プロローグ
C.E 03/09/2056
この日、未知生命体が突如、なんの予兆もなく、大西洋の上空に現れた。身長はおおよそ150cm、見た目は純白で、シルエットこそ人間と大差はないが、毛髪や皮膚など、生き物の生体特徴がない代わりに、金属質で、その純白さは薄く、鈍く輝いてる。そのあまりにも無機質の外見でありながら、命があるように、人間の心臓部に近い位置に、薄い赤く輝いてる何かが点滅している為、人類はその生命体を天使と命名した。
二日後、各国政府や研究者たち各自のアプローチで、天使との接触を試みたが、どこも成果は挙げられなかった。天使たちは空の上で、なんの活動もなくただ静かに佇んでいた。
C.E 02/16/2057
天使が現れた1年弱、世界各地が謎の失踪と昏睡事件が頻発。失踪した人々は消えたら最後、死体も見つからず、二度と姿を見る事はない。昏睡した人々は、生命反応はあるものの、まるで意識がないまま。これらの事件は無造作で起こるため、何時、誰の身に起こるかは全く見当がつかなかった。世界は大パニックに陥ていた。
C.E 07/07/2057
大西洋上空に現れた天使は去年姿を現す時のように、またなんの予兆もなく墜落。その体積には思えない程の衝撃で、その結果は、世界各地の沿岸都市は津波に飲み込まれ、南極の氷山の一部が崩落、墜落周辺の島は完全消滅し、墜落の半径10キロメートルは、衝撃のせいで分厚い雲と水気を形成し、外界からの観測を完全に断った為、その時、人類はまだ一番になる問題を認識、或いは理解していなかった。
そして、この日は《堕天の日》と命名されている。
C.E 07/10/2057
各国政府はようやく天使の危険度を認識し、大至急に連合軍と研究チームを結成、堕天の場所に向かった、目的は2つ:天使もし生きている場合は排除。死亡している場合は回収、と思っていた。
当然、地球上の誰にも、もし天使生きてる場合、連合軍が勝てるわけがないとは思っている、ただ、なんの抵抗もなく訳にもいかない。そして、目的地に到着した軍と研究者はみんな、安堵と同時に、呆然としていた。
何故かと言うなら、雲の中に入った最初。目にしたのは、。堕天の中心地に、雲が蒙ってる部分、全体的にまるで刀に切られたのように、空間が分断されてる。あそこは、周辺の波がいくら激しくても、その切断された空間に入ることはなかった。
そこには天使の亡き骸がない代わりに、地球に現存科学では説明出来ない、ただ天使の心臓の色に似てる粒子が、命を感じるように、空気中に漂っている。
そしてもう一つ、それは衝撃場所の地殻物質が、一般人でも一見すれば判るほど、全く別のノモに置き替えられた。それは空気に漂っている粒子と同じく、地殻も天使の体から発する純白色が、薄く発光している。これらは後に、《アンジェルギフト》と呼ばれる人類の意識を物理的に観測ができる上、ある程度定着できるモノである。
C.E 07/14/2057
《堕天の日》からちょうど一週間、世界各国の首都や主要都市の上空に、次々と天使と、その巣と思わしきものが一斉に現した。巣の見た目は一つ一つ縦長さ2メートル程の小さな長方体を組み合わせで、一つ大きな長方体となっている、天使はその小さな長方体出てくる。その規模は都市の大きさによって変化するが、確認出来た一番小さな巣でも縦長さは500メートルを超えている。ただ、何故か巣と違って、天使の個体差は見当たらなかった。
これは後に《降臨の日》と命名されている。
C.E 07/28/2057
《降臨の日》の翌日、40億の地球総人口は、おおよそ1割が消失。この規模の失踪事件をきっかけに、世界各国の政府はようやく事態の深刻さを気づき、地球連合軍の正式の結成、そして各国の最先端軍事力を用いて、天使たちに攻撃を仕掛けたが、結果はあまりにも斜めな上に行った。
連合軍は天使たちが確実に反撃してくると予想し、それを機会に天使の意図と技術を測ろうとしていたが、天使は人類をまるで眼中にないと思うほど、自分に向かってくる戦闘機群、艦隊群をただ見てるように、一定の距離に入った瞬間、人間どころか、戦闘機や艦隊が丸ごと消えていた。しかし、それだけで、反撃はしなかった。
連合軍の戦略会議室で、海陸空三軍それぞれの司令と参謀総長の表情は、まさに驚愕だった。
「全く理解できん!やつは一体、何がしたい?何しに来た?クソが!」
「あぁ、もう終わりだ…これは神々の審判かもしれん。」
「は?審判だと?空軍は空を飛ぶ時間が長すぎて、神の幻覚でも見たと言ってんのか?バカバカしい!」
「あれを見ろ陸軍司令、あんなの我々人間がどうにか出来る相手ではない!攻撃に行った部隊が丸ごと消えたんだぞ?!」
「攻撃こそして来ないが、対話を求めたいとも思えない。私たち人間が見えないみたいに振る舞ってる。ただそこに飛んでいるだけで、まるでこの星が元々自分の居場所であるように。」
「くだらん分析はいい!参謀長。俺様が聞きたいのは君の陸軍の進攻ルートだ。」
「くだらない?あんたの脳みそまで火薬で出来てるのか?なんの打開策もないまま、何回攻撃を仕掛けても結果は変わらない。」
「だからなんだ?このまま消されるまで待つのか?4億以上の人が一晩、無かったのように消されたぞ!もういい、お前らが待てばいい、俺さまは勝手に動いてもらうだけだ。」
「陸軍司令も空軍司令も落ち着くんだ。私たちが喧嘩してどうする。参謀長の言う通り、打開策がないまま攻撃するのは得策ではない。とにかく、今は研究チームの成果を待とう。」
「チッ、一晩だ。明日の午前9時まで、研究チームの報告がない場合、俺さまは俺さまのやり方でやる、これは俺さまの最大限の妥協だ、それでいいな?海軍司令。」
C.E 07/29/2057
「何?陸軍と空軍司令が失踪した?参謀長、それは確かか?」
「ええ、士気を高めるために進攻する前の演説を行う最中で。それがまさに裏目に出るというか、陸軍の士気が著しく低下になってる。」
「…それで、研究チームの方は?何が解った事は?」
「空軍司令の失踪経緯は聞かないのか?」
「聞いたて何も変わらない。」
「相変わらずだな。」
「なんだ?」
「いや、なんでもない、堕天の報告だが。」
「続けてくれ。」
「堕天した場所から取った空気のサンプルが、少し妙な反応が見えてる。」
「つまりなんだ?」
「詳しい事は私にも知られてないが、ただ、研究者たちは魂がの存在が証明出来るかもしれないとかなんとか。」
「それは今の所はいい、地殻の方はどうなんだ?」
「あれも、天使に対する有効な打撃手段としての運用は無理と思われる。が…」
「だからなんだ?参謀長、君のもったいぶる癖はなんとかならないのかね?」
「これは失礼。地殻サンプルは今判明した事は3つ:1つは地球のありとあらゆる物質よりも硬い。1つは記憶媒介として運用できる、それも私たち人類が作り出したどの記憶媒介よりも優れてる。そして最後の1つは、はっきりとした原因は未だに判明してないが、何らかの作用に加えると、ゆっくり分裂する。以上は現在判明してる事。」
「分かった。次の手を考えないとな。」
C.E 10/20/2061
そして三ヶ月後、総人口のおおよそ7割、30億の人間はきえ、人類はわずか10億ほどしか無かった。
そしてこの三ヶ月の間、最初は天使たちはただ無血の侵略と思いきや二ヶ月ほど前から突然、人類が作り出した兵器、銃からミサイルまでを自分の体型に合わせて小型し、体の各部位から生み出した。元々個体差のない天使たちが人類の軍隊みたいに兵科を分けて、人類に攻め出した。
ただ、あれは侵略よりも、戦争ごっこの方が正しい。実際、物理兵器に殺された人間は30億のなか、2億にも足らなかった。その攻撃対象は主に建造物と天使たち味方同士であった。
そんな中、堕天サンプルの研究成果により、人類は天使の駆逐こそ出来ないものの、消失を防ぐ手段を得られた。それは堕天サンプルから作り出した防御システム《座天使の環》。人類は各地に《座天使の環》生成し、その下にシェルターを立て篭もった。
C.E 12/31/2099
時が過ぎ、各地のシェルターは人為、自然の原因で壊滅、確認できる総人口は、唯一、まだ機能をしているシェルターの中のたった30人ほど。
ここはアンチアンジェルシェルター堕天本部。かつて最初の天使が堕天した場所。
シェルター最深部の深さ約23キロメートル、総階数80階、上層部から中層部の45階層は《座天使の環》となっている。46から70階に、食料保存から生活区域、そして最深部の71から80階は資料階から、開発実験、研究に当たる階層である。このシェルター最深部には二人の研究者が、とある計画を進んでいる。
「38年を掛けて、ようやく計画の第一段階は、完成…か。途中から参加とはいえ、この瞬間は人類史に刻むだろな!まぁ、人類は滅亡寸前だが…」
と、男の研究者は、実験の成功の割に、あまり喜ぶとは言えない顔をしている。そして、隣りにいる女性研究者は巨大モニターを通して地下80階、最下階にある実験ルームを見守りながら男研究者と対話を繰り広げている。
「ええ、そうね、天使の侵攻以来、人類は地上から姿を消し、地下に潜ったが、そろそろ限界だね。だけど、この実験の成功は、人類存続にとって大きな一歩よ。」
「そうだな、だが、この人間の意識観測、及び生成技術、いわゆる《魂》関連の技術は、天使から授けたとはな、何という皮肉な《アンジェルギフト》だ。」
「それだけじゃないわ、地下に何年も生き延びれるのも《アンジェルギフト》のお陰でしょ?」
「この話題はもういい。鶏と卵の問題と同じだ。」
「それで、第二段階はいつから始めるつもりなの?」
「第一段階という計画の土台はもう完成した、それに、俺たちももはや限界。あの子のためにも、早く始めたいと思う。」
「とは言っても、第二段階はとてつもなく長い時間が必要だし、成功するかどうかも、私たちは観測する術はないよ?」
「それでも、人類存続のために、そして何時か地球奪還のために、やらない訳にはいかないだろ。この計画に関わった先代たちのためにもな。」
「理屈は分かるけど、それでも心配するのは人の親というものでしょ?」
「大丈夫、あの子なら、俺たちの子なら、きっと上手くいくさ。」
「そうね、そう願うしかない。私はサーバーの最終調整をしに行くわ。また後でね。」
C.E 01/01/2100
シェルター堕天本部79階に、
「これより計画の第二段階、《女神の方舟》を発動する。」
「いい旅を!」