第3話『スクール水着姿を見てみたいですか?』
氷織とアイスティーを飲みながら、ゆっくりとした時間を過ごしていく。
「ところで……明斗さん。海へ遊びに行くことが決まったのをきっかけに考えついたことがあるのですが」
「どんなこと?」
「……明斗さんって、私のスクール水着姿に興味はありますか?」
「へっ?」
予想外のことを言われたので、思わず間の抜けた声が出てしまった。
一瞬、訳が分からなかったけど、「スクール水着姿」というワードが段々と魅力的に感じてきた。それと同時に全身が熱くなってきて。
「興味……あるよ。もしかして、今度行く海水浴ではスクール水着を着るつもりなのか?」
「い、いいえ! 海ではこの前のプールデートで着た黒いビキニを着ますよ! ただ、明斗さんとは中学まで別の学校でしたし、高校では水泳の授業がありませんから、明斗さんに私のスクール水着姿を見せたことがなかったなって」
「確かにそうだな」
お試しに付き合っている頃に見せてもらった氷織のアルバムに、水着姿の氷織が写っている写真が何枚か貼られていた。だけど、それらは家族や友達とのレジャーのときの写真だからスクール水着ではない。なので、氷織のスクール水着姿は未知の世界だ。
「この部屋に、中学の水泳の授業で着ていたスクール水着がありまして。ですから、この部屋で明斗さんにスクール水着姿を見せたいなって。最後に着たのは2年前ですが、たぶん今も着られるかと」
「そうなのか」
「はい。……見てみたいですか? 私のスクール水着姿」
「凄く見たいです」
食い気味に答えてしまった。だって、黒いビキニ姿がとても似合う氷織だよ? スクール水着姿がどんな感じなのか物凄く興味ある。それに、中学まで一緒だった人達が見たことのあるスクール水着姿を、彼氏として一度見ておきたい。
氷織は頬中心に赤らんでいる顔に、ニッコリと可愛らしい笑みを浮かべる。
「分かりました。では、スクール水着を着ますね」
「ありがとう。でも、大丈夫か? 1階には陽子さんいるけど。ここに来る可能性もあるんじゃないか?」
「お母さんですし、スクール水着を着ていますから見られても大丈夫です。明斗さんは……どうですか?」
氷織は俺に問いかけてくる。
よく考えたら、氷織がスクール水着姿になっているときに陽子さんが部屋に来たら、精神的ダメージが大きいのは俺の方だろうな。
「まあ、来る可能性はあっても氷織のスクール水着姿を見たい気持ちは変わらないよ。陽子さんが来たら……『見たかったんです』って正直に言おう」
「分かりました。着替えている間はここで待っていますか? それとも、廊下で待っていますか? 明斗さんならどちらでもかまいませんが」
「涼しいこの部屋にいるよ。ただ、お楽しみってことで、着替え終わるまでは背を向いているよ」
「ふふっ、分かりました。では、さっそく着替えますね」
「ああ」
俺は氷織に背を向けて、アイスティーを一口飲む。
氷織が着替え終わるまでの間は……スマホでも弄るか。
海水浴が話題になったし、当日の天気予報を見るか。ええと……当日は晴れ。最高気温は33度。海水浴にはもってこいの気候だな。気温は下がってくれてもいいけど、晴れという天気は予報が当たってほしい。
背後からは布の擦れる音が聞こえてくる。今、氷織がスクール水着に着替えているんだよな。もしかしたら、今は裸の状態かもしれない。そう思うとかなりドキドキしてくる。
氷織のスクール水着姿、どういう感じなんだろう。氷織はスタイルがいいし、かなり似合いそうだ。
「着替え終わりました。明斗さん、こっちに振り返っていいですよ」
「分かった」
俺はクッションから立ち上がって、ゆっくりと後ろに振り返る。さあ、スクール水着姿の氷織とのご対面!
「おおっ……」
後ろに振り返ると、すぐそこには紺色のスクール水着を着た氷織が。とても似合っているから、思わず声が漏れてしまった。
当たり前だけど、ビキニよりは肌の露出度は低い。ただ、大きな胸の膨らみや体のラインがはっきりと分かったり、生地が紺色で氷織の肌の白さが映えたりするから艶やかさを感じる。腕や脚、胸元といった露出している部分が綺麗だ。
また、以前のお泊まりで左の胸元に付けたキスマークは消えていた。これなら、海でも氷織は気にせずに遊べそうだ。
氷織はゆっくりと一回転して、背中の方も見せてくれる。背中……それなりに空いているんだな。背筋のラインがうっすら見えていて美しい。
あと……氷織の自室で着ているから、なかなかのエロさを感じる。ここがプールや海だったらあまり感じなかっただろう。服装と場所がミスマッチだとエロさを膨らませることがあるんだな。
「どう……ですか? 私のスクール水着姿は」
はにかみながらそう問いかける氷織。首を少し傾げる仕草あって物凄く可愛い。
「とてもよく似合っているよ。紺色もいいなって思う」
「そうですか! 明斗さんにそう言ってもらえて嬉しいですっ!」
氷織はとても嬉しそうな笑顔を見せる。
「2年前の水着なので胸がややキツいですが、お腹周りやお尻といった部分はピッタリで安心しました」
「そうか、良かったな」
2年前からスタイルを維持しつつも、胸だけが成長したってことか。さすがは氷織だ。つまり、中学3年のときに水泳の授業を受ける氷織もこういう感じだったのか。うちの中学では、こんなに綺麗で色気のある同級生の女子はいなかった気がする。
「本当によく似合ってるよ。スマホで写真を撮りたいくらいだ。……いいかな?」
「いいですよ。ただ、この部屋でスクール水着ですから……あまり人に見せびらかさないでくださいね。今度、海に行くメンバーや明実さんくらいで。ちょっと恥ずかしいですから」
「分かったよ、約束する」
こんなにも魅力的な氷織の姿は俺も見せびらかしたくないし。
俺はスマホを使って、スクール水着姿の氷織を撮影する。ピースサインしたり、ベッドの上で仰向けになっていたり、こちらに見返りしたりするなど様々なポーズで。どの写真も可愛いな。氷織は写真写りがとてもいい。
また、俺とのツーショット写真も撮影した。氷織が俺と腕を組んだり、俺が後ろから抱きしめたりして。そういったことをする前に、氷織の腋や胸元、首筋、背中にキスして。キスされる度に氷織は「んっ」と可愛い声を漏らし、体をビクつかせて。それがとても可愛かった。
あと、俺は私服だから、ツーショット写真を見ると、物凄く厭らしい目的で氷織にスク水を着せたように見えてくる。
「ありがとう。いい写真をたくさん撮れたよ。キスもさせてくれて」
「いえいえ。明斗さんにキスされるのは好きですから。あの、ツーショット写真をLIMEに送ってくれませんか? 初めて明斗さんに披露した思い出といいますか。スクール水着姿の写真も全然持っていませんから」
「ああ、分かった」
俺はLIMEの氷織との個別トークで、今撮った俺とのツーショット写真を送信した。その直後、ローテーブルに置いてある氷織のスマホが鳴る。
「届きました。ありがとうございます」
スマホを見ながら、氷織はそうお礼を言った。スク水を着たままでスマホを見る姿もそそられるものがある。
「それにしても、中学まで氷織と学校が一緒だった人が羨ましいよ。こんなに可愛いスクール水着姿を見られたんだから」
「ふふっ。でも、今までは授業のためにスクール水着を着ていましたけど、誰かに見せたくてスクール水着を着たのはこれが初めてですよ。明斗さんじゃなかったら、こんなことはしません」
持ち前の柔和な笑顔で、氷織は俺を見つめながらそう言ってくれる。中学の授業で多くの人が見ていた姿だけど、スク水姿の氷織を独占できているような気がして。
今の氷織の言葉がとても嬉しくて。キュンとなって。俺は氷織のことを抱きしめる。スクール水着越しでも氷織の温もりや胸の感触ははっきりと伝わってきて。
「見せてくれてありがとう、氷織」
「いえいえ。明斗さんが喜んでくれて嬉しいです。こちらこそありがとうございます」
ふふっ、と氷織は俺を見上げながら優しく笑ってくれる。そんな氷織に俺はキスをした。唇が重なった瞬間、氷織からアイスティーの香りが感じられた。
キスした直後に、背中からも温もりを感じるようになり、前面ではより密着した感覚に。きっと、氷織が両手を俺の背中の方に回して抱き寄せたのだろう。
「んっ……」
可愛らしい声を漏らすと、氷織は俺に舌を絡ませてくる。結構激しく。そのことで、さっきよりもアイスティーの香りが強く感じられ、アイスティーを飲んだときよりも濃い甘味も感じられた。
氷織から唇を離すと、すぐ目の前にはうっとりとした様子の氷織の顔があった。唇が湿っているのもあり、とても艶やかに見える。
「明斗さんの前でスクール水着を初めて着ましたし、制服や私服のときと比べて、抱かれたときに明斗さんの温もりが強く伝わってきて。さっきは体に何度もキスされましたし。そのことで興奮して、結構激しく舌を絡めちゃいました」
「そうか。とても気持ちいいキスだったよ」
「私もです」
そう言うと、氷織の口角がさらに上がって。もし、陽子さんがいなかったら、このまま氷織のことをベッドに押し倒していただろう。そのくらいにスク水姿の氷織に触れることは扇情的だった。
「また、氷織のスク水姿を見たいな」
「いいですよ。いつでも言ってください」
「ああ。ありがとう」
氷織にお礼を言って、一瞬唇が重なる程度の軽いキスをした。
その後、氷織がスクール水着から私服姿に戻り、氷織も俺も好きなアニメのBlu-rayを観る。
初日から氷織に会えて、一緒に課題を取り組めて、氷織の新たな可愛らしい姿を見られて。今年の夏休みは今までで一番の夏休みになりそうだと思った。