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プロローグ『1学期の終わり』

特別編4




 7月20日、火曜日。

 一昨日、関東地方は梅雨明けが発表され、いよいよ夏本番に。

 今日も朝からよく晴れており、最高気温は33度予想。ただ、朝に登校するときから蒸し暑いので、昼間には33度よりも高い気温になるんじゃないかと思っている。

 週間予報によると、この先一週間もずっと晴れマークが続き、最高気温も33度から36度予想とかなり暑い日が続く予想に。梅雨明け十日とはよく言ったものだ。


「それでは、通知表を渡します~。相原君~」


 今日は東京都立笠ヶ谷(かさがや)高等学校の1学期の最終日。

 涼しくて快適な校内放送形式の終業式が終わり、1学期最後のホームルームに。その中で、本日のメインディッシュ・通知表配布が始まった。出席番号順で渡されるため、5番の俺はもうすぐだ。

 どんな成績がつけられているだろうか。中間試験に続いて、期末試験でも2年生文系クラスの中でトップテンに入ることはできた。それでも、通知表を渡される直前になるとちょっと緊張してしまう。


「明斗さん、緊張していますね」

「もうすぐ通知表が渡されるからな」

「きっと大丈夫ですよ。期末試験の結果も良かったんですから」


 一つ前の席に座っている恋人・青山氷織(あおやまひおり)は俺の方に振り返ってそう言う。優しい笑みを浮かべ、俺の手に重ねてくれる。今の氷織の言葉と、手から伝わる氷織の優しい温もりで緊張が解けた気がする。恋人にこうしてもらえて、俺・紙透明斗(かみとうあきと)は幸せ者だと思う。

 また、今の氷織の髪型は、いつものストレートではなく、青いヘアゴムでポニーテールに纏めている。以前、夏の暑い時期や料理をするときにはポニーテールにすることがあると言っていたな。普段とは違う髪型だから新鮮だし、いつもは見えない綺麗なうなじがたまらない。ポニーテール氷織も可愛くていいなと思う。

 ちなみに、今俺が思ったことと同じようなことを、友人でクラスメイトの火村恭子(ひむらきょうこ)さんが登校直後に興奮しながら言っていた。その際にうなじの匂いまで嗅いでいた。変態行為だけど、氷織が嫌がっていないので許せてしまう自分がいる。


「ありがとう、氷織。気持ちが落ち着いてきたよ。あと、ポニーテールの氷織も可愛いから癒やされてもきた」

「ふふっ、良かったです。これから夏本番ですし、ポニーテールにすると首のあたりが涼しいですからね。夏休み中もたまにポニーテールにしようと思います」

「うん、いいと思う」


 明日から始まる夏休みがより楽しみになった。

 あと、ポニーテールだけでなく、氷織の親友の葉月沙綾(はづきさあや)さんのようなワンサイドアップも見てみたいなぁ。ツインテール、おさげといった髪型もいいな。夏休みになったらお願いしてみようかな。


「次、紙透君~」

「はい」


 担任の高橋由実(たかはしゆみ)先生に名前を呼ばれたので、俺は自分の席を立つ。先生のいる教卓に向かう際、氷織がポンと優しく背中を叩いてくれた。

 教卓に行くと、高橋先生は持ち前のほんわかとした笑顔を向けてくれる。


「1学期もよく頑張りましたね~。この調子で頑張りましょう~」

「ありがとうございます」


 お褒めの言葉と一緒に、高橋先生から通知表を受け取った。

 自分の席に戻り、通知表を開く。その際、氷織は俺の席の方を向いているけど、覗き込むことはしない。

 笠ヶ谷高校の通知表には各教科について100点満点による評定と、学年の平均評定が記載されている。ちなみに、評定が30店未満だと赤点扱いで『*』マークがつく。赤点教科については夏休み中に特別課題をこなしたり、登校して補習を受けたりしないといけないのだそうだ。

 通知表を見ていくと……定期試験がなかった体育や選択芸術の音楽を含めて、全教科80点以上取れている。中間と期末試験のあった5教科については90点以上。これまでで一番いい成績だ。もちろん、赤点扱いとなっている『*』の教科もない。

 クラス順位と学年順位も記載されている。クラスは2位、学年では6位となった。順位についても過去最高だ。嬉しいなぁ。


「いい笑顔ですね。いい成績だったんですね」

「ああ。今までで一番いい成績だよ」


 そう言って、俺は氷織に自分の通知表を見せる。

 氷織は通知表を見ると、ぱあっと明るい笑みを浮かべて、


「素晴らしい成績ですね! 試験勉強を頑張っていましたし、どちらの定期試験でも上位者のリストに載っていましたもんね」

「ああ。普段の課題や、定期試験の勉強会で氷織達が教えてくれたおかげだよ。ありがとう」

「いえいえ。明斗さんの頑張りが繋がった結果ですよ。1学期、お疲れ様でした」


 落ち着いた声色でそう言うと、氷織は持ち前の優しい笑顔で俺の頭を撫でてくれた。いい成績を取れたご褒美をもらった気分だ。幸せだ。


「よっしゃあっ! 赤点科目なしだぜ!」


 和男の雄叫びが教室中に響く。

 和男の方を向くと、和男は拳にした右手を突き上げて大喜びしていた。和男は理系科目中心に苦手科目がいくつかある。勉強を頑張って、期末試験では赤点を免れていた。それでも、成績として赤点がないと嬉しくてたまらないのだろう。赤点があると、夏休み中の部活にも影響が出るからな。

 和男は近くにいる恋人の清水美羽(しみずみう)さんや、火村さんとグータッチして自分の席に座った。また、その直後に俺達に向かってピースサイン。雄叫びで赤点科目なしなのは分かっているので、俺は氷織と一緒にサムズアップした。

 それ以降も、出席番号順で通知表が返却されていく。


「はい、青山さん~」

「はい」


 ついに、氷織の番となった。

 氷織は席から立ち上がって、高橋先生のいる教卓に向かう。氷織の後ろ姿はとても美しいと改めて思った。

 高橋先生は笑顔で氷織に話しかけている。きっと、お褒めの言葉を言っているのだろう。氷織は中間期末共に全教科100点満点で学年1位だったし。きっと、成績でもクラスと学年共に1位の生徒は氷織で間違いないだろう。

 氷織は高橋先生に軽く頭を下げ、こちらに戻ってくる。その笑顔はちょっと嬉しそうで。

 自分の席に座って、氷織は通知表を開く。


「……うんっ」


 可愛らしい声でそう言うと、氷織は小さく頷いた。その際、氷織の口角がさらに上がったのが分かった。


「ほぼ100点でした」


 一言言うと、氷織は俺に通知表を見せてくれた。

 氷織の通知表を見ていくと……おおっ、100点がズラリと続いている。定期試験がない体育と選択芸術の音楽以外は全て100点だ。まあ、100点ではない2科目も90点台後半なので本当に完璧な成績だと思う。こんなにも美しい通知表を見たことがない。学年末だけ年間を通して5段階評定が下されるが、きっと全て5になるのだろう。


「本当に凄い成績だな。氷織は勉強を頑張っていたもんな。俺達に教えるのも上手だったし」

「ありがとうございますっ」


 さっきの氷織のように、俺は氷織の頭を優しく撫でる。そのことで、氷織はニッコリと嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 その後、清水さんと火村さんにも通知表が渡された。2人とも可愛らしい笑顔で通知表を見ているので、少なくとも赤点科目はなかったと思われる。

 葉月さんも期末試験は理系クラスで7位だった。運動神経もなかなかいいし、音楽が苦手だと聞いたこともない。きっと、氷織も赤点はないだろう。




「はい~。では、これで1学期の日程は全て終了です~。みなさん、体調には気をつけて楽しい夏休みを過ごしてくださいね~。また9月に会いましょう~」


 高橋先生がそう言って、1学期最後のロングホームルームを締めくくった。 

 クラス委員の女子生徒による号令で、1学期は終了した。


「うぇーい! 1学期終わったぜ!」


「夏休みよっ!」


 挨拶が終わった瞬間、男女問わず一部の生徒が夏休みに突入した歓喜の声を上げている。教室を見渡すと、大半の生徒が嬉しそうな表情をしていて。一部の生徒は赤点科目があったのかがっくりしているけど。


「1学期が終わりましたね!」


 振り返りながらそう言う氷織の表情は明るい。氷織のおかげで自然と気持ちが晴れやかになっていく。


「そうだな。氷織、お疲れ様」

「明斗さんもお疲れ様でした」


 氷織はそう言うと、一瞬だけど俺にキスをしてきた。正式に付き合い始めた当初は学校でキスすることはあまりなかったけど、今は短いキスならたまにするようになった。俺達がキスする光景を何度も見ているからか、周りの生徒も騒ぐことはない。


「氷織! 紙透! これで夏休みね!」

「1学期お疲れさん!」

「お疲れ様!」


 火村さん、和男、清水さんが俺達のところへやってきた。1学期が終わったからか、3人とも嬉しそうな笑顔を浮かべている。


「みんなお疲れ様」

「お疲れ様です。1学期もこれで終わりですね」

「そうね。夏休みになったのは嬉しいけど、氷織と会える日が減るのが寂しいわ」


 火村さんはちょっと寂しそうな様子で、氷織のことを抱きしめる。

 平日は氷織と学校で会えて、同じクラスだから氷織のことをずっと見ていられるもんな。夏休みの間も氷織とはたくさん会うだろう。だけど、今日までに比べると会う頻度は少なくなると思う。そう考えると、ちょっと寂しい気持ちになるな。

 氷織は持ち前の優しい笑みを浮かべ、火村さんの頭を撫でる。


「私も寂しいです。ただ、せっかくの夏休みですから、どこか遊びに行ったりして、みんなで思い出作りがしたいですね」

「そうだな、氷織」

「……2人ならそう言ってくれると思ったわ」


 そう言うと、火村さんは氷織への抱擁を解く。火村さんはさっきよりも元気そうな表情になっていた。


「実はさっき、美羽と倉木と3人で話していたの。夏休みに入ったらこの5人と沙綾で海へ遊びに行きたいねって」

「そうだったんですか。そういえば、以前、明斗さんのお見舞いに行ったときも、恭子さんはいつもの6人で海へ遊びに行きたいって言っていましたね」

「ああ、そうだったな」

「覚えていてくれて嬉しいわ!」

「今度の日曜日、陸上部の活動は休みだぜ!」

「紙透君と氷織ちゃんの予定はどうかな?」

「私は大丈夫ですよ。明斗さんはどうでしたっけ。夏休みのバイトのシフトも決まっていましたよね」

「8月の前半まで決まってる。ちょっとスマホの予定表で確認してみる」


 7月末までのシフトは既に決定している。夏休みも何日かはシフトに入っていたけど、次の日曜日はどうだったかな。

 スマホのスリープを解除して、カレンダーアプリで予定を確認する。次の日曜日だから……25日か。


「……うん。25日はシフト入ってない。大丈夫だよ」

「良かったです!」

「紙透もOKね。あたしも25日は大丈夫よ。あとは沙綾だけね。連絡しようかしら」

「あたしがどうかしたッスか?」


 気付けば、俺達のすぐ近くにスクールバッグを肩に掛けた葉月さんが。俺達が気付くと葉月さんは明るい笑顔で小さく手を振り、「1学期お疲れ様ッス」と言った。


「この6人で、次の日曜日に海水浴へ行こうということになりまして。私達5人は予定が空いているのですが、沙綾さんはどうですか? 沙綾さんもバイトしていますが」

「海水浴いいッスね! シフトを確認してみるッス」


 葉月さんはバッグからスマホを取り出し、当日の予定を確認する。葉月さんの予定が合えば、25日に海水浴へ行くことが決定するけど……どうだろう?

 葉月さんは画面を見ながらニコッと笑い、


「24日はバイトがあるッスけど、25日はOKッスよ」

「良かったです!」

「じゃあ、25日にこの6人で海へ遊びに行きましょう!」

『おー!』


 火村さんの言葉に、葉月さん、和男、清水さんが元気良く返事して、右手を拳にした状態で突き上げる。その後に俺と氷織、火村さんも彼らのように右手を突き上げた。

 みんなで海へ遊びに行く予定が決まったから、みんな凄く嬉しそうだ。

 海は去年の夏に和男達と行ったとき以来だし、女性陣4人と一緒に海へ行くのは初めて。それに、氷織のあの黒いビキニ姿をまた見られると思うと本当に楽しみだ。

 高校2年生の夏休みはとても楽しい夏休みになりそうだ。

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[良い点] え……教室で、クラスメートがわらわら居る中でキスしてんの? そんでそれを周囲も受け入れてるの? いやもう明斗君恵まれ過ぎでしょ(^^; [一言] 新章開始ありがとうございます。 待ってまし…
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