きだからなぁ。あとは氷織と同人誌で語りたくて、氷織が葉月さんに代理購入を頼んだ同人誌を自分も買ったのかもしれない。


「沙綾さん。代理購入したものを渡しますね。それと、沙綾さんに買っていただいた同人誌の代金も」

「了解ッス。あたしも渡すッス」


 氷織と葉月さんは代理購入を頼んだ同人誌と代金を渡し合った。

 2人とも、代理購入を頼んだ同人誌を手に取ると、とても嬉しそうにしていて。欲しかったものを買ってもらって、実際に手にできたのだから嬉しいよな。2人のすぐ側で、火村さんが笑顔でいるのを含めてとてもいい光景だ。


「代わりに買っていただいてありがとうございます、沙綾さん!」

「いえいえ! こちらこそありがとうッス、ひおりん!」


 お互いにお礼を言い合うと、氷織と葉月さんは笑顔で抱きしめ合った。氷織の彼氏として、葉月さんの友人として本当に良かったなって思う。

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