一方その頃 ショコラさん
サイドストーリーでござる!
がらんとした和室にカリカリとペンの走る音が響く。いつもならこの割と大きな音さえも聞こえないくらいに仕事部屋はうるさいというのに。
「良かったのですか? エルエルは本当に離婚されますよ? あんなふうに焚き付けて」
「あらあら~、そんなことなくてよ~。というかアシスタント全員が居ないとかキツいんですけど!」
いつもの仕事場は人の居ない机が並んでて寒々しい印象だ。いつもが賑やかな分、当然とも言えるけど。机の上には作業途中で投げ出されたものが雑然と散乱してる。この村の本当の名産品、そのパーツとも言えるもの達が。
「自業自得ですよ。それで……どういうつもりなんですか?」
「少しくらい手伝ってくれてもいいじゃんか~。締め切りが毎日あるんだよ~!」
ちょっと手広くやり過ぎた。小説、マンガ、イラスト、全てがバカ売れして私のキャパを既に越えてるんだよ。ネタに困ったからお兄ちゃんを使ったけど……仕方無いじゃん。モデルなんてこんな村にいないんだから。教会を抑えるのが大事だったんだから私悪くないもん。
「知りませんよ。私はお昼ご飯を持ってきただけですから」
ううっ、お昼なのに一人でご飯なの~? もう五十三日もお兄ちゃんと一緒にご飯食べてないのにー!
「まさかジローちゃんとご飯を食べたいとか抜かしませんよね。あれだけ酷い事をしておいて、まさかねぇ」
その眼鏡クイッ、めっちゃ似合うよねシオン。しかも私の不満気な様子に釘を刺しに来たか。あれは確かに少しは悪かったと思わなくも……ないけど。
「ちょっとお兄ちゃんそっくりの抱き枕を新刊のオマケに付けただけじゃん。だからって二ヶ月も口を聞いてくれないとか酷すぎるよ!」
「この外道め! 一人でご飯を食べてなさい!」
あ、シオンが行っちゃった。プリプリ怒りながら仕事部屋の襖をタシーン! って。
「はぁ、シオンは立派なお母さんになったよね。少し過保護だけど」
一人飯は寂しいけど仕方無いかな、でもこれでお兄ちゃんはやっと好きなように生きていける。予想以上にエルエルがショタに目覚めてしまったから……お兄ちゃんの時は止まってしまった。
永遠のショタとか奇跡よね! ファンタジー最高!
まぁそのせいでお兄ちゃんがぶちギレたんだけどさ~。お兄ちゃんって本当に怒ってると優しくなるんだよね~。エルエルはそれを勘違いしてたけど。
離婚はあの時点で確定してたようなもんだし、むしろよく今まで離婚しなかったのか疑問なくらいだよ。お兄ちゃん……本気で愛してたんだね、いつまでも子供扱いするエルエルのことを。
でも……これでやっとお兄ちゃんは自由の身になれた。そう、フリーにね。やはりショタは独身じゃないとさ。属性的にダメなのよね。
ショタはみんなのために。みんなはショタる。ショタのために。
それこそが絶対ルールなのよ!
くっくっく。輪廻カンカンの1を読んでなければ意味が分かるまい……ぐふふふ。まぁ、この話を飛ばしても、なんら問題も無いんですけどね。