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第十四話 おっさん軍師、冒険者ギルドへ行く。

冒険者登録の為にギルドに訪れます。





旨い昼食で腹を満たした俺達は、キーラの案内で冒険者ギルドへとやってきた。


冒険者ギルドは大通りから一本筋を入った所にあり、石造りで四階建てのしっかりした建物だった。

十字路に面した角に大きく構えた入口があり、その入り口の上に『冒険者ギルド』と書かれた看板が掛かっていた。



「中々豪華な建物だな…」


「この街は、元々はここにあった国の王都だったからニャ」


「という事は、この建物も王都だった時代からの建物なのか?」


キーラが頷く。


なるほどな、辺境伯領の領都であるブラムデンが、さながら王都の様な構えだったのは、元々王都だったからか。


重厚な扉を抜けると、そこは円形のホールになって居て、まず正面にはギルドの受付カウンター。そして壁面一杯に設置された、沢山の貼り紙がされた掲示板が目につき、その壁に沿って丸テーブルが並んでいて、そこが待合スペースになっている様だな。


待合スペースでは如何にも冒険者らしい恰好をした色んな連中が丸テーブルに陣取り、飲み物を傾けながら雑談に興じたり、或いはホールに居る者を値踏みする様に眺めていたり。まるで酒場の様だと思ったら、ギルドの受付カウンターとは別にバーコーナーがあり、そこで飲み物などを売っている様で、実際に酒場としての機能もあるらしい。


「ユート、まずあそこの受付で冒険者の登録をするニャ」


「わかった」


俺はキーラと一緒にギルドの受付カウンターへと向かった。


受付カウンターには歳は二十前くらいだろうか、見事なウェーブ気味のブロンド髪の美しい娘が座っており、近づくキーラを見ると声を掛けて来た。


「あら、キーラ。久しぶりね。

 また買い取りかしら?」


「やあ、イルマ。

 今日は買い取りじゃなくて、人を案内してきたニャ」


キーラに紹介されると、イルマと呼ばれた受付嬢は俺の方を見た。


「見かけない方ね。

 案内してきた、という事は、貴方は当ギルドへは初めて?」

 

「この街は初めて訪れた。

 ユート・ヴァイスという。

 放浪の騎士だ」


「あなたが、ヴァイスさん。

 バノック男爵家から来られるかもしれない、との話を伺っていますわ」


手回しの良い事だ。


「それは話が早いな。

 早速だが、頼めるだろうか」

 

「ええ、勿論。

 ヴァイスさんはバノック男爵家から身元保証を受けていますから、こちらの用紙に名前だけ書いてください」


そういうと、登録用紙を差し出して来た。


俺は登録用紙の名前を書く欄に自分の名前を書くと、イルマに手渡した。


正直、俺がこの世界の文字を書けるとは思えなかったのだが、ペンを受け取ってさてどう書いたものか、などと考える前に名前欄にこの世界での俺の名前が表示された様な気がして、途端に身体が勝手に動いて名前が書かれていた。


一体どういう仕組みなのだろうか、という思いがふと頭をよぎったが、この世界の管理者の言葉を思い出し、考えるのを放棄した。これも恐らく、この世界の管理者が俺の魂に施した細工の一つなんだろう。


イルマは俺から登録用紙を受け取ると、早速確認する。


「綺麗な字…。

 字には教養が現れるというけれど、騎士様というは本当みたいですね。

 あとは、こちらで記載しておきますから、登録用紙はこれで結構です」


そういって登録用紙を脇に置くと、今度は水晶玉の様な球体の載った器具を出してきた。これぞファンタジーの世界の器具、という感じの代物だ。


「この球体に手を置いて頂けますか。

 現時点での技量を判定します」


「わ、わかった…」


思わず緊張してしまったが、このキャラクターはともかく、中の人はついこの前まで普通のサラリーマンをしていた、ただの一般人だからな…。緊張するなという方が無理というものだろう。


俺の様子をみてキーラが声を掛けてくる。


「ユート、この球は今の時点でのユートの冒険者としての適性を判定して、色で表示してくれるニャ」


キーラの話をイルマが引き継ぐ。


「普段は何も言わずに球に手を置いてもらうのですけれどね。

 この球は、赤は戦士、青は魔術師、緑はキーラみたいな狩人、黄色はスカウト、ピンクは癒し手といった風に、その人の一番秀でた適性を色で表します。

 そして、その時の明るさで適性の強さがわかります。


 基本的にこの球は初めて登録する人に何が向いているのかアドバイスをする為のものなので、騎士様だったというヴァイスさんには必要無いかもしれませんが、一応規則なので」

 

てっきりステータスが表示されるのかと思ったが、そういう訳でも無いらしい。

俺みたいなイレギュラーな存在が触って割れたりしないといいが…。


緊張を抑えきれず、恐る恐る球に手を当ててみた。


すると、透明だった球の中が変化していき、やがてまるで最初から白い球だったかの様に真っ白になった。


「触ってみたが…、どうだろうか?」


イルマは球の変化に驚き、文字通り目が点になって球を覗き込んだ。


「真っ白…。

 こんな、ありえない…」


「ユート、大丈夫ニャ?」


イルマや球の様子を見て、心配げにキーラが声を掛けてくる。


「あ、ああ。俺は大丈夫だが…」


イルマの様子がおかしい事に気付いたのか、他の受付嬢や後方の机で事務作業をしていたギルド職員が近づいてくる。


その内の上役らしき男性職員が、イルマに声を掛ける。


「イルマ、どうした?」


「その…、球が」


「球がどうした?

 なっ!?」


イルマに言われて球を覗き込んだ男性職員も、驚きの声を上げる。


「この球はこんな風にはならない筈だ。

 何故濁るどころか、真っ白になっているんだ…」

 

待合スペースに居た冒険者たちが、受付の異変に気付いて近づいて来た。そして階下の異変に気が付いたのか上のフロアからも、いかにも風格のある人物が階段を降りて来た。


「どうした」


「あっ、ギルドマスター。

 実は、適性判定の球がおかしくて」


訝し気な表情を浮かべながらギルドマスターが近づいてくると、球を覗き込む。


「ふむ…。

 測定不能というやつか。

 話には聞いていたが実際にこの目で見られるとはな」

 

男性職員が驚きの声を上げる。


「流石ギルドマスター、この反応をご存じだったんですね。

 しかし、測定不能とは一体…」


「はははっ、まあ測定不能なものは致し方ない。

 大体、この球は新人の適性を見る為のもの。

 俺は駆け出しの頃以来触った事は無いが、今触ったら似た様な反応をするかもな」


「ギルドマスターは現役を退かれたとはいえ、金級の冒険者ですからね」


「まあ、そんなところだ。

 よし、ヴァイスと言ったか。

 俺が直々に腕前を見てやる。

 ついてこい」


ギルドマスターはそういうと奥の扉から出て行った。


呆気に取られてその背中を見送った俺に、イルマが声を掛けてくる。


「あちらにギルドの訓練所が有るのです。

 さあ、ヴァイスさんも訓練所の方に」

 

「キーラもついて行くニャ」


直ぐに登録を済ませて、依頼でも見るつもりがこんな事になるとは…。



規格外のヴァイスは測定不能となりました。

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