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無印の呪い  作者: J佐助
開拓編
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第1章2節:無印、そして魔力がゼロ

私はこの世界で人間があるべきものを持っていない。

恐らく、この世界で唯一の無印(ムジルシ)である。


無印(ムジルシ)とは何か――――これを説明するには、この世界の12種類の(イン)の話をする必要が出てくる。

(イン)」は、この世界で生きている人間全員が持つ、体に彫られた紋章のような見た目をしている。

生まれつき、体のどこかにタトゥーがある……と言えば分かりやすいだろうか。

このタトゥーのような(イン)が大きいほど、魔力が大きい。


つまりは、(イン)の大きさで魔力の大きさが分かる。

また、面白いことに、この(イン)は、必ず動物の形をしている。

それも、前世に馴染みのある、十二支の動物が(イン)の形なのだ。

鼠、牛、虎、兎、竜、蛇、馬、羊、猿、鳥、犬、猪の(イン)が存在する。

さらに、(イン)の種類によって、その(イン)を持つ人の能力というものが分かってくる。


例えば、私の父親は鳥の印(トリのイン)を持っている。

この(イン)を持つ者は、空間を渡る力――――いわゆるテレポートの能力がある。

魔力が大きければ大きいほど、遠くに、そして多くのものを一緒に連れて移動することができる。

ただ、この能力発動後は、数日は能力を使用できないデメリットがある。


母親の場合、兎の印(ウサギのイン)を持っている。

この印は、薬を生成する能力に優れ、植物に触れただけで、その植物からどのような薬が作れるのかが分かる。

また、口にした薬も、材料さえあれば再現可能。

こちらの(イン)もデメリットがあり、植物を育てることがどうしてもできない。

どんなにケアをしていても、必ず枯らしてしまうらしいのだ。


こんなに楽しそうな要素があるのに、私の体のどこにも(イン)がない。

それに、この世界は、自身の持つ(イン)とは別に、火、水、土、風の4種の属性魔法があるのだが、なぜか私には能力の他にも魔法が一切使えない。

そもそも人間であれば必ずあるはずの魔力が体の中に一切ないのだ。よって魔法が使えないのである。


この世界では、生まれた直後に、ウィルムの儀式という、所持している(イン)の確認、認定、そして魔力を量る儀式がある。

この儀式は、国に義務付けられており、個人の持つ(イン)の種類と力の把握をするためにあるらしい。

国に仕える犬の印(イヌのイン)持ちの役人が同席のもとで、この儀式は行われる。


犬の印(イヌのイン)は、分析能力に優れる能力を持つ(イン)である。

敵の所在地を割り出したりすることもできるが、相手の(イン)や魔力を探ることもできる。

ただ、この能力を使用すると、しばらくは目が見えなくなるというデメリットがある。

(イン)の大きさにより、目が見えるようになるまで日数に変動があるみたいだけども、長くて一週間程度らしい。

戦地とかで活躍しそうな(イン)だが、目の見えないというデメリットのせいで、扱いが大変そうではある。


私のウィルムの儀式は、大変だった。

まず、目視で体の隅々まで確認するが(イン)が一切見つからない。

小さすぎて目視できない可能性があるとして、犬の印(イヌのイン)持ちの役人が能力を発動して確認しても、(イン)の存在が認識できない。

それに加えて、魔力が確認できないのだ。

同席した犬の印(イヌのイン)持ちの役人が見落としている可能性があることが考えられ、追加で2名、上位の役人が家に来たが、結果は同様だった。

役人は、信じられないという態度をしつつ、私を無印(ムジルシ)、そして魔力が一切ないことを認定した。


持っている(イン)や魔力により、将来の就職や、社会的地位が決まるといっても過言ではない。

その人の人間としての価値を、持っている(イン)で判断する者もいる。

将来を左右される要素でもあることから、(イン)や魔力がないことは、この世界ではかなり問題があるのだ。

無印(ムジルシ)や魔力がない遺伝子を受け継ぐことを避けたいはずで……結婚相手が見つからない可能性が高いことが予想される。


つまりは、私は将来の道や社会的地位がないに等しいと生まれた瞬間から決まったようなものであったのだ。

領主の娘であるため、領の運営を裏から支えるといった手もあるかもしれないが……(イン)がない人間を関わらせることに反発を持つものが多く出てくる可能性がある。

また、貴族の娘は嫁ぐでいくことが当たり前であるこの世界で、結婚もせずに家にいつまでいるのは世間体がかなりよろしくない。

次期領主となる兄の結婚生活の邪魔にもなるだろうし。

あの魔女め……転生の時に私に大切なものを渡しておくのを忘れたに違いないと、頭の中で呪っておく。


よって私は自分の身を守るために、成人までに継続的な収入の確保と、自身の身をある程度は守れるように備えておく必要があると結論づけた。

それを確保すれば、家から離れ、誰にも迷惑をかけずに一人で暮らしていけるはず。

この温かさをくれる家族の邪魔には決してなりたくなかった。だから私は自立する道を見つけるのだと決心したのだ。



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