第一回(仮)「愛について」
第一回(仮)のテーマは「愛について」。特に人に対してどんな感情を持つか考えるか、欠陥人間の例をお見せします。
めちゃくちゃ短いですしヤマなし落ち無し意味なしのガチでいらん回です。まあプロローグというかジャブだと思ってどうぞ。
ナア、俺は人を愛せないんだ。これは酷く恥ずかしいことだ。
好きとか、好ましいはあるぞ、勿論。父母への好意は、言っちゃなんだがかなりのものなんだぜ。
だがなあ、俺はよ、人の感情を受け取れねえんだ。俺には、俺の感情しかねえ。
ん? 手前は手前なんだから、手前の感情だけに決まってンだろって? うーん、そう言うモンかァ? 俺ァ、愛情ってモンがわからねえ。例えばよ、母ちゃんに「大事だ、大切な子供だ」って言われるだろ? 普通の人なら、有難ぇと酷く心に響くんだろうと思う。けどよォ、俺ときたら「ほおそうかい、へえん」としか思わねェ。ちっとも心に届かねえ。一体全体何がどれが愛情で、大事にされてるってことなのかわからねえ。俺ン中でこの言葉って「コンビニ行ってくる」「おう」って会話と同じ重さでしかねェんだ、信じらんねェだろ? 俺も一体如何してここまで分からず屋何だろうと思わずにいられねェ。それとも、皆もこんなモンなのか? なワケねェよなあ。
俺は父母の愛すらわかんねェ男だからよォ、ダチとか女からの愛情とかってのもわかんねェ。俺が周りに感じンのは「楽しいから好き」、「楽しくねェから嫌」が精々だ、ってのは言い過ぎか?
おかげでダチは少ねェどころか、今交流があンのは一人だけだなァ。しかもその相手とも一年に一度会えりゃ良い方ってンだから、さもありなん。いやマア、毎日やり取りしてッからちっとも悪いこたァねえけどよ。
愛を感じられない俺は、情欲ってのも嫌いだ。というかよォ、他人から触られンのも人の体温の残った無機物も、須らく嫌いだ。特に肉欲のある年齢の異性は駄目だ。いやハッキリ言えば、人が背後にいンのも嫌だぜ。道歩いてッ時も、足音が後ろであると寒気がする。我ながら一体全体何に警戒してンだよって話だが、気に食わねェし気持ち悪ィし苛立つ。だから大抵の場合は歩くのを遅くして前を歩かせるんだけど、「アレッ、俺の前世ってニンジャか…?」って気になるよな。