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第2話『お昼は2人でパンを-後編-』

 俺は氷織と一緒に1階のキッチンへ行く。

 氷織は棚から自分用のマグカップと俺がいつも使っている来客用のマグカップ、いつも飲んでいるインスタントコーヒーの入った瓶を食卓に出してくれた。今までに何度もこの家でアイスコーヒーを飲んでいたから分かっているけど、俺の家にあるインスタントコーヒーとは銘柄が違う。

 普段、氷織がアイスコーヒーを作るときに使う粉末の量を教えてもらい、俺はアイスコーヒー作りをすることに。

 氷織は制服の上から青いエプロンを身につける。その姿がとても可愛くて、氷織にお願いしてスマホで写真を撮らせてもらった。笑顔になるだけでなく、ピースサインまでしてくれるから本当に可愛い。

 その後、氷織は冷蔵庫からレタスやミニトマト、きゅうりを取り出してサラダ作りに取りかかる。制服エプロン姿も似合っているし、包丁で野菜を切る姿は様になっている。


「これでいいかな」


 氷織の分と自分の分のアイスコーヒーが完成した。自分の分のコーヒーを作った際に味見をすると、いつも氷織が作ってくれるコーヒーと同じような味わいになっていた。なので、氷織が美味しいと思えるコーヒーができただろう。


「アイスコーヒーできたよ」

「ありがとうございます。サラダの方ももう少しでできますので、座って待っていてください」

「ああ、分かった」


 俺は食卓の椅子に座り、サラダを作っている氷織の後ろ姿を見る。後ろ姿でさえも、制服にエプロンを身につけた氷織は可愛くて美しい。去年、同じクラスだったら、家庭科の調理実習のときにこういう姿を見られたんだよな。同じクラスだった生徒達が羨ましい。

 今は家に俺達しかいないから、エプロン姿の氷織を見ていると、氷織と同棲しているような感覚になってくる。そう思うと、氷織がより可愛く見えてきた。


「お待たせしました。サラダできました」


 そう言うと、氷織は俺の前にサラダが盛りつけられた皿を置いてくれる。サラダはレタスとトマト、細切りのキュウリ。あとはシーチキンも乗っている。


「美味しそうなサラダだ」

「ありがとうございます。パンとかパスタ、洋食のときには、こういう生野菜のサラダを食べることが結構あるんです」

「そうなんだ」


 野菜でビタミンをしっかりと摂って、シーチキンもあるからタンパク質も摂れて。ちゃんと栄養を摂っているのも、氷織が美しくて、スタイルのいい理由の一つなのだろう。

 氷織は箸とドレッシングを食卓に置いて、俺と向かい合う形で椅子に座った。


「では、食べましょうか」

「そうだな。いただきます」

「いただきますっ」


 氷織はそう言うと、俺が作ったアイスコーヒーを一口飲む。氷織が教えてくれた粉末の量でコーヒーを作ったけど、氷織は美味しいって言ってくれるかな。ちょっと緊張する。


「冷たくて美味しいですっ」


 氷織は美しくも可愛らしい笑顔でそう言ってくれた。そんな氷織を見て、嬉しい気持ちと同時に安堵の気持ちを抱く。


「氷織が美味しいと思えるコーヒーになっていて良かった」

「ふふっ。明斗さんはコーヒーを作るのが上手ですね。さすがはゾソールの店員さんです」

「これはインスタントコーヒーだけどな。でも、ありがとう。……俺も氷織の作ってくれたサラダを食べよう」

「はい。うちでは好きなドレッシングをかけるんです。和風、ごまだれ、イタリアン、フレンチと4種類あります」

「そうなんだ。さっぱり系が好きだから、俺は和風にしようかな」

「和風美味しいですよ。私は……イタリアンにしましょう」


 サラダに和風のドレッシングをかけて、箸で軽く混ぜる。和風ドレッシングやシーチキンのいい匂いが香ってくる。

 サラダの具材を全て一度に食べられるように箸で掴み取り、口の中に入れた。


「……美味しい」


 醤油ベースの和風ドレッシングだから、口の中にさっぱりとした味わいが広がって。冷蔵庫から出したばかりなので、野菜の水分が冷たいのがいいな。夏にピッタリなサラダだ。


「ふふっ、良かったです」


 そう言うと、氷織は笑顔でサラダを食べていた。前から思っているけど、モグモグと食べる氷織はとても可愛らしい。あと、ドレッシングは違うけど、氷織と同じものを食べているのっていいなって思う。


「じゃあ、そろそろメインのパンを食べようか」

「そうですね。私はチョココロネから食べましょうかね」

「俺はピリ辛カレーパンを食べよう」


 カレーパン好きなので、まずはこれを食べたい。

 笠ヶ谷ベーカリーの袋から、ピリ辛カレーパンの入ったビニール袋を取り出す。こうして改めて見てみると……とっても美味しそうだ。中に入っているカレーの味がどんな感じなのか。ピリ辛と謳うけど、どのくらい辛いのかが楽しみだ。


「よし、ピリ辛カレーパンいただきます!」

「チョココロネいただきますっ!」


 俺はピリ辛カレーパンを一口食べる。

 ――サクッ。

 カレーパンを噛んだ瞬間、衣の心地良い音が聞こえる。それと同時に衣の香ばしさが口の中に広がっていく。

 また、その直後にパンの中に入っているカレーのピリ辛さが舌を刺激する。カレーパンとは別に売られているだけあって、なかなかの辛さだ。ただ、刺激と共にカレーのコクや旨みが感じられて。


「なかなか辛くて美味しいな、このカレーパン」

「美味しいですよね。明斗さんの好みに合って良かったです。チョココロネも美味しくて最高ですっ」


 そう言って、氷織はチョココロネをもう一口。

 チョココロネは好きなパンだと言っていたし、最高だと言うだけあって、氷織は満面の笑みを浮かべながら食べている。両手でチョココロネを持っている姿と相まって凄く可愛い。また、氷織がパンを食べる姿を見たのは体育祭のときくらいだから新鮮だ。


「明斗さん、チョココロネ一口いかがですか? チョコソースが濃厚で美味しいですよ」

「ありがとう。一口いただくよ」


 氷織を満面の笑顔にさせるチョココロネを味わってみたい。

 氷織はニッコリと笑うと、チョココロネを持った右手を差し出して、少し前屈みの体勢になる。


「はい、あ~ん」

「あーん」


 俺は氷織にチョココロネを一口食べさせてもらう。


「……おおっ。確かに濃厚なチョコソースだ。甘くて、ちょっとカカオの苦味もあって。凄く美味しい」

「でしょう? あのパン屋さんに行くと買うことが結構多いです」

「そうなんだ。納得だな。じゃあ、お礼にピリ辛カレーパンを一口あげるよ。ただ、このカレーパンはなかなか辛いけど、氷織は大丈夫か? 辛いのが苦手だって話は今まで聞いたことはないけど」

「大丈夫ですよ。それに、そのカレーパンを食べたことがありますし」

「それなら大丈夫だな。じゃあ、あーん」

「あ~ん」


 氷織にピリ辛カレーパンを一口食べさせる。

 カレーソースがなかなか辛いのもあってか、瞬間的に氷織は眉間に皺を寄せた。ただ、美味しいからか、氷織はすぐに笑顔を取り戻す。


「ピリ辛ですけど美味しいですね」

「美味いよなぁ。コンビニでもピリ辛なカレーパンって売っているけど、それよりも美味しいよ。さすがはパン屋さんだ」

「気に入ってもらえて良かったです」


 氷織は優しげな笑顔でそう言った。

 それからも、俺達はお昼ご飯の時間を楽しんでいく。

 チョコチップメロンパンが美味しくてボリューム満点。メロンパンだけでなく、チョコの味も楽しめるからお得感がある。これはいいパンだ。

 氷織と一口交換してもらったたまごサンドもかなり美味しい。笠ヶ谷ベーカリーはサンドウィッチも美味しいと氷織が言ったのも納得だな。

 氷織に俺のチョコチップパンを一口あげると、氷織は幸せな表情に。

 パンが美味しくて。氷織の笑顔がたくさん見られて。だから、とても満足できた昼食になった。

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