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第8話『ニャンて可愛い来客』

 俺と和男によるクロールレースが終わった後は、波打ち際でビーチボールを使って6人全員で遊んだ。全員でボールを何回落とさずにパスできるかチャレンジしたり、3対3に分かれてビーチバレーボールをしたりして。

 ビーチバレーは俺&氷織&火村さん、和男&清水さん&葉月さんというチーム分けで対決。結構いい勝負になって盛り上がった。ビーチバレーでも和男に負けたけど、氷織と火村さんと協力プレイができたし楽しかったな。



 ――ぐううっ!

 みんなで遊び終わった直後、和男のお腹が盛大に鳴った。


「みんなと一緒にビーチボールでたくさん遊んだから、腹減ってきたぜ!」


 わははっ! と、和男は豪快に笑う。お腹が凄く鳴ったのもあって、俺達5人も自然と笑い声が出る。

 和男のお腹の音を聞いたから、俺もお腹が空いてきたな。氷織達と水をかけ合ったり、和男とクロールレースをしたり、全員でビーチボールを使って遊んだりと体を結構動かしたからな。その間に口にしたのはスポーツドリンクぐらいだし。

 バッグに入れてある腕時計で時刻を確認する。


「今は……12時半過ぎか」

「もうお昼時ですね」

「学校なら、もうすぐで昼休みの時間ッスね」

「それなら、倉木のお腹が凄く鳴ったのも納得だわ」

「いっぱい遊んだもんね、和男君」

「おう! じゃあ、みんなで昼飯にしようぜ!」


 和男の提案に俺を含む他の5人は全員賛成した。

 お昼ご飯は海水浴場の近くにあるコンビニで買って、レジャーシートで食べることに決めている。お弁当持参は魅力的だけど、荷物になったり、真夏なので衛生面の不安があったりする。海の家は海水浴らしさを感じるけど、混んでいて食べられるまでに時間がかかるかもしれないと思ったからだ。

 荷物を見るためにも、全員一緒には行かず、ビーチバレーでのチームごとに分かれて行くことにした。まずは和男、清水さん、葉月さんがコンビニに向かった。


「さてと。沙綾達が戻ってくるまではゆっくりしていましょう。たくさん遊んでちょっと疲れちゃったし」

「海やプールに行くと、気付かない間にたくさん遊んじゃいますよね」

「この前のプールデートでもそうだったな」

「そうでしたね」


 ふふっ、と嬉しそうに笑う氷織。

 プールや流れるプールに入ったり、ウォータースライダーを何度も滑ったり、氷織にクロールを教えてもらったり。プールデートは休憩を全然入れずに遊んだっけ。


「ねえ、氷織。沙綾達が戻ってくるまでの間だけ、氷織に膝枕してもいい? そうしたら、疲れが早く取れそうな気がするの」


 火村さんは猫なで声で氷織にお願いしている。


「いいですよ、恭子さん」

「ありがとうっ!」


 明るい笑顔で火村さんはお礼を言う。この様子を見る限り、氷織の膝枕は必要ない気がするけど……氷織が快諾しているから何も言わないでおこう。

 氷織は正座して、右手で太ももをポンポンと叩く。

 失礼します、と言って、火村さんは仰向けの状態で氷織の太ももに頭を乗せた。


「あぁっ、氷織の生太もも……柔らかくて、ほんのりと冷たくて気持ちいい……」


 火村さんは幸せそうに言う。


「それは良かったです」


 氷織は優しい笑顔になり、火村さんの頭を撫でている。そのことで、火村さんは多幸感に満ちた様子に。……う、羨ましい。夏休みの間に俺も氷織に膝枕してもらおう。


「見上げれば、黒いビキニに包まれた氷織の大きな胸。その先には氷織の笑顔があって。最高の眺めねっ!」


 はあっ、はあっ……と興奮した様子になる火村さん。まったく、火村さんらしいというか。この光景を見るのが膝枕してほしいと頼んだ一番の理由だったんじゃないか?

 火村さんの顔、段々と赤くなってきている。このままだと熱中症になってしまうかもしれないな。この顔の赤さが続いたら、海水を顔にぶっかけてあげよう。今日の海水はちょっと冷たいし。


「にゃ~ん」


 うん? 猫の鳴き声が聞こえたような。

 氷織に膝枕してもらったことが幸せすぎて、火村さんが猫の鳴き声を出したのかと思ったけど……目を見開いていることからして、それは違うようだ。


「にゃぉ~ん」


 猫の鳴き声が再び聞こえた次の瞬間、氷織のすぐ側に三毛猫がいることに気付いた。綺麗な毛並みで、毛の色もはっきりしている可愛い猫だ。


「あら、三毛猫ちゃん。可愛いですっ」

「可愛い猫ね。首輪がないってことは、ノラ猫の可能性が高そうね」

「そうだな。海水浴場に猫っているんだ」

「以前見た猫ちゃんのドキュメンタリーに、砂浜を歩いたり、のんびりしたりする猫ちゃんの場面がありましたね。その映像では今のように人はあまりいませんでしたが」

「そうなんだ」


 猫は水が苦手って聞くし、砂浜にはいないものだと思ってた。

 三毛猫は氷織にさらに近づき、「な~う」と可愛い声を上げながら、氷織の右の脇腹に頭をスリスリしている。


「きゃっ、くすぐったいですよ~」

「氷織にスリスリするなんて。この猫、見る目があるわね」


 氷織と火村さんは楽しげな様子でそう言い、氷織は三毛猫の頭を、火村さんは背中を優しく撫でている。三毛猫も可愛いし、猫を撫でる2人も可愛いから凄く微笑ましい気分に。

 人がたくさんいる海水浴場に来て、氷織と火村さんにいっぱい撫でさせて。この三毛猫は人慣れしているのだろう。


「にゃんっ」


 可愛らしく鳴くと、三毛猫は氷織の右の太ももに顔を乗せる。氷織の太ももが気持ちいいのか、それとも2人に撫でられた後なのか、三毛猫はまったりとした雰囲気に。


「あらあら、三毛猫ちゃんも膝枕ですか」

「気持ち良さそうな太ももだと思ったのよ。もしかしたら、あたしと同じで氷織のことが大好きなのかもね」

「ふふっ、そうだと嬉しいですね」


 優しい声色でそう言うと、氷織は右手で猫を、左手で火村さんの頭を優しく撫でる。優しい笑顔を見せているし、氷織が聖母のように見えてくるよ。

 膝枕と頭ナデナデが気持ちいいのか、三毛猫は「にゃぅ~ん」と甘い声で鳴いている。それを真似して、火村さんも「にゃ~ん」と甘い声を漏らす。三毛猫はメスがほとんどと聞くし、火村さんとこの猫は似たもの同士と言えそうだ。

 自分に甘えてくる一匹と一人に氷織は「ふふっ」と朗らかに笑う。心温まる光景だ。


「せっかくだから写真撮ろうか? 海水浴中に猫が来るなんてこと、あまりないことだろうから」

「いいですよ。その写真を送ってください」

「あたしにも!」

「ああ」


 俺はバッグからスマホを取り出し、氷織と火村さん、三毛猫のスリーショット写真を撮った。ピースサインをする氷織と火村さんはもちろん、目を開けてこちらを見てくる三毛猫も可愛らしい。

 今撮った写真は6人のグループトークのアルバムにアップしておいた。


「本当に可愛い三毛猫だな」


 俺は三毛猫の頭を優しく撫でる。柔らかい毛だから撫で心地のいい猫だ。

 俺に撫でられるのが気持ちいいのか、ゴロゴロと喉を鳴らしている。氷織と火村さんのナデナデは気に入って、俺だけ嫌がられることがなくて安心した。


「ただいまッス!」

「ただいま! 実際に見ると、その三毛猫可愛いね!」

「そうだな!」


 和男、清水さん、葉月さんがコンビニから帰ってきた。3人ともコンビニの袋を持っている。和男だけ持っている袋のサイズが大きいけど……たくさん買ったのかな。あと、3人は俺がさっき送った写真を見たんだな。

 俺、氷織、火村さんは「おかえり」と言った。

 3人はレジャーシートに入り、清水さんと葉月さんは三毛猫の頭を撫でている。2人にも撫でられてご機嫌になったのか、三毛猫はレジャーシートの上でゴロンゴロンと転がる。


「おおっ、いい子ッスね~」

「そうだね。氷織ちゃんの脚に顔を乗せてたし、人懐っこい猫なのかもね」

「そうかもしれませんね。……では、沙綾さん達が戻ってきましたし、私達もコンビニに行きましょうか」

「そうだな」

「行きましょう」


 俺は水着の上にパーカーを着て、スマホと財布を持ってレジャーシートの外に出る。

 氷織と火村さんもそれぞれパーカーを着た状態でシートから出る。2人のパーカーはファスナー付きで、氷織は胸元までファスナーを上げており、火村さんは全開。

 氷織と火村さんと一緒にコンビニに向けて出発する。


「あの階段を上がって歩道に出たら、コンビニが見えるよ。去年も行ったことあるんだ」

「そうなんですね」

「頼りになるわ。……それにしても、お昼頃になったから、あたし達が来たときよりも海水浴客が多いわね」

「そうですね。このエリアもレジャーシートやビーチパラソルで場所を確保されているところが多いですし」

「そうだな」


 俺達が来たときよりも賑わいを見せている。この海水浴場は海の家は複数あるけど、どこもお客さんが多くて、食べるまで結構待つことになりそうだ。

 近くにある階段を上がり、歩道に出る。

 俺の記憶通り、歩道に出ると道路の向かい側に萩窪や笠ヶ谷にもある大手チェーンのコンビニエンスストアが見えた。


「本当に階段を上がったらコンビニが見えるわね」

「ありましたね。……あそこの横断歩道を渡って行きましょう」


 俺達は近くにある横断歩道の前まで向かう。その横断歩道は信号があり、今は赤信号。青になるまで気長に待とう。


「いやぁ……氷織の水着姿もいいけど、水着の上にパーカーっていう姿もいいわぁ。そそられるし、ちょっとエロさも感じるわ」


 火村さんはにやけながらそう言い、すぐ隣から氷織のことを見つめている。氷織のことになると本当に色々なことを言うなぁ、この子は。そそられて、ちょっとエロさを感じるのは分かるけど。

 当の本人である氷織は特に嫌悪感は見せず、「ふふっ」と上品に笑う。


「ありがとうございます。恭子さんのパーカー姿も似合っていますよ」

「ありがとう!」

「明斗さんは……私のパーカー姿はどう思いますか?」

「……凄く似合ってるよ。新鮮でいいと思う」

「ありがとうございます! 明斗さんもパーカー姿素敵ですよっ」


 えへへっ、と可愛らしく笑い、俺に身を寄せてきた。そのことでパーカー越しに氷織の温もりが伝わってきて。直射日光に当たっているけど、氷織の温もりが心地良く感じられた。

 その後すぐに横断歩道の信号が青になり、俺達は横断歩道を渡り、コンビニへ向かった。


「あぁ、涼しいわ!」

「気持ちいいですね!」

「快適だなぁ」


 コンビニの中に入ると、涼しい空気が俺達の身をすぐに包み込む。3時間近く屋外にいて、蒸し暑さに体が慣れてきていた。それでも、エアコンのかかっている空間に入ると凄く快適に思える。

 コンビニを見渡すと、俺達と同じ考えなのか、水着にパーカーやTシャツを着た人がちらほらといる。


「ビーチサンダルを履いたり、パーカーを着たりしていますが、水着を着た状態でコンビニに行くのは初めてですからちょっと緊張しますね」


 はにかみながら言うと、氷織は俺の手を今一度しっかりと握ってくる。


「その気持ち分かるな。俺は何度も経験しているけど、初めて来たときはこんな格好でいいのかなって緊張したよ。そのときも海水浴シーズンで、ビーチの近くのコンビニだったけど」

「あたしも分かる。普段と違う格好だし、こんなに脚を露出することもないし」

「お二人も私と同じだったんですね。さあ、お昼ご飯を買いましょうか」


 その後、俺達はおにぎり、パン、麺類、あとは飲み物コーナーを見ていく。お腹が空いているから、どれも美味しそうに見えるなぁ。

 ただ、暑い屋外で食べるので、冷たい食べ物がより美味しそうに見えて。少し考え、俺は冷やし担々麺を買うことに決めた。あとは飲み物で、ペットボトルのミネラル入り麦茶を購入することに。

 また、氷織は冷やし中華とミネラル入り麦茶、火村さんはミックスサンドと野菜ジュースを購入した。

 コンビニを後にして、レジャーシートに戻ると、和男達は三毛猫と戯れながら俺達のことを待ってくれていた。ちなみに、三毛猫は葉月さんの膝の上でまったりとしている。


「この猫、凄く可愛いッスね~!」


 えへへっ、と葉月さんは三毛猫にデレデレ。幸せそうに撫でている。こんなにもデレデレしている葉月さんは見たことない。

 氷織と火村さんと一緒にレジャーシートに戻り、俺達6人は三毛猫を囲むようにして座る。ちなみに、座っている場所は俺から時計回りに和男、清水さん、葉月さん、火村さん、氷織だ。


「それじゃ、昼飯食うか! いただきます!」

『いただきまーす』


 和男の号令で俺達はお昼ご飯を食べ始める。

 俺のお昼ご飯は冷やし担々麺。買ってきたばかりだから麺も辛味噌ダレも冷たくて美味しい。汗を掻いたから、タレの味がちょっと濃いめなのもいいな。これならスタミナがつきそうだ。

 また、途中で氷織と一口交換した。氷織の冷やし中華はさっぱりとした酢醤油味で美味しいな。氷織も俺の冷やし担々麺を美味しく食べてくれた。

 三毛猫はシートの真ん中でぐっすりと寝ている。食べ物の匂いにつられて誰かのところに行くと思ったんだけどな。もしかしたら、誰かから餌をもらった後なのかもしれない。

 コンビニで買ったご飯も美味しく、三毛猫もずっといるので、とても楽しい昼食の時間になった。

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