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銃と少女と軍人と  作者: 銃と少女と軍人と
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1話

小説を書くのは初めてなので慣れないこともありますが頑張らせていただきます。

誤字、脱字等は発見次第直しますのでコメントしてくれましたらありがたいです。


セルシアちゃんが友情や恋愛やバトルをしていきます。


 灰色の空に、一筋の線が延びていた。


「赤だ」


信号弾の色に従い敵陣への進行のスピードを上げる。

手に持っている小さな体には不釣り合いな剣銃と腰に下がっている一丁のハンドガンが重い。

もう戦い始めて何時間が経過したのか、朦朧とした意識の中で正面から向かってきた敵兵に剣銃を向ける。


バンッ


弾が発射された爆音によって音が一瞬、聞こえなくなる。

これも何度目だったのかと考えながら、この終わらない戦争に腹がったてくる。

死んだ敵兵の横を通り、死屍累々の道をひたすらに走り抜ける。


ーはやく、あの人のもとへ


あの人は今最前線で戦っているはずだ。はやくあの人のもとへ行かなければ、寂しがり屋なんだ、それなのに一人で行こうとするのだ。私がいなきゃ、私が支えてあげなければ、




ーーーーーーーー


 絹の織物に銀色と灰色を混ぜたような美しい髪色の少女が馬車に乗っていた。

藍色の瞳は長い睫毛によって影を落とされ、暗い青緑色の軍服は一般兵の着る上下に分かれたもので腰のベルトには一丁の銃が下げられている。しかしながら彼女の軍服の左胸の部分には多くの勲章と先日拝命した少尉の階級章があり、下級兵用の軍服には不釣り合いでしかない。肩より上で切られた短い髪とまだ10代中盤であるために女性らしい発育もなく(もともとないに等しいだけなのかもしれないが)よく男児に間違えられることもあるし、今彼女ーセルシアーの斜め前に座る案内役の男もセルシアのことを男だと思っているだろう。彼女の座る椅子の側には杖がかけてあり持ち手の部分が金色でそれ以外の棒の部分は濃い茶色をしていた。また、彼女の右手は手袋で覆われておりちぐはぐで奇妙な格好をする少年(だと思っている)を男は見ていた。


 窓の外に広がる風景は平和そのものだ。

それが当たり前だとはわかってはいてもあのおぞましい光景の広がる戦場についこの前までいた身としてはなんだか今いる場所が非日常のような気がしてどうにも落ち着かない。

 馬車の規則的な揺れに身を委ねながら、自分の左足を眺める。

 服と靴によって隠されてはいるがその中には何重にも包帯で巻かれた足があり、戦場で傷ついたこの足は医師の絶対安静の指示のもといつものような走り回るといった少女ら叱らぬ行いも鳴りを潜めていた。と言っても、日常生活においてはあまり問題はなく、二か月間にわたる入院と杖で負担をかけないように補助をするという約束によって今、ここにいるのだ。


「貴殿はなぜ上官用の軍服を着ないのか」


 斜め前に座る男にこの静けさにいたたまれなくなってか、もしくは我慢できないほどの屈辱とでもいうように話掛けられる。いや、断然後者のような表情なのだが。

 男は一般兵用の軍服を着ており、背格好から20代前半だろうか。ピント伸ばした背筋と焼けていない肌からはからは育ちの良さがわかり、胸の階級章で下級准尉だとわかる。比較的上位の階級でありながら戦闘を経験していないように思えるのはきっと彼が貴族であり、王都の本館で指示を出すだけの立場だからだろう。少尉に昇進したセルシアより下の階級でありながら敵意を向けているのは貴族であるからだろうし、平民で、自分より年下であるだろうセルシアが下級兵士用の隊服を着ているんが貴族のプライドを傷つけたのだろう。


「私はまだ、中佐に昇進の事を伝えておりません」


「アンダーウッド中佐は君の昇進のことを知っているはずだが」


「それでも直接報告できていません。私はあの人の部下です」


「周りのものに気を遣わすなと言っているのだ。それにこれから会うお方にも失礼だろう」


「ベイリー少将はこの事をご存知です」


「知っていたとしてもだ、正式な場なのだぞ」


「それでもです」


ちょうど本館に着き、男はドアを開けて馬車の外に出る。


「はやくこい」


本館はとても大きく立派な建物であり歴史を感じさせる壁がそそり立っている。

男はセルシアの前を先導し、扉が他よりも古く、大きい部屋に案内した。


「私の仕事はここまでだ」


男はセルシアの前を通り過ぎてきた道を戻って行く。

男を見送り、ドアをノックする。


「ベイリー少将、セルシア少尉です。入室の許可をいただけますか」


少し経ってからいいよと小さな声が聞こえてからドアを開け部屋に入る。

部屋の奥にある執務用の机には多くの書類が積まれており椅子に座る男性は平均よりも大きい背格好だとわかるが威圧感を与えるようなことはなく優しげなダークグレーの瞳は人に安心感を与える。50代後半ぐらいの男は机の書類を片付けていた。


「本日はどのようなご用件でしょうかベイリー少将」


「ははは、私にそうやって話しかけてくる部下はセルシアちゃんとウォルターくらいだよ。部下は上官に似るとはいうけど、そこまで似るかなぁ」


「ありがとうございます」


「褒めてはないんだけど」


また軽く笑いながらベイリーは机の書類の中から2枚の紙を取り出す。


「君に新しい仕事を持ってきたんだ」


「仕事、ですか」


ベイリーは紙をセルシアに渡し、もう一枚の紙を読む。


「そこにもかいているように、君には姫殿下の護衛をお願いしたいんだ。」


姫殿下といえばつい先日公爵の跡取り息子と婚約をしたと噂になっている。


「姫殿下には私よりも強い護衛が多くいるはずだけですが」


「さすがに君より強いとなるとそんなにいないけど…。確かに護衛の軍人は沢山いるよ。」


「ではその人たちに」


「けど、全員男なんだよね。」


「男性だと悪いことがあるのですか」


「ああ。実は先日姫殿下の学院入学が決まってね。それも王都の外れにある男子禁制と有名な女学院でね。この国は最低2年以上の学院での習学が必須だからね。姫殿下は今年で16歳。高等学院に入学する年だ」


「男子禁制、ということは私に姫殿下の護衛としてその女学院に同行しろということですか」


「まあそういうことなんだけど、そこが問題でね、あそこの女学院は護衛の同行を禁止しているんだ。それにメイドも部屋の中で待機以外ないしね」


「それで警備の面は安全なのでしょうか」


「今まで大きな問題はなかったけれど、やっぱり心配なんだよね。王や王妃もそこが気がかりらしくて、余り学院に行くことをよしとしているんだ。」


脚を組み直しがらベイリーはセルシアを見る。


「だから君には生徒として入学して姫殿下の護衛をしてほしいんだ」


「嫌です」


間髪入れずに答える。


「即答かぁ。予想はしていたけれど。やっぱりウォルターと離れるのは嫌かな」


「…はい。私はウォルター中尉の部下です。できれば今すぐにでも戦線復帰をしたいのですが」


「その足では無理だね」


視線を右足にに移す。日常生活に支障はないが杖がないとやっぱりまだ歩行がおぼつかない時がある。


「確かにそうかもしれませんが、それなら姫殿下の護衛もできないのでは」


「君の実力なら戦争で何人もの大男相手に戦場をかけるのは無理でも女の子一人を守るくらい楽勝だろ?」


「剣銃は持っていけないでしょう」


「君はもともとハンドガンの方が得意なんだってね」


「女学院は貴族の子女が通う場所でしょう。私は平民です」


「君に出自くらい調べてあるよ」


机の書類の山から何枚かの紙を取り出しセルシアに見せながらベイリーは語り続ける。


「地方男爵の長女で愛人と横領が大好きな下級文官の父親と浪費家の母親、無能な兄と妹がいるんだね。両親の虐待から逃げ出して軍事学校に入学してそれからほぼ絶縁状態」


「……。」


「君に家族は父親の横領がバレて家族全員追放されてるよ」


「でしたら、やはり私に資格はありません」


「だから君のいた家の本家のフローレンス家に話をつけたんだよ。伯爵夫妻は子供に恵まれなかったからね、快く受け入れてくれたよ。分家の娘だし、悲惨な人生を送っていると言ったら養女にしてくれるって即答だったよ」


「勝手に人を貴族にしないでください」


「もともと貴族の令嬢様だったでしょ」


「確かにそうですが私は一度男爵家の娘の名前を捨てました」


「貴族で一番重要なのは気持ちではなく血だ。それにちょうどよかったんだよ。フローレンス家は後を継げる人間がいなっかったしね。それにこれはウォルターの意思でもある」


「そうなのですか」


ウォルターはセルシアの上官だ。上官の命令は基本的に絶対であり、それにセルシア自身もウォルターの意思に反した行動はしたくない。


「けれど!そこまでする必要はないのではないでしょうか。私1人で護衛というのは一日中となると不可能ですし、そもそもその女学校以外にも学院はあります。わざわざそこに入学しなくてもいいのでは」


「放課後はメイド兼護衛のものがいる。ただその人は年齢的に学園に入学できなくてね。まあ、学院の中にいる時間だけだから一日中というわけでもないよ」


「他にも理由が?」


「最近は城下でも噂になっているけど、姫殿下は公爵の跡取り息子との婚約が決まっていてね。基本的に結婚の決まった令嬢が共学の学院に通わせるわけにはいかないし、姫殿下が通えるほどの格のある学校となるとその女学院くらいしかないんだよ」


完全に外堀を囲まれた状態だ。他にも何かいい案がないか考えるが一つも思い浮かばない。


「伯爵家令嬢で、実力もあり、素養もある。年齢も丁度いいし度胸もある。これ以上の人材は君くらいしかいないよ」


「それにこれはウォルターが全て手配してくれたことだよ」


「ウォルター中尉が」


「うん、ウォルターがね」


「私は不要なのでしょうか。足手まといだから、戦場に行くなと、くるなということでしょうか」


「いや、違うよ。こうしなければ君はその脚を引きずってでも戦場に、あいつのもとに行こうとするでしょ」


言い返すことはできない。


「あいつは君に少しでも危険がいかないところに行かないでほしいだけなんだ」


「本当ですか」


「本当だよ」


ベイリーはセルシアの服を見る


「まだ下級兵の軍服を着ているのはウォルターに伝えてないから?」


「はい。私はあの人の部下です。報告せずに上官用の軍服を着るのは」


「ウォルターにはまだ会ってないのかい」


「はい。入院中会う機会はありませんでしたし、中佐は今国境の戦いにいてお会いできておりません」


「手紙ではダメなのかい」


「はい、直接お会いしたいと思っております」


「そうか」


会話が途切れる。


「じゃあ、ウォルターに会えたら改めて上官用の軍服を着て俺に見せに来てくれるかい?」


「はい。」


「姫殿下の護衛の件、ウォルターのためにも引き受けてくれないか」


「…はい」


私、セルシア=フローレンスは女学院に入学することが決まった。

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