第1章1節:家族
メグラント王国という、この世界で1番大きいと言われる王国の北東部に位置するフォーカルド領、フォーカルド伯爵の長女として、私は生まれた。
アーリア・E・フォーカルド。それが、私の新しい名前だ。
ばっちり日本にいた頃の記憶が引き継がれ、あの例の魔女とのやり取りもはっきり覚えている。
私が前世の記憶を持っているのが正しいことなのか否かが分からないが、おかげで私は生まれた瞬間から中身が大人な状態だった。
大人たちの会話も理解できたし、文字の読み書きも3つになる頃には、大人並みにでき、周囲を驚かせていた。
天才だと言う人もいるが、ごめんなさい、中身は大人なんですと、申し訳なくなってくる。
名前から察したが、容姿もやはり日本人離れしていた。
プラチナブロンドの艶のある髪に、夏の晴れた空を映したかのような澄み渡る青い目、陶器のような白い肌に、鼻も子供なのになんだか高いのだ。
自分の顔にこんなに凹凸があるのもすごいなぁ……と我ながら感心していた。自分の顔だけど。
この世界での両親にもすごい恵まれていた。
ガタイのいい長身の父親、マルクスは、貴族ながらも元騎士団出身で、複数の村を襲った上級魔物を仕留め、功績をあげたことのあるくらい腕がたつ。
伯爵ではあるけども、偉ぶる様子もなく、領民には平等に優しく、困った声には耳を傾け善処していた。
領地の領民たちを守るために、力をつけるために騎士団に入っていたというくらい領民を愛しており、その姿は信頼を集めていた。
母親のメリーゼも、いつも笑顔で愛らしく、厳しい時もあるけれども、優しく大切に育ててもらっている。
すぐ私に触れたがり、窒息するかと思うぐらいに抱きしめられることもあるが、悪くないと思っている。
前世では両親の愛をこれでもかと思うくらい受けたことがなかったから、恥ずかしさはありつつも、愛されるとはこういうことかと、じんわりくるような温かさを感じる。
これが幸せというものなんだろう。
満たされた気持ちで溢れる。私は前世で大切なものが欠落していたのだなと痛感する。
5つ上の兄、ウィルカスもいて、まだ10歳と子供のはずなのに、広い知識を持っていた。
将来は父を超えるのだと、小さいながらにしっかりしている。――――現在5つの私が言うのも変な話だけど。
こんなにも恵まれてよいものかと不安になるくらい、温かさに恵まれていた。
まぁ、こんな幸せに溢れていても、何らかの問題はどこの世界にもあるもので。
――――大きな、いや、かなり大きな問題を私は生まれながらに抱えていた。